19 話 原作を探して
俺たちはアニメの原作になりそうな本を探す為、本屋を訪れた。
「凄いな。こんなに本があるのか。天井近くまであるぞ」
「はい、俺も始めて見た時は驚きました。戦争中でもエンターテインメントは必要されている証拠ですよね」
流石に虎之助さんも本の量に驚いている。
日本で言うなら大型店舗の本屋といった所だ。かなりの数の本が置かれている。
「良いですか~皆さん。短編ですよ、まずは短編から制作するって事忘れないでくださいねー。短いストーリーの本でお願いしますよ」
一応プロデューサーになる哲さんが注意を促す。
まずは短編を制作しようと話し合いで決めたのだ。
「短編か……」
この世界の字も読めないし作家さんも知らない状況だと、本の雰囲気でまずは選んでみるしかないか。
「ねぇスネタ。この作家さん、短編小説の名手って言われているよ」
俺が困っている事に気付いたのかハルカが声をかけてきた。
「へぇそういう作家さんもいるんだ。助かるよ、色々教えてよハルカ」
「へへっ、任せて!頑張って集めてくるよ」
ハルカが嬉しそうにいくつか短編集の小説をピックアップしてくれた。
(ハルカは本当に本が好きなんだな)
× × × ×
全員でいくつか本をピックアップしてから集まる事にした。
「とりあえず30冊ほどに絞りました」
「小説の問題点は、絵がないのでキャラデザとかデザインが必要な所だな」
「え?CGの人ってそういうの簡単にできそうじゃないですか~」
虎之助さんの言葉に首を傾げる哲さん。
「できなくはないっスけど……良い上りにはならないと思います」
「ふむ……確かに」
和彦も義雄さんも同じ意見だ。
質や工数を考えても、やはりデザインがすでにある本の方が良いのは間違いなさそうだ。
「登場人物も少ない方が良いですね。後はできれば場面転換も少ない方が背景の数抑えられていいかとは思います」
俺も意見を述べた。
限られたスタッフの中で制作するのだ、できる限り制作するものを抑えられる方が良いのは間違いない。
(ん?この本は……絵本?)
俺は目に留まった一冊の本を手に取る。
「それ、私の一押しだよ」
ハルカが持ってきてくれた絵本のようだ。
「サボテンキツネっていうの。ウーリュウ国で長年愛されている有名な絵本なの」
「サボテンキツネ……あぁ、なるほど体はキツネで尻尾がサボテンなんだ。凄いね」
俺は内容を見ながら話しを続けた。
「このキツネが悪さばかりしていたので、自慢のフワフワの尻尾をサボテンにされる呪いをかけられてしまうの。元の尻尾に戻る為に試練を乗り越えていくってお話。子供のいる家には必ず1冊はあると思うよ」
「それは大ヒットしている作品だね……キャラのデザインもあるし、絵本だから短編だ。これいいんじゃないですか?皆さん」
俺は皆に絵本を見せる。
虎之助さんが一通り目を通すと、
「成長と変化を丁寧に描いている見事な絵本だな。文字が読めなくても内容が伝わってくるよ。街に来て思ってはいたんだ……この国の子供たちにアニメを見せてあげたいってな。皆どう思う」
「動物好きっスから、俺もこれ良いっすよ」
「ふむ……久しく子供向け作品関わっていないでやってみたい」
虎之助さん、和彦、義雄さんは賛成のようだ。
「でもなぁ~……」
と、哲さんは眉間にシワを寄せながら腕を組んでいる。
なにやら納得していないご様子だ。
「絵本原作の作品じゃなくてもう少しは大人向けの方が良いんじゃないですかね?せめてメイドさんの仕事している人が見に来るような、20歳前後の女性をターゲットにした作品がいいと思いますよ」
何か哲さんがプロデューサーっぽい感じの事を言っているが、よく聞くと凄いクズの発言にも聞こえるな。
「この絵本、長年愛されているって話ですしきっとこの世界に住む人たちは子供のころから読んでいたと思います。という事は、昔読んでいた絵本のキャラクターが動いている、アニメーション作品になっているって知ったら子供だけでなく大人も観に来ると思いますよ」
俺は率直な感想を述べた。
「私も見てみたいって思うよサボテンキツネのアニメーション。イリーナもミジーも観に行きたいと思うはずだよ」
ハルカも同じ意見のようだ。
「ですよねー僕もそう思っていたんですよ。GOです!ミジーさんの為にも映画作っちゃいましょ~!!」
意外とあっさり哲さんは納得してくれた。
「よし、ではスタジオ内での意見は一致したな。あとは……原作者様の承諾が必要だな」
虎之助さんが話す。
(確かに、勝手に作る訳にもいかないよな)
「アニメーションを見た事ない人を上手く説得できるかが問題だな」
「確かにハードル高いっすね」
「ふむ……しかも我々は異世界の人間という事で警戒もされるでしょう」
皆の表情が曇る。
「虎之助さん、パイロットフィルム作ってみませんか?」
「パイロットフィルム?先にか?」
「おそらくアニメーションって言葉で説明しても伝わらないと思います。原作者の方を説得する為にも映像見せた方が話が通りやすいんじゃないかと」
「うん。私も傭兵団のみんなも実際のアニメーションの映像作品を見せてもらってやっとどういう物か理解できたもの」
ハルカも同じ意見のようだ。
「なるほど、そうだな。よし一旦スタジオに帰ってパイロットフィルムの制作についてまとめよう」
「はい!」
(またアニメーションが作れるんだ。頑張るぞ!!)
そう思うだけで俺は、胸の高鳴りを抑えきれずにいた。
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