その八 名前が違う 1
こんな経緯で、僕の入団の儀式は画竜点睛を欠く結果となった。まあ誓いは立てたんだし、教団の一員として認められはするようだけど。
とにかく、わからないことが多すぎる。
僕の出した誓いの紙が誰かの手ですり替えられた。紙には「黒石御影」の名が記され、それを見た御影は、気を失うほど激しく動揺。
いったい、何がどうなってるんだろう?
僕ちゃん、門外漢だからさっぱりわからないや。一刻も早く、ここから逃げ帰ってお家で寝たいよというのが本音だった。
誓いの封書を届けたはずの志摩敦子を問い詰めたかったけど(彼女、何かしたように思えないが)、御影の看病の手伝いで奥に引っ込んだきり戻らないし。ますますもって埒があかない。
この件を黒石氏に言おうか迷ったが、どうもやぶ蛇を招きそうな気がしてならない。御影に幽霊が見える件と同様、切り出せるもんじゃなかった。
とりあえず今は、相手の目に善良で熱心な信徒だと思われるのが大事で、それにふさわしい言動をとらなければ。
そうするうち黒石支部長が出てきて、御影の容態について報告をおこなう。
どうやら入団の儀式で初めて音戸取りを任された緊張のあまり貧血を起こしただけらしいから、心配は要らないとの旨。
それでみんな、安心したところがある。
ついで。こういう次第なので、バーベキューの会食はまことに残念ですが中止しなければなりませんとのお詫びが入る。
これには落胆する人が多かった。
それでも、用意した材料を一人分ずつ、あるいは一家分ずつビニール袋に小分けにしたのを持ち帰ってもらうことで体面は保ったわけだけど。袋の中身は、牛肉、たまねぎ、ソーセージ、しいたけ、パプリカ、とうもろこし……これなら、家で焼肉もできる。
あ、僕は遠慮した。女の子とデートのはずなのに、こんなもの持ち帰るわけにいかないじゃないか。
別れ際に黒石氏は、特製の笑顔をつくり言った。
今日おこなった宣誓により、きみは晴れて、ダラネーナ教団の準会員として認められた。まだ未成年なので今後は、教団の青年部に所属してもらう。十代から二十代の若い信者がつどうサークルのようなところだ。青年部には、毎週ごとの奉仕活動が課せられるが、その活動での成績によって正式に会員として迎えるかを決めるので(優秀でないと本部に推薦状を送れない)、どうか精勤してもらいたい。という励ましとも肩すかしとも取れる言葉をたまわった。
なんだ、まだ準会員の身分なのか。それにしても奉仕活動って……。
いや、どうせ施設の掃除や料理の手伝いくらいだろうとたかをくくったけど、あとで大変な間違いだったことがわかる。
( 続き )




