新学期と始まり
宿題を全て終わらせやっと解放されたと思えば、今日で最後の夏休み。
猿田と玲のおかげで、眠ることなく最後まで作文を書き終えることができた。
それまでの数日は、自分自身に負け、なかなか宿題が進まず…大変だった
なので、師匠の助言通り、彼らに頼ることにしたのだ。
師匠は、久々にうちに遊びに来たかと思えば、ボスからの突然の呼び出しで、すぐにネストに行く事になったけれど、帰り際にまだ、宿題は終わらないの?
なんて、
未だ終わらない宿題を心配しており、正直に進まない理由を伝えれば、士郎達を頼ればいいとのこと。
しかし、つい最近王蓮に、洗脳されているかもしれないから、純血以外とはあまり一緒にいない方がいいと、そう言われた事を伝えれば、師匠はにこりと微笑み、もうその心配はしなくていい、なんていいだした。
「そのことなんだけど、僕が手を打ってるから大丈夫だヨ」
洗脳されても、すぐに解ける秘策があるんだと、楽しそうに笑う師匠に、こんなにすぐに対処できるのは流石だと、驚かされた。
「それと、コレ。僕の新作なんだけど使う?勉強するなら疲れるでしょ?」
そう言ってくれた目薬は、太陽の紫外線や目の疲れに効くと、書かれた白兎のマークをした目薬
師匠の新作で、この夏を乗り越える様に作った爽快クールな目薬らしい
これなら眠気も無くなるだろうと、ありがたく受け取ると、頑張ってネと私の頭を撫でた師匠の手は、暖かくて優しかった
師匠が出かけた後、早速髪を乾かし目薬をさせば、ひんやりして一気に目が覚めた気がして、その日はいつもより宿題が進んだ気がしたのは、師匠から貰った目薬のおかげだろう。
「てか、玲って宿題いつ終わらせたの?」
「俺はね〜、10日前くらいに2日かけて終わらせたよ」
「ふ、2日?!すごいね…」
今日は最後の夏休みということで、勉強を手伝ってくれた、というか私が寝ない様に見張ってくれた2人に、お礼として叔母が、晩御飯をご馳走。
4人で食事を終えた後、ソワソワと明日の学校の準備をしていれば、高校の制服を見た玲は明日学校かぁ、なんて私とは違いなんだか嫌そうな声を上げた
「あ〜、明日から学校始まるのかぁ」
「?」
「なんか、俺あんまり学校好きじゃないんだよね。学校行くならバイトしてた方が楽しいし」
「え、意外!学校も楽しんでるイメージだった」
「そう?…まぁ、勉強は好きだけど朝から急いで行くのもなんか、急かされてる感じがしてさぁ…」
「あー…朝苦手?」
「…まぁ、苦手ではあるかも」
確かに、かなりマイペースな性格をしている玲にとっては、朝から起きて学校に行くのは苦手なのかも知れない
「うーん、行ったら楽しいのに…」
「ん〜、一応朝は走り込みがあるから起きてるけどさ、それから準備して学校行くとなると…なんか、めんどくさいっていうか」
「えぇ?!せっかくの高校生活なのに、その考え勿体無いよ!なら、朝一緒に行く?あ、でも朝早くに行ったら玲の家族に迷惑かけちゃうか…」
「あー…俺んち両親海外赴任だから居ないんだよねぇ」
「え、そうなの?」
ということは、家では1人という事だろうか?
