23話 初号試写
「それでは皆さん!初号試写始めますよ~、急いで席についてください~」
哲さんが、会議室の電気を消しながら皆を急かす。
(哲さんも楽しみにしてくれていたようだ)
「一応、スネタのモーションどんなもんか見せてもらうぞ」
モデルを作った和彦が、にやにやしながら俺を見る。
「ふむ。撮影処理で違和感ある所あれば遠慮なく言ってくれたまえ」
義雄さんも腕を組みながら話す。
「私も全部見るの初めてだし、凄く楽しみだよ」
ハルカも翻訳をしてくれた事もあり関係者なので試写会に参加している。
「俺も撮影済みの映像見るのは始めてだから楽しみだよ」
レンダリング素材で撮影された映像を見るのはいつも感動する。
撮影の処理で映像の出来が全く変わるのだ。
「では、再生します。よろしくお願いしま~す」
哲さんがプロジェクターを操作するリモコンで再生ボタンを押す。
(プロジェクターを使っての試写なんて始めてだ)
俺は少し緊張しながら、映るのを待った。
そして5カットの映像が流れる。
全員集中しながら映像を見る。
5カットは、秒数にするとわずか18秒ほど、すぐに終わってしまう。
上映が終わると、自然と拍手がおきた。
「皆さん。限られた時間の中、制作ありがとうございます。良い感じかと思います」
虎之助さんが立ち上がり感想を伝えながら頭を下げる。
「すみません、Cut2とCut3のモーション少しだけ直させてください!」
俺は、自分が作ったアニメーションが少し気になってしまい自主リテイクを申し出た。
「わかった。任せるよ」
「ありがとうございます!直ぐにやります!」
× × × ×
他、各セクションで気になった箇所を話終えた後、俺は早速アニメーションの修正を始めた。
「そのアニメーション、凄く良い感じだと思ったけどな」
ハルカが横に座りながら感想を言ってくれた。
「いや、虎之助さんの作ったカットと俺の作ったカットのレベルが歴然なんだよ。これじゃダメだ。もっと」
作業をしながら俺は答えた。
「自分に厳しいだね、スネタは。私、そういう所……あの……すっ、すっ……凄く良いな!って思う」
目線をそらしながらハルカが言う。
(もしかして、見ていられないほど虎之助さんと俺のカットのレベルの違うという事だろうか……ハルカに気を使わせてしまった。もっと上手くならないと駄目だな)
俺はより一層、練習をしようと心に決めた。
「自分が作ったものを客観的に見る力が、俺はまだまだ足りないだ。もし他に気になる所があったら言ってほしい。遠慮はいらないから」
「うん。スネタの為になるなら何でも私はするよ」
× × × ×
俺は2カットの修正を終え、他のカットと繋いでムービーのチェックを始めた。
「私も映像見せてもらっていい?」
「うん、もちろん構わないよ」
俺はパソコンで5カット繋いだムービーを再生させた。
目をキラキラさせながら、ハルカが見入っている。
「サボテンキツネ、本当に生きてるみたい……こんな事できるなんてスネタって凄いよね」
「俺個人の力なんて大した事ないよ」
「え?」
「アニメーション制作はチーム力が一番大事なんだ。演出、モデラー、アニメーター、撮影、制作進行……それぞれの工程で全力を尽くす事でクオリティーが変わるんだ。どこか一工程手を抜いただけで、酷い出来になってしまうから。うちのスタジオは工場ではなくて工房を目指しているんだ、1人1人の個性を最大限に発揮して他のスタジオではできない事をやろうって頑張っているんだ」
ハルカがじっと俺を見ながら話しを聞いている。
(しまった熱く真面目に話すぎた……)
異世界のハルカにアニメーションの事を話してもチンプンカンプンだよな。
「ごめんごめん、何か小難しい話をしてしまったよね」
「ううん、そんな事ない。アニメーション制作の話をする時のスネタって、一番輝いて見えるよ」
(汗が出てしまって、顔がテカっているという事だろうか……やはり熱く語りすぎたようだ。もう少し冷静に話すようにしよう)
「私、小さい時サボテンキツネを読むのが大好きだったんだ。孤児院にいたんだけどお友達もできず絵本ばっかり読んでいたの。両親を亡くしたサボテンキツネに共感していたんだと思う。そしてどんな逆境にも負けないサボテンキツネのお話が私に勇気をくれた……私もサボテンキツネみたいに強くなりたいって思った」
「そんな思い入れのある絵本だったんだね」
「結局、孤児院のある街が魔王軍に襲われた時、ガルドフ傭兵団が援軍に来てくれて助けてくれたの。でも街は壊滅的な状態でもう人は住めないってなって孤児院も閉鎖される事になった時、ガルドフ団長が一緒に来ないかって誘ってくれた。だから今は私は孤独じゃないし、1人じゃないんだ」
絵本を見つめながらハルカは過去の経験を話てくれた。
(ここはやはり戦時中の世界だ。甘い世界ではない)
俺は改めて、そう感じた。
「サボテンキツネを完成させて、多くの子供たちに見てもらいたいな……本ももちろん良いものだけど、映画は多くの人たちと同じ空間で同じ体験をできる最高のエンターテインメントなんだ。きっと子供たち大喜びすると思う」
「うん、私もそう思う」
俺は、この世界で心の栄養であるエンターテインメントの重要性を改めて感じた。
「早く完成させて、原作者のサキモーリィーさんに見せたいな……」
「絶対、喜んでくれると思うよ」
1時間後。
最終チェックを終え無事にパイロットフィルムは完成した。
(俺たちは異世界でパイロットフィルムとはいえ、まずは1本完成させたのだ。これは大きな一歩になるだろう)
明日は、いよいよパイロットフィルムを持って原作者のサキモーリィー先生にご挨拶だ!
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