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blood 血の誓い  作者: さくらもち
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厄介な幻




「…ち、忠告しただけでしょ?」


私なりに、心配して出た言葉は、王蓮の癇に障ったらしく、眉をピクリと動かすと、明らかに空気が変わった


急に殺気立った王蓮に、口篭ってしまうのは、彼が放つ威圧のせい


血の様に、真っ赤な瞳でこちらを射抜くその目は、穏やかな天明の瞳とは違い、鋭く、危険だと体が訴えてくる



明らかに機嫌が悪くなった王蓮の足元へ、最近拾って来たという夜が、彼の機嫌を取るように手を舐めると、無意識なのか、王蓮は優しく夜の頭を撫でた


そのおかげなのかは、分からないが、ほんの少しだけ、彼の空気が和らいだのが分かり、小さく息を吐いた 



「…お前は自分の心配でもしてろ。ここが手薄に慣れば、洗脳されたやつが来るかもしれない。自分の身は、自分で守れ」



王蓮に、自分の身は自分で守れ、と言われ小さく頷いたものの、それでもここでじっとしているのは何だか私らしくない


「…だったら私も行く!こ、ここで1人で大人しくしてるのは似合わないから!」



一緒に行く、という私の言葉に王蓮は呆れ顔を浮かべたかと思うと、盛大なため息をついた

その瞳にはもう、さっきまでの殺気はなくなっていた。



「お前、俺の話聞いてた?」










激しい銃声と共に、木々は倒れ金属がぶつかり合う音が、あたりに響いた。


周りは暗く、視界も悪いが、銀の刃がぶつかるたびに、赤く火花が散っていく


その度に見える相手の表情は、怖いほど淡々としていて、苦笑いを浮かべた





「百合香さーん?落ち着いてぇー?」


ズザザーっと思い切り力を込め、百合香を押し返し、距離を取れば、こちらを見据える赤い瞳。

その目は、暗い森の中でも分かるほど、赤く光っており、ギラリと鋭い視線が俺を射抜いて離さない



「…私は落ち着いてる」

  


黒髪のワンレンショートの彼女は、銀の指輪を刃に当てると、ギギギギギと音を立て、刀を研ぐ。



「ここは、狼が俺らにくれた場所でしょ?なんで急に乗り込んでくるんすか?」



ボスの話では、ここは狼から貰った山だと言っていた。

なのに、急に返せとはおかしな話、いくら隠岐百合香が綺麗でも、流石に鴉の土地はあげられない




「うるさい」



先程から、何に怒っているのか分からないが、話の流れ的に、彼女は何か勘違いをしている

何で怒ってるの?と口を開けば、それと同時にビュン!と小さな何かが、俺の頬ギリギリを通ると、耳元で風を切る音が聞こえた。


その瞬間、カン!と音が聞こえ、恐る恐る振り返ると、後ろの大木ど真ん中に、手裏剣が深く突き刺さっている。



ごくりと喉を鳴らし、手裏剣を投げた百合香を見れば、相変わらず冷たい表情で俺を見据えて離さない




「しゅ、手裏剣は卑怯すっよ」



「卑怯…?なら、お互い様だね」


そういうと、更に何度も手裏剣を投げてくるので、必死に避け続けた。


やっと気が済んだかと思えば、土の上を思いっきり踏み込み、勢いよくこちらへ走ってくる百合香に、柄をぐっと握りしめた



「これは、やばいかもなぁ…」


彼女の何が怖いのか、それは百合香の刀の刃に着いた赤い血。

この刀に、傷一つでもつけられたら終わり。

すぐに幻覚症状が出て、何もできなくなった所で、首を切られれば俺は確実に死ぬ。


前回は、ボスに助けてもらったが今回はボスもいない。

しかも、唯一の救い、解毒剤も手元にない状態の今、どう考えても彼女の方が有利


できるだけ、透ちゃんと天明さんが来るまで時間稼ぎが出来ればいいけれど。



「なにを、考えてる?」


カキーンと、百合香の刀を受け止めれば、よそ見をするなと。

女性に、そんな事を言われたら嬉しくないわけもなく、君のことを考えてたと素直に答えれば、力強く押し返された。


「…きもちわるい」



「相変わらず、百合香さんはつれないなぁ」




「私は…たらしは嫌い」


嫌いだと、手裏剣を投げてくる度にヒョイっと良ければ、悔しそうに舌打ちが聞こえてくる


片手で、ハンドガンを取り出し、百合香の手元を狙うと、手裏剣にあたり近くの木に弾け飛んだ



「うわー残念。でも、混血だから嫌いって言われないだけましかも」


「…」


そのまま、何度か百合香に向かい発砲すると、彼女は、大木の後ろに隠れて、出てこない 



「だって、混血は治せないけど、たらしなら治せるでしょ?」



「君って本当に…鬱陶しい」



百合香の隠れた、大木を何度も撃ち、中心に穴を開ければ、今度は大木まで走りこむと、スパンと綺麗に大木を切りつけた




ズザザ、ドスン!と大木が倒れると同時に、隠れていた百合香が、こちらへ拳銃を向けた


「でも、君が居なくなると思うと、ちょっと惜しい」


目の前に突きつけられた拳銃ごと、腕を目掛けて刀を振るえば、彼女よりも早い動きをした刀が、彼女の腕を切りつけた。



それでも、咄嗟に避けた百合香の腕は、浅い傷の様で、彼女の破れた白いブラウスは赤く滲み、白い腕からは、真っ赤な血が垂れて、甘い香りが鼻を通っていく




「…前より、強くなった?」


「じゃあ、それは百合香さんのおかげだよ」



百合香に傷をつけたのは、今回が初めてのことで、内心自分でも驚いていたが、彼女に見透かされない様、にこりと笑えば少しだけ不機嫌そうな表情を浮かべた



「その口、どうにかならないの?」


百合香は素早い動きで刀を取ると、俺の振りかざす刀を受けとめ、冷たい表情で俺を見据える


正直、そんな表情も可愛く見えるのは彼女が魅力的だからだろう

やっぱりかわいいね、なんて言えば彼女は更に機嫌を損ねたのか、先ほどよりも力強く刀を当ててくる



「もう、遊びは終わり」


その瞬間、刀を思い切り降りかざし、凄い力で俺を弾き飛ばすと、大木の方に勢いよく背中を打ちつけた。


急に、背中にチクリと尖った感触がして、すぐに痛みの原因を確認すれば、最初に投げられた手裏剣に、赤い血がべっとりと付いていた。


咄嗟に背中を触れば、ぬるりと生ぬるい感触がして、一気に血の気が引いていく



「…遊びは終わりって言ったでしょ」



淡々と、表情を変えずにこちらへ歩いてくる彼女と、もう1人の姿が目に映った




『ねぇ…了、私のこと愛してるんだよね?』



梔子色の髪に、肩にかからないボブヘアー。潤んだ薄紅色の瞳で、こちらを愛おしげに見つめるマリは、俺と視線が合うと、にこりと笑った






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