20話 パイロットフィルム制作開始
俺たちは絵本の『サボテンキツネ』を購入し(正確にはハルカに購入してもらい)直ぐにスタジオに戻った。
「ハルカ、翻訳まで手伝ってくれてありがとう」
「ううん、アニメーション作りに関われるだけで私は嬉しいよ」
ハルカに絵本の翻訳を手伝ってもらった。本当に感謝しかない。
「サボテンキツネどんな風に動くのかな……楽しみ!」
ハルカが絵本を見ながら笑顔になっている。
(返しきれないほどの恩があるな……ハルカにも喜んでもらえるアニメをつくらないと)
俺は更に強く決意した。
× × × ×
「はい~これが直近でやる必要がある事になります~。足りない事あったらいってくださ~い」
哲さんが、ホワイトボードにアジェンダを書き出してくれた。
『企画書作り』→プリプロ(スタッフを決める)
『パイロットフィルム制作』→プロダクション、ポスプロ(工数を出す)
『原作者「サキモーリィー氏」への挨拶』
「では、まず監督を決めないと何も始まらないじゃないですか~。誰がやります?」
これが一番の問題だ。まず俺は無理だ、モーション制作以外はできそうにない。
「ふむ。虎之助君、大学生の時に実写の自主映画とか撮っていましたよね。脚本もオリジナルで」
義雄さんが以外な話を始めた。
「え?そうなんですか?」
「初めて聞いたっす」
「じゃあ脚本も書けるって事ですよね!もう虎之助さんで監督は決まりじゃないですか~」
俺を含め皆が賛同する。
「いやいや、もう自主映画作ってたのって10年以上も前の話だし、映画祭出しても一回も受賞した事ないレベルだ。演出は向いてない」
困った様子で虎之助さんが言う。
「ふむ。仕事で演出は学んできているし10年前より遥かにスキルが上がっているでしょう。それに原作があるものだし何とかなるよ。僕もできる限りのフォローはするから」
普段無口な義雄さんだが、こういう時に安心できるような事をいつも言ってくれる。
流石バツイチは人生の経験値が違う。
「何ができるかわかりませんが、俺もお手伝いしますから!」
俺も虎之助さんの演出で映画を作ってみたい、そう思った。
「皆がそこまで言ってくれるなら……わかりました。やります!」
「はいは~い、では監督、脚本、コンテは虎之助さんで決定ですね~。他スタッフィングもバンバン決めてきましょ~」
あとは、概ね仕事でこなしている役割を決めていった。
俺は当然レイアウト、アニメーター。
モデル、プロップ制作は和彦。
撮影は、義雄さん。
プロデユーサーは哲さん。
に決定した。
「まぁ、それぞれ手が空いたら手伝える事は何でもやっていくようにしましょう」
「自主制作って感じで面白いっすね」
「ふむ」
「それで、ですね~……大きな問題は背景、音楽、声優じゃないですか~」
和彦はモデラーだが、キャラクターやプロップ専門だ。背景は苦手らしい。
そうすると作画で背景を描くしかないが、そんなスタッフはいない。
俺は特に絵を描くのが下手だ。
「すぐに解決できる問題ではないな……どうするか」
「パイロットフィルム制作段階では、今のスタッフでできる事でやりませんか?背景は白でも、サボテンキツネのモデルにモーションだけ付けた状態であれば雰囲気は確認してもらえると思います」
頭をかいている虎之助さんに俺は恐縮しながらも意見を伝えた。
「そうだな、まずは映像作る事最優先でいこう。ありがとうスネタ」
「いえ、とんでもないです。では制作進めましょ!」
「おう!」
俺たちは早速、パイロットフィルムの制作に取り掛かった。
虎之助さんが5カットほどのコンテを制作する。
和彦はモデル制作を始める。
哲さんは全体のスケジュールや企画書を書き進める。
俺と、義雄さんは直近でのメインの作業がない為、資料制作などの手伝いから始めた。
スタジオのスタッフだけでのアニメーション制作は初の試み。
試行錯誤しながら俺たちは作業を進めた。
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