22話 パイロットフィルム制作中
「パイロットフィルム版のコンテ、そして『サボテンキツネ』のCGキャラクターモデル完成しました~。いい感じじゃないですか~どうだい、スネタちゃん」
「はい、和彦の作るモデルのリグは慣れていますし、すぐにモーション制作かかります!」
「一応、なんか問題あればすぐに言ってくれ直すから」
「ありがとう和彦」
5カットのコンテとサボテンキツネのCGキャラクターモデルが用意できたのだ。
この素材が揃えば、制作スタートできる。
コンテの内容はサボテンキツネが、自分の尻尾がサボテンになっていた事に気づくシーン。
1カットは虎之助さんが担当、俺は4カットやらせてもらえる事になった。
× × × ×
虎之助さんから作画打ち合わせを行っている。
「サボテンキツネの表向きはヤンチャな悪ガキだ。でも両親を熊に殺されて天涯孤独。村のキツネたちに構ってほしくて悪さをしているだけの寂しい少年なんだ……サブテキストがあるキャラだ」
「なるほど」
俺は虎之助さんの一言一句全てノートにメモした。
メモは社会人としての基本である。
「サボテンキツネは外連味のある芝居でやってみたいと思っている」
「了解です!」
俺はキャラ性と絵コンテの演出意図を理解した上で、まずは自分で実際に演技をしてみた。
それをスマホで撮影しリファレンスとした。
いつもカット制作する時には、この方法でやっている。
頭で考えた芝居だけでは、リアリティーがないのだ。
「スネタちゃん、工数どれくらい使っちゃう感じ?」
「4カットの制作だと、1カット4時間としても2日、虎之助さんからの修正を1日として3日……バッファを持って3.5日でやってみせます!」
「了解~よろしくよろしく~期待しているからね~」
俺は哲さんとのスケジュールも共有できた。
「よし!やるぞ」
俺は数日ぶりにアニメーション制作を行える事が嬉しくてたまらなかった。
だがしかし……そう簡単にできるものではなかった。
やっては見たものの自分が作ったアニメーションがイマイチなデキだ。
(こんなのでは駄目だ、もっとこのキャラ性を出していかないと)
「わぁ、サボテンキツネが動いてる!」
「ハルカ、どうかな?サボテンキツネっぽい動きだと思う?」
迷っていた俺は作ったモーションをハルカに見てもらう事にした。
客観的な視点は大事だ、と虎之助さんに教わってきたからだ。
ハルカからこのアニメーションがどう思うか聞いてみると良いと思ったのだ。
「うん、そうだね……。あるとすると私の中では、サボテンの尻尾がもうちょっと固いものって思ってた」
「なるほど、あくまで動物の尻尾のイメージで作りすぎてた。ありがとう!早速直してみてるよ!」
「スネタ、作る所を近くで見ていても良いかな?」
「うん、構わないよ」
「良かった!」
ハルカがピョンピョン跳ねながら俺の横にイスを置き座る。
(凄い作業を真剣に見ている、熱い視線を感じるな……ハルカがアニメーションに興味を持ってくれている証拠だ。これは頑張らなければ)
俺は、ハルカに少しモーションの説明をしながら制作を続けた。
興味深そうにハルカも聞いている。
「アニメーションって本当に面白いね。でも生きているみたいに見せるのは難しそうだ」
「そうなんだ、見ている人が本当に生きている人物がいるんだと感じさせる事が大事なんだよ。CGの場合は特に操り人形っぽく見えやすいから」
「剣術より難しい話そう……相当訓練が必要そうだね」
「まずは1000カット作れって言われてる。俺は一日でも早く上手くなりたいから、元の世界にいる時は毎日練習していたよ」
「仕事ができる人って格好いいよね。何より努力している人って応援したくなる。もっと沢山スネタの事近くで応援できたらいいのになぁ……」
目線を背けながらハルカがつぶやく。
(十分近い距離にいると思うのだけど……)
「あの私、じゃあそろそろ帰るね!じゃあね!」
「あ、うん。気を付けてね」
ハルカが顔を赤くしながら走り去っていく。
少し長く話をしすぎたかもしれない。
作業ペースを上げないとな。
納期は絶対死守だ。
アニメーションが下手くそなのでせめてスケジュールくらいは守らないといけない、俺はそう決めて仕事をしている。
俺は試行錯誤しながらも予定通りのスケジュールで4カット完成させ、一旦虎之助さんにチェックをしてもらう事になった。
「ここ1コマ抜いて」
「このポ-ズは、腰をこれくらい少し低く。脇をこれくらい締めて肩はこれくらい上げて」
「ここの予備動作をもう3コマ入れて」
などなど、俺は虎之助さんからの修正を受けた。
言われれば納得する内容ばかりだ。
(やはりフィードバックは勉強になる)
「了解です!6時間で直します」
俺は虎之助さんに頭を下げた後、会議室に速足で向かった。
そしていつも通り、反省の腕立て伏せを始めた。
(感情表現の時の肩と肘の位置、動きをもっと感情に合わせて動きの幅を考えないと駄目だな。夜練習しよう)
そんな事を考えながら俺は腕立て30回を終えて、すぐに自分の席に戻った。
(よし、やるぞ。もっと良いアニメーションに仕上げてやる)
俺は修正に取り掛かった。
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