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blood 血の誓い  作者: さくらもち
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黒き狼

「海の家系は間違いなく人間。全く吸血鬼の血は入ってなかったヨ」


DNA検査の結果を教えてもらうことになり、天明に呼ばれてラボに行けば、結果はこの通り


「そうなんですか?」


人間だと言われ、ほんの少しだけ残念に思ってしまう自分がいたのは、吸血鬼の血のお陰で体が丈夫になったからだろう



「逆に人間だけの純血も珍しいネ」


「じゃあ、どうして私は特異体質になったんですか?」



「僕の考えだと、海の場合は、何も混じってなかったからこそ、吸血鬼の血が混じった事で、変異したんだと思うよ」



「なる、ほど…?」



「それにしても、暴走しなくて良かったね」


「暴走、ですか?」


しかし師匠曰く、全く知らない血が混じった事で、変異することはあっても、逆に暴走せずに馴染んでいるのは珍しいことらしい



「例えばネ、A型の人にB型の血を輸血したら、その人の体に合わないから死んでしまうでしょ?ソレと同じで、その人と血が合わなければ苦しんで命を落とすってこと」


要するに、体内で血が暴れると赤血球が壊れてしまい、そのまますぐに死んでしまうみたいだ


「こ、怖いですねそれ」


「怖いよネ〜。けど海の場合は運が良かったよ、特異体質も、よく聞くけど殆どが血が合わなくて死んでしまうから、僕も長年生きてて見たのは海が初めてだね」



「そ、それは運に感謝ですね」


「ネ、運に感謝しなくちゃ」



そう言って、いつものように私の頭を撫でる師匠は相変わらず優しい表情をしていた。 








天明と共にラボを出ると、なんだかやけにネスト内が騒がしく、何事かと思えばドタドタと足音を立て、何か黒いものが飛んできた


「うぇ?!」

「あ、」



勢いよく飛びついて来た何かに押し倒され、尻もちをついてしまえば、目の前には大きな犬…いや、狼が居た




「お、狼?!」


目の前に大きな顔があり、私を見るなり襲うわけでもなく、ぺろぺろと頬を舐めてくる狼に圧倒されていれば、隣の天明は私の上に乗る狼を優しく退かすと、よしよしと頭を撫でている


