18話 俺たちに出来る事
虎之助さんたちと合流した俺たちはとりあえず定食屋さんで昼食を取りながら現状報告をする事になった。
「申し訳ない程度の情報ですが。現状、募集していた仕事の一覧です」
俺はタブレットで撮影した画像を見せながら説明をした。
「色々、ありがとうスネタ。助かるよ、仕事自体は募集があるという事がわかっただけでも収穫だ」
虎之助さんが褒めてくれた、嬉しい。
「哲が何していたかは、またじっくり話は聞かせてもらうよ」
「いやだなぁー虎之助さんー。自分は偵察をしていたのでありますー。忍者のように静かに素早く見事だったと思います」
「こっちの世界の人が哲に冷たい視線を送ったり指さしたりしている所を見ると、全然忍べていないようだが?」
あれだけの騒ぎを起こしたので、有名人になっているようだ。
特に女性たちが何やらヒソヒソと小声で話をしている。要注意人物に認定されているようだ。
哲さんの話より、まずは俺が調査した結果を報告する事が先だ。
× × × ×
「肉野菜炒め定食、6つお待たせしました」
注文した料理を食べながら、俺は報告を始めた。
「この世界で生活する為に一人どれくらいかかるかも、わかってきました。まずは通貨単位のデニーですが、例えばこの肉野菜炒め定食が『600デニー』日本の円と同じくらいなイメージです」
「なるほど、分かり易いな」
虎之助さんに俺は通貨単位の説明をした。
「食費以外だとスタジオに寝泊まりするので家賃と光熱費は掛からない……食費だけ稼げれば何とか暮らせるって事っすね」
和彦が腕を組みながら話す。
「節約するとして1人、1日1000デニー以内で抑えるとして。月で約3万デニー。5人だと15万メイは稼がないといけません」
俺は大まかだが、生活していく上で必要な最低金額を出してみた。
「メイド喫茶に行く費用も別途、稼がないとダメじゃないですかー」
「この世界にメイド喫茶があるのか?」
「虎之助さん、ファンタジー世界ですよ。喫茶店行くだけでメイド服の店員さんいるんですよー、獣族ですよー、もう萌え殺されるかと思いましたよ」
「なるほど、普通の喫茶店でトラブルを起こしたのか」
虎之助さんに睨まれている哲さんが俺に助けを求めるように見てくる。
(哲さん、なんだかんだで自分で何をやらかしたか報告している)
「流石ですね、哲さん」
「え?何?どういう事」
何故か困惑している哲さん。
あまり褒められるのが苦手なのだろう。
「スネタが探してくれた仕事で、俺たちの技術が役に立ちそうなものはあるのか?」
「映像というものがない世界です。映画館もなかったので……近いとなると、本屋さんとかでしょうか。小説や絵本、一応マンガっぽいものも存在してはいます」
「でも俺たちこの世界の字を読めないだろ?スネタがそういう付与スキルがあるのか?」
「いえ、話す言葉だけです。文字は全くダメです」
虎之助さんの質問に俺は淡々と答えた。
「単純に肉体労働っすかね」
「ふむ……他にないのであれば止む無しか」
「えー、無理無理―絶対続かないじゃないー」
和彦の提案を哲さんがあっさり却下する。
なかなかまとまらない。
「私はスネタたちの世界でやってた仕事が、この世界でも出来たらなって思ってるよ。スネタの作ったアニメーション作品見てみたいもの」
ハルカが笑顔で話す。
「うん、俺たちもアニメーションで収入得られるのが一番有難いと思っているけど……」
(ん?待てよ)
俺は思い出した。
「映画……映画作りませんか?」
俺の提案に全員がキョトンとする。
「映画館ないんだろ?」
「ないなら作ってしまえば良いと思います。プロジェクター1台、スタジオにありましたよね」
「あっ、確かに会議室に1台あるか」
「はいはい、社長が趣味で買った奴ありましたね~スネタちゃんよく覚えていたね」
「会議室でよく腕立て伏せしたいたので、チラチラ視界に入ってはいたので覚えてしました」
俺は自虐的に少し笑いながら言った。
「はい、あれ使えます。場所はどこかの空き家でも良いですし、何なら野外でも良いと思います。チケットを販売してそれで収入得る事も可能なんじゃないですか?」
「スタジオは電気が通っている、PCもソフトも使える……作品も作れなくはないのか」
全員、少し現実味が出てきたと感じ、目の色が変わってきた。
「スタジオにあるDVDとか流しませんか!ヒットしてるアニメなんてこの世界の人なら誰も知らないし、我我々が作ったって事にして!良い考えじゃないですか~これはボロ儲けですよ~」
「プロとしてのプライドがないのか?著作権舐めるな」
「ですよね~冗談じゃないですかー。そんな本気怒らないでください」
哲さんの提案を虎之助さんがマジで却下をした。
「お話作れる人っているの?」
ハルカの言葉に、全員が固まる。
そうなのだ……この弊社には演出もコンテマンも脚本家もいないのだ。
(これは大きな問題だ)
俺は考え込んでいると、入口近くに本棚がある事に気付いた。
恐らく席が空くまで待っているお客さん用に用意してある本だろう。
「あっ……こっちの世界の本を映像化するってどうです?仕事探す時に、本屋も見てきたんです。小説や絵本、マンガっぽいものもありました。良い原作があるかもしれません」
俺は思いつきで言ってみた。
「なるほど原作か、確かにやれるだけやってみる価値はありそうだな」
「俺も良いと思うっすよ」
「ふむ……1%でも現実味があるなら何でも試してみましょう」
「本屋さんって制服あるのかな?メイド服っぽい制服とか着ているかもしれないですし行ってみようじゃないですか~」
「じゃあ、ご飯食べ終わったら本屋さんに行ってみましょう」
全員がうなずき、定食を食べ始めた。
(アニメが作れるかもしれない。いや絶対作りたい)
俺の胸は期待にあふれていた。
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