Bar“raise“-前半-
物語が進みます、楽しんでください。
1週間ほど経ったある日、僕はキリさんに呼び出された。
指定された場所は、とあるビルの2階にある角部屋だった。
ドアノブに手をかけ、開けようとしたその時だった。
「やっと来たか、遅かったな」
そこには、髪が綺麗にセットされた、整った顔立ちの男性が立っていた。
「すみません、間違えました」
思わずそう言うと、男性は僕を見て言った。
「俺だ、キリだ」
僕は驚いた。まさか、こんなに顔が整っていたなんて。
そんな僕の横を通り過ぎ、キリさんは一人で部屋に入っていく。僕もその後に続いた。
「お邪魔します」
そう言って中に入り、顔を上げると、そこにはこの1週間で調べたのであろう資料や写真が、壁一面に貼り付けられていた。
その中には、もちろん僕の写真もあった。
いつ、どこで撮られたのか分からないものばかりだった。
少し怖さを覚えながらも、一つ一つに目を通していく。そこには顔見知りの人が数人いた。
そんな僕を見ながら、キリさんが口を開いた。
「この女性と仲良くなってもらう」
そう言って、一人の女性を指さした。
その女性は、僕と同じサークルに入っている2学年上の先輩だった。
僕には絶対に無理だ。
キリさんは続ける。
「この女性と仲良くなるのが一つ目の仕事だ」
僕は戸惑いながらも尋ねた。
「どうして仲良くなる必要が? 兄と知り合いなんですか?」
キリさんは少し面倒くさそうに答える。
「マサヤとどういう関係かはまだ分からない。しかし、この女性も“raise“に通っていた」
僕は正直に話した。
「申し訳ないんですが、女性が苦手なんです。しかも先輩だし勘弁してください」
キリさんは少し驚いた顔をして、
「君はマサヤとは正反対だな」
と、少し笑っていた。
兄は老若男女から好かれ、女性の扱いも確かに上手かった。
「じゃあ、この女性は俺が行く。君はこっちの人と仲良くなれ。簡単だろ」
そう言って、一枚の写真を渡してきた。
そこに写っていたのは、BAR“raise“の男性スタッフだった。
この人ならいけるかもしれない。
「分かりました。頑張ってみます」
僕は、キリさんの小さな優しさに少し心を許し始めていた。
この日の夜、早速BAR“raise“へと向かった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
まだまだ色々なことが起こっていきます。
ぜひ楽しみにしていてくれればなと思います。
引き続き『高架下探偵事務所』をよろしくお願いします。