「あー!ごめん!そいつ俺が拾った犬ぅ!」


パタパタとかけて来る鳥居は、珍しくスーツを着ており、あははと笑っていた


「やけに大きなワンちゃんを拾って来たネ?」



「あー…それがぁ、東山の巡回してたら、こいつがついて来て、しょうがないから連れて来ちゃったんすよ」


「東山ってことは、やっぱり犬じゃなくてオオカミなんじゃ…」


「いやいや、まさかぁ?」


お前犬だよな、と鳥居が声をかけると、すかさずワォンと返事を返すあたり、理解しているようでとても賢い様だ。


やけに鳥居に懐いている狼犬は、黒い毛に金色の瞳をしており、かっこいい


「なんかこいつ、足を怪我してるみたいだったから、天明さんに見てもらいたいんすけど…今、大丈夫っすか?」


怪我をしていると、鳥居が狼犬の足を指差せば、確かに、後ろ脚を引きずっているように見えた


「本当だ、足怪我してるのかな?」


「見てあげるから、こっちにおいで」


天明が手招きをすると、人懐こいのか狼犬は全く警戒することなく、近づいていくので人には慣れているのだろう。


「あ〜、腫れてるね。でも、骨は折れてないから捻挫したのかも」


触るネ、と優しく足に触れると少しだけピクリと体を動かした狼犬を、大丈夫だよと落ち着かせる師匠は、動物の扱いに慣れている



「マジすか?ふ〜…足折れてないなら良かったな!お前、大人しくしてろよ?」


折れていないと聞き、鳥居はほっとしたように胸を撫で下ろすと、黒い毛並みの頭をワシワシと撫でた。


鳥居に撫でられたのが、気持ちよさそうに目を細める狼犬に、お前は黒いから黒と呼ぶ。


見たまんまのネーミングセンスに、まんまじゃんとは思ったものの、なんだか嬉しそうにワンと、吠える狼犬に私と天明は目を合わせた


「賢いネ、この子なんていう犬だろう」


「もしも、オオカミだったらどうします?」


「海ちゃん、やけにオオカミ推すじゃん?」


「だって、こんなに大きい犬見たことないですもん」


「んーまぁ確かに。じゃあ、俺も一応調べてみるか」



「じゃあ先に僕はラボで、湿布と包帯を巻いてあげるヨ」


天明に黒は任せて、鳥居と共に廊下を歩き、休憩室のソファーに座り、スマホであの犬の種類を検索していれば、まったく同じような犬の画像が出て来た


「あ、これじゃない?えーと、ウルフドックだって」


「私も今それ見てました!ウルフドックってことはやっぱり…」


「あはは!…マジで狼犬じゃん?!」


東山で鳥居が拾って来たのは、狼の血が入った犬だった。

調べた結果、2人であの子どうする?と考えていれば、甘い香りを漂わせた王蓮がプルーンジュースを飲みながらやって来た


「何してんの?」


相変わらず、低く落ち着いた声の王蓮は私たちを見るや否やサボり?といたずらに笑う


「違いますよ!東山で犬拾ったんすけど、その種類調べてたら、なんと!ウルフドックだったんすよ!」


「…犬?」



傾げる王蓮の後ろから、ものすごい勢いで駆けて来る、黒と天明の姿が目に入り、ギョッとしていれば狼犬を追いかけている天明が、声を上げた。



「走ると危ないヨー!」



しかし天明の声を聞かず、黒は治療したばかりの足にも関わらず、走り回り私達の心配をよそに、目の前に立ちはだかる王蓮へと、飛びかかった



「何、こいつ」


私の時の様に、王蓮は尻もちをつくことはなかったけれど、黒はそのまま尻尾が千切れるんじゃないか、ぐらいの勢いで尻尾を振り続け、王蓮の顔に自身の顔をなすり付けている



「了が、東山で拾って来た犬」


「でかいね」



正直でかい、どころではない。

仁王立ちしたら、180センチほどある王蓮と同じ目線ほどの大きさだ。

156センチの私からしたら、大きすぎて正直怖い




「東山にいたってのが気に入らないけど」


「あー…ロウの事?」


「最近、あんまり動きがないっすよね?」


「子供が生まれるから大人しくしてるんでしょ」


「こ、こども?!ふ、藤子さんの?!」


「…お前、隠岐の事名前で呼んでんの?キモい」


狼と言われる組織の人と親交があるのか、王蓮は下の名前で呼ぶ鳥居を嫌そうに見ていた


けれど、話がよくわからないのでおとなしくしていると、隣に来た天明がこそっと狼について教えてくれて、隠岐藤子と呼ばれる彼女が狼のボスだと言うことが理解できた


「隠岐って日本では有名だと思うんだけど知らない?」


「隠岐、ですか?…ん〜隠岐プロダクションしか思い浮かばないです」


「そうそう、それ!芸能事務所の隠岐プロ!それ作った人だよ!隠岐プロの子達って皆んな美人なんだよねぇ!特に有名なのは女優の白石リカちゃん!!俺あの子好き!」



「了の好みはいらないヨ」


「え、」


「も、もしかして、あの大手芸能事務所の社長さんって事ですか?!」


「そうだよ、そして裏では狼の女帝だネ。それで、妊娠してるっていつ知ったの?」


「あー仕事でたまに顔合わせて、こないだ旦那のほうに聞いたら妊娠してるって言ってた」


「へぇ?それ聞いて乗り込まなかったの?」


「乗り込むって言ったら、今は縁起が悪いからやめろって、あいつらそういうの気にするんだよ。…で、東山をやるからって言われたから、やめた」


「なるほど、だからあそこに狼は誰1人いないんすね。俺、ずっとあそこでキャンプしてたんすけど、まじで誰も来ないんすもん」


誰も来ない山で1人で見張りをしていたと考えたらなんだか、鳥居が可哀想に思えてならない。


流石に、王蓮も可哀想だと思ったのか、一瞬目を開くと、ほんの少しだけ優しいトーンで鳥居にお疲れと声をかけた



「…今日から縄張りの印つけて歩いていいよ」


「了解です!てことは、こいつは鴉の土地にいたから、もう俺らのペットって事でいいんすか?」



「まぁ、…いいんじゃない」



「お前よかったな!今日から鴉のメンバーだ!」



「で、こいつの名前は?」



「一応、黒いから黒にしたんすけど、他になんかいい名前ありますか?」


「…黒、まぁ、お前が拾ったんだし、それでいいんじゃない?」



「えー…でもなんか、海ちゃんも天明さんも微妙な反応だったんすよねぇ。そうだ!どうせならボスが決めて下さいよ〜」




「ん、俺?……じゃあ、──よる



「夜?へぇー!いいっすね!それがいい!」



黒は、夜と言われ、ピクリと耳を動かすと、先程黒と呼ばれた時よりもどこか、嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか?


すりすりと王蓮に擦り寄り甘える黒は、王蓮が決めた名前が余程気に入ったのだろう


鳥居も天明も、もちろん私も王蓮の決めた名前には異論はなく、早速黒のことを夜と呼べば、夜はまた嬉しそうに尻尾を振った。



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