始まり
『高架下探偵事務所』は、ある小さな探偵事務所を舞台に、人との出会いや謎、そして少しずつ明らかになっていく過去を描いた物語です。
それでは、物語の始まりです。
ある一枚のチラシが目に入った。
そこには、
「これを見つけた君はラッキー。何かあったらおまかせよ。高架下探偵事務所」
と書かれている。
正直、不信感しかない。しかし、今の僕にとって唯一の手がかりはこれしかなかった。
チラシに書かれている住所へと向かう。辺りにはたくさんのテントが立ち並んでいる。
“本当にここなのか?”
そんなことを思いながら周囲を見ていると、一人の老人が近づいてきた。
「それ、そこのやつだよ」
老人はチラシを指さしたあと、少し離れたところにあるテントを指さした。そこには、ひときわ大きなテントがあった。
「ありがとうございます」
老人にお礼を言い、テントへと向かう。
テントに貼られたチラシを見る。
「ここまでこれた君は超ラッキー。この鈴を鳴らしてね」
横に置いてある鈴を手に取り、鳴らす。
―チリン。チリン。ー
しかし、誰も出てこない。
“いないのか?”
もう一度鳴らしてみる。すると、一人の男性が出てきた。
「そんなに鳴らさなくても聞こえてる」
チラシに書かれていた雰囲気とは違い、暗い印象の男性だった。
「入れ」
そう言われ、中に入る。外見とは違い、中はとても綺麗だった。
「要件は?」
男は淡白に尋ねてくる。
「いなくなった兄を探してほしいんです」
男はじっと僕を見つめている。何かを考えているようだった。
「名前は?」
男は急に口を開いた。
「君とお兄さんの名前」
慌てて答える。
「僕は横山タクヤで、兄は横山マサヤです」
男は驚いた顔で僕を見る。
「マサヤの弟か」
男は再び口を開いた。
「どこでこのチラシを見つけた? 最後にマサヤと会ったのはいつ、どこでだ?」
「チラシを見つけたのは兄の部屋で、最後に会ったのは1か月前に bar『raise』で会いました」
それを聞いた男は、何か納得したような顔で言った。
「この件は俺に任せろ」
そう言って、僕を見た。
僕は口を開く。
「兄とはどんな関係なんですか?」
男は答える。
「マサヤとはraiseで知り合い、その後、たまにこの探偵業を手伝ってもらっていた。しかし、先週から連絡が取れなくなり、俺も困っていた」
僕は困惑していた。そんな話、兄から聞いたことがなかった。
そして何より、僕が兄と連絡が取れなくなり、探し始めたのは1か月前だ。
男が言った“先週”という言葉が耳に残る。
しかし、今はそんなことで悩んでいられない。
「おいくらですか?」
男は言った。
「報酬はいらない。ただ、君にも手伝ってもらう」
男は僕の目を見ながらそう言った。
僕は頷き、尋ねる。
「お名前は?」
男ははっとしたように答えた。
「名乗ってなかったな。俺はキリだ。よろしく」
珍しい名前だな。
そんなことを思いながら、兄を探す物語が始まった。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
これからも彼らの物語を温かく見守っていただければと思います。