そもそも、玲の家族構成を知らないから何とも言えないけれど、もし1人なら一緒に走り込みして学校に行くのもありだ。
「じゃあ、うちに住む?とか言いそうだなお前」
突然会話に入って来た声に振り向けば、叔母と一緒に買い出しから帰って来た猿田の姿
「あ、おかえりって…いやいや、師匠も泊まりにくるし、うちじゃ流石に手狭すぎるでしょ?」
「まぁ、そうか?…で、玲が不登校になりたいって?」
「いや、そんなんじゃないよ。朝から学校行くのが苦手って話」
どう聞いたら玲が不登校になりたい話になるのかは分からないが、確かにこのままではいずれそうなりそうな所ではある。
ここはもう、鴉の仲間であり友人として、学校の楽しさを教えるのも大事なことだろう
朝のキツさに負けて、楽しい学園生活を無駄にはしてほしくない
「へぇ?…じゃあ、こいつ送るついでにお前も乗せて行こうか?」
「「え?」」
と思っていた矢先、猿田も玲の事を心配しているのか、朝は車で送迎してくれるらしい
てっきり、いや…もちろん朝は歩いて登下校をするつもりだったので、猿田の優しい提案に驚いていれば、私達のリアクションに納得がいかなかったのか彼はムッとした表情を見せた。
「な、なんだよ?嫌なら歩いていけよ?」
「ううん!私、普通に歩いていくつもりだったんだけど、強ちゃん送ってくれるの?」
「まぁ…俺が朝から仕事ない時は、だからな!」
「へぇ〜…じゃあ、俺も送ってもらおうかな」
相変わらずな猿田だけれど、こういう所は好きだ
結局は玲の事を考えて、決めてくれたのだろう。
「…なんかお前ら、本当可愛くねぇな。素直にありがとう、お願いしますで良いんだよ、こういう時は」
「「ありがとう!お願いしまーす!」」
可愛くないといいつつ、どこか嬉しそうな様子の猿田に、玲と2人で顔を見合わせると息を揃えて猿田へと頭を下げた。
猿田は、口ではめんどくさそうに、ハイハイなんて言っていたけれど、明らかに声は弾んでいるのが分かり、頬が緩んだ
□□□
「んじゃあ、お前らちゃんと勉強してこいよー!」
朝から私達を美波高校へと送ると、猿田は眠たそうな表情をして、車を出した
校門に立ち、2人で手を振り猿田を見送ると、私達も各自、自分のクラスに向かったのだが、朝早くに来すぎてまだ、誰も来ていない
今日の体調もバツグン、制服もばっちりの状態で、忘れ物もせず、カバンに詰め込み早く学校に登校。
久しぶりの教室に入り、自分の席に座りソワソワしていれば、ちらほらと数人のクラスメイトがやってきた。
その中に、仲の良い友人の姿が見えて、ブンブンと手を振れば、彼女は私を見るなり、嬉しそうに笑うと駆け足で側までやってきて、第一声はやはり体調の心配。
あまりにも心配しているハルに、体調の事を、説明すれば、それはもう健康になった事を喜んでくれた。
とりあえず理由としては、夏休み中に良い病院を見つけて、薬が効いたと説明すれば本人の私より喜ぶハルに、胸がじーんとしたのは彼女が優しくて、良い友人だからだろう。
「え、しらさぎカフェでバイトしてんの?!」
「そうそう、体を動かそうと思って」
「まじ?そんな急にバイトなんかして体調大丈夫?無理してない?」
「してないしてない、逆に健康になって幸せだよ私」
「…そう?海が幸せなら私は嬉しいよ。じゃあこんど海がいる時にしらさぎカフェに行くよ」
「本当?!来て来て!ハルちゃん来たら嬉しい」
楽しみだと言うハルに、同級生の玲の話を出せば、玲って葉山玲?と知っている様子
「え、知り合い?」
「違うけど、彼って一年で人気な子でしょ?」
人気、と言われてもいまいち、ピンとこない私にハルは、あははと軽く笑うと彼は綺麗だから、だそうだ。
「え、そゆこと?」
「うん、学年1の美男子って評判だよ」
学年1の美男子、確かに玲は綺麗な顔をしているのは確かだ。
初対面でも綺麗な子だとは思ったけど、そんなに人気な人だったとは知らなかった
「海は休んでたから知らないだろうけど、家庭科の授業でクッキー作った時はすごいんだよ?もう、彼のクラスから廊下まで、女子の行列が凄かったんだから」
「ええ?!クッキーあげるために?!それは凄すぎ…」
めちゃめちゃモテモテな癖に学校が面白くないなんて言ってたのかあの人…なんだか、羨ましい話だ。
基本夏休みに出会った人達がカッコ良すぎるせいで見慣れていたけれど、確かに玲も師匠も綺麗な顔をしている。
猿田も、いけてるとは思うけれどあれは性格のせいで外見が霞んでしまうのだから、勿体無い
けれど、中でも王蓮にはいまだに慣れないのは何でだろうか?
やはりボスだからなのか、それともあの威圧感なのか、どうしても今だにうまく話せないのは事実
あの真っ赤な瞳で射抜かれると、どうしても言葉に詰まると言うか、胸がドキドキして…
「ん、ドキドキ?」
「え、どうした?胸が痛い?!」
王蓮のことを思い出し、胸を押さえていればハルは私の体調が悪くなったと思い、咄嗟に私の背中を撫でてくれるのだが、体調は平気だ
「いやいや、ちがくて!その…最近、出会った人で何と言うか、その人の前だと…うまく話せなくて」
「…えぇ?!なに?!恋バナ?」
「こ、恋?!ち、違う違う!」
「え、だって胸がドキドキって…それってもう恋じゃん」




