15話 ウーリュウ国、王都オキュノハマーンの城下街
「わぁ……凄いや!」
10歳の俺が映画館で見た海外の3DCG映画に感動している。
2Dアニメとも違う、迫力がある。
こんな凄いもの見たのは始めてだった。
(俺もこういうものを作ってみたい!)
と、俺は寝室の床の上で目を覚ました。
「夢か……」
自分がCGアニメーターになりたいと思った時の夢を見てしまったようだ。
(あの感動はどんなに時間が経っても忘れないものだな)
でも俺は気付いてしまった。
1日、CGソフトを触っていないという事は、それだけ腕も落ちてしまう。
(スタジオに戻ったら、いつもの2倍、いや3倍練習しよう)
そんな事を考えながら、俺は床に敷いたシーツを綺麗に畳んでベッドの上に戻した。
× × × ×
俺は宿舎のリビングを掃除する事にした。
一宿一飯のお礼と呼べるレベルのものではないが、何かしないと気がすまない。
社会人としての常識だ。
「おはよう、スネタ」
ハルカが挨拶しながらリビングに入ってきた。
「おはよう。ごめんね、起きてくる前に終わらせたかったんだけど」
「スネタがそんな事しなくていいんだよ。お客さんなんだから」
「俺にはこれくらいしかお返しできないからね」
と、返し俺は掃除を続けた。
「一緒にやるよ」
ハルカが笑顔を見せ一緒に掃除をしてくれた。
「昨日は眠れた?」
「うん、お陰様でぐっすり眠れたよ。同じ床でもカーペットより木製の方が眠りやすい気がした。弾力が多少なりともあるお陰かもしれないね」
「床?何の話?」
「でも俺は普段はイスを並べて寝る派だから、新鮮だったよ」
業界では泊まり込みの時に、イスを並べて寝るか、床で寝るか、座ったまま机につんのめって寝るか、概ね3タイプに分かれる。
俺はどちらかというとイスを並べて寝る派である。
「よくわからないけど……ぐっすり眠れたのなら良かった」
そう言いながらハルカも一緒に掃除を続けてくれた。
× × × ×
朝食を済ませた後、俺はハルカ、イリーナ、ミジーたちと一緒に城下街に出た。
(何とか仕事が見つかると良いのだが)
「中世ヨーロッパの街並み、そのままって感じだね」
俺は周りの建物を見ながら感動していた。
ゲーム世界そのままって感じだ。背景モデラーが見たら感動するだろうな。
「チューセイ?何の話ですの?」
不思議そうにイリーナが質問してくる。
「14、15世紀辺りのヨーロッパの雰囲気に似ているという事なんだけど……」
「?」
イリーナたちがよくわからない……と言った表情をしている。
そうだよな……ちょっとの説明では伝わらないよな。
「今度、スタジオに来てもらったら俺たちの世界の事もっとじっくり説明するよ」
「よくわからないけど面白そうですわね、ゆっくり聞かせてもらいますわ」
さて肝心の仕事探しだ。
本屋、八百屋、武器屋、定食屋、飲み屋、カジノ、薬屋、おもちゃ屋などなど、この世界にも色々な店が存在している。
「求人がある時は、大体店先に張り紙がしてあるの」
店先に求人の張り紙を指さしながら説明してくれた。日本とシステム的には同じか。
「時給とかもあるの」
「うん、例えばこの定食屋さんだと時給900デニーだね」
(通貨単位はデニーというのか、概ね円と同じ価値の考えでよさそうだ)
「今、魔王軍の戦が続いて人手不足は続いているから、選ばなければ仕事はあると思いますわ。でもただ問題は」
「漆黒の闇より訪れた旅人を雇う者があるか……」
「ですわね」
イリーナとミジーが深刻そうな表情で説明をしてくれた。
(確かに。この世界の字の読み書きもできない、社会常識も知らない人間を雇ってくれるだろうか)
口頭での指示で働けるとなると肉体労働だろうか。
普段ミスをすると筋トレはしているが、所詮は軽い筋力アップ程度のものだ。
長時間の労働で役に立つほどのレベルではない。
(まぁ、考えても今すぐに結論はでそうにないな。まずは情報だけでも沢山集める事にしよう)
とりあえず俺はタブレットで張られている求人を撮り、店の情報などメモした。
と、その時だ。
「道を開けろ!!」
(なんだろう?)
中央通りで、大きな声がする。
野次馬が集まっているようだ。
「何かしら?」
「事件でもあったのかもしれませんわ」
「邪悪の使いか」
俺たちは気になって様子を見に行く事にした。
× × × ×
イリーナとミジーが人込みの隙間から様子を見る。
「あれは憲兵隊のようですわね。誰か連行されているようですが……あらあら、見るからにクズって顔つきをしていらっしゃるわ」
「悪人、それは世の害虫。屈辱を与えるべきである」
と、連行されている人物を観てイリーナとミジーが感想を言っている。
(そこまで二人に言わせるなんて、どんな悪人だろうか)
俺も野次馬の隙間から覗いてみる事にした。
「あっ……あー……あ~……」
俺は思わず変な声が出てしまった。
「哲さんだ」
憲兵に連行されているのは、そうまさかの哲さんだったのだ。
弊社、制作進行の哲さんだ、間違いない。
(なんで哲さんが街に?何しに街へ?いや、何で連行されているんだ?)
次から次へと俺の頭に疑問が湧いてくる。
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