26話 その答え
俺と虎之助さん、義雄さん、ハルカの4人でサキモーリィー先生の部屋の前の廊下で「面白れーもん」とは何かを考えている。
(猶予は夕方まで、およそ6時間といった所だ)
「パイロットフィルムは問題ないとのお話だ……だと他に何が足りないんだ」
「ふむ、難しいね」
虎之助さんと義雄さんが腕を組んだまま考えこんでいる。
「ハルカ、何か該当しそうな事ってあるかな?」
「うーん、サキモーリィー先生ってこっちの世界でもかなり特殊な人って感じだから、私にも思いつかない」
「なるほど、変わった人ではあるんだね」
俺の質問にハルカが困った様子で答える。
「だとすると……アニメーションとは関係ない所で面白れーもんを期待しているって事かな」
「なるほど、その考えありだな」
「ふむ、可能性は高いね」
俺のつぶやきに、虎之助さんと義雄さんが反応する。
「アニメーション以外か、確かにあの先生なら他の事に興味を持たれているかもな」
「ふむ、金銭の話でしょうか?」
「企画書と一緒に、売上の分け方は記載してあるからそういう話ではなさそうです」
「ふむ……」
全員で考えてもやはりそう簡単に答えは出ない。
「お金ではないとなると……なんだろうな」
俺は腕を組みながら壁に寄りかかる……と床に落ちている空になった酒ビンが目に入ってくる。
廊下まで酒瓶落ちてるって、どんだけ酒が好きなんだろうか……。
あれ?
(酒瓶に貼られているラベル、字は読めないけど昆虫?の絵が描かれているな……もしかして)
「ハルカ、あそことあそこに落ちている酒瓶なんて酒なの?」
「え?あれは蝶酒、そしてこっちはミミズ酒って書かれているよ」
「この世界では、虫の酒ってみんな飲むの?」
「ううん、特殊だよ。多分他の国から取り寄せたんじゃないかな。私も見たことなお酒ばっかりだもの」
俺はハルカと話して、考えがまとまってきた。
「お酒じゃないでしょうか?」
「酒?」
「かなりの酒好きなようですし、もしかして『面白れーもん』とは、特殊な酒の事じゃないでしょうか?」
俺は導き出した答えを虎之助さんに話てみた。
「あの先生なら、確かに在りうるな。珍しい酒を持ってこいって事か」
「ふむ……ビールならある」
「え?酒持ってるんですか?」
「ふむ。釣りに行くときに持っていけるように、ロッカーにお気に入りのビールを置いてあるんだ。仕事中は当然飲まないよ」
「ビールとか一般的なアルコールじゃなくて、特殊な酒ってあります?」
「普通のビールしかないね」
「まぁ……ですよね……」
また振り出しに戻ってしまった。
「先生、いろいろな国のお酒飲んでいるから、きっと普通のお酒を持ってきても喜ばない可能性が高いよ。別の事にした方が良いよ」
ハルカがフォローしてくれた。
(ハルカに気を使わせてしまった)
何としてでも俺が答えを出さないと駄目だ。
考えろ、考えるんだ。
「お酒が好きなのは間違いない……でもお酒ばかり見ない方が良いのかも。関連するものだと……あっ!」
俺はふと思いついた。
「何か思いついたの?」
「ハルカ、この世界に『天ぷら』はないって言ってたよね」
「前にスネタが作ってくれた美味しい料理だよね。存在しないよ」
「よし、これだ。これはいけるかもしれませんよ、虎之助さん」
「スネタどういう事だ?詳しく説明してくれ」
俺は前のめりで虎之助さんに話をつづけた。
「俺が月に一度だけ自分へのご褒美として行っていた、天ぷら屋『藤天』があったんです」
「あぁ、スタジオ近くの天ぷら屋さんの事か」
「俺あまり酒は飲まないんですけ、酒と天ぷらの相性最高だったの覚えています。この世界にない天ぷらは『面白れーもん』のはずです、更に酒と合うものであれば絶対サキモーリィー先生なら、面白がってくれるはずです!」
「確かに、それはいいかもしれないな」
「ふむ、酒に合うつまみは大事だね」
よし『天ぷら』で決定だ。
× × × ×
俺はハルカのドラゴンに乗せてもらい急いでスタジオに戻った。
そして釣っておいた魚で天ぷらを作り、ぎりぎり約束の夕方にサキモーリィー先生の家に戻る事ができた。
(これで勝負だ!)
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