21話 食料問題
アニメーターの俺と撮影の義雄さんはまだ作業に入るまで少し時間があるので、食料調達係になり川で魚釣りをしていた。
義雄さんが釣り竿を予備も含め2本持っていたので、
1本借りて俺も釣りをしている。
「ふむ。来ましたね」
(義雄さん、また引いてるな……)
義雄さんがまた魚を釣りあげた。
「義雄さんもう10匹ですね……俺なんて0匹です、すみません」
「ふむ。これはヤマメっぽい感じだ。塩焼きにした美味しいと思うよ」
「皆、絶対喜びますね。カップラーメンばかりじゃ飽きてしまいますから」
義雄さんが手慣れた感じで針を魚から外し、また餌をつけ始める。
「義雄さん、釣りっていつからやってるんですか?」
「7年くらい前かな」
「何きっかけですか?」
「離婚きっかけ」
しまった。
偶然とはいえ触れてはいけない過去の話を聞いてしまった。
社会人として気をつけなければ、俺は反省した。
「すみません。とりあえず腕立て30回やります」
「ふむ。気にしなくて良いよ。スネタ君、天ぷら好きだったよね」
「はい、元の世界にいた時もスタジオ近くにある天ぷら屋さんに月に1度行くのが、自分へのご褒美でした。好きすぎて自宅でも時々天ぷら作っていました。意外と楽しいんですよ天ぷら作り」
「ふむ。この魚……天ぷらにしたら美味いと思うよ」
「義雄さん、それは本当ですか?」
「本当、魚に関しては本当の事しか言わないよ、僕」
(絶対釣ってやる)
天ぷらと聞いてやる気がみなぎってきた。
俺は気合を入れる為立ち上がって釣る事にした。
「座った方が良いよ。影とかで人がいるとわかると逃げちゃうから、魚は」
「あっ……なるほどすみません」
(気合だけではダメだ……モーション制作と一緒だ、がむしゃらでなく正しい努力だ)
「ここの魚、糸をかみ切るくらい強いよ。引きがあったらあまり時間をかけない方が良いね。餌が見えなくなったら魚がくわえた証拠だから、素早く引いてしまいなさい。竿を」
「了解しました!やってみます」
(集中だ、集中、集中)
俺が川に沈んでいる餌を、ジーと見ていると……消えた!
(これだ!絶対に食いついたぞ)
「とうっ!」
俺が素早く竿を上げると……魚がかかっていた!
「やった!やりましたよ!義雄さん」
「ふむ。覚えが速いね、スネタ君」
「ありがとうございます!」
結局、義雄さんが20匹、俺も何とか5匹魚を釣り上げた。
スタジオにいる皆も喜んでくれるだろう。
(釣り楽しいな。元の世界に戻ったら釣り竿買おうかな)
× × × ×
俺と義雄さんはスタジオに戻って調理を始めた。
スタジオの中にある簡易的なキッチンで、義雄さんが手慣れた手つきで魚をさばく。
「それ録画して良いですか?リファレンスにしたいです」
「ふむ、いいよ」
俺は目を輝かせて義雄さんがさばく魚を撮影した。
その夜は、『魚の塩焼き』と『魚の天ぷら』をメインディッシュに全員で夕ご飯を食べた。
塩、卵、小麦粉(薄力粉はこの世界にはなかった)、油はハルカたちから譲ってもらった。
「美味いじゃないですか~!」
「一応、これなら毎日いけるっす」
「スネタ、義雄さんありがとう。魚があれば食事のバリエーションも増えるし栄養のバランスも良くなるよ」
虎之助さんたちも喜んでくれた。
「今、スタジオ内にあるインスタント類と川で取れる魚を合わせれば、1か月は全員の食事としてもちそうです。それまでにパイロットフィルムを完成させましょう!」
全員の士気が上がったようで、俺も嬉しくなった。
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