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blood 血の誓い  作者: さくらもち
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葛藤

「…おい、説明しろ」


一瞬にして、その場の空気を変えたのは王蓮の鋭い視線と、低い声


久々に会った友人に、裏切られたと思えば思うだけ、腹が立つのはアダムの事を本当に友人だと思っているからだ


この苛立ちを誤魔化すために、プルーン酒の入った、グラスの香りを嗅げば、甘ったるい血の香りのせいか、更に眉間に深い皺を作るはめになった。



暫く沈黙が続いたかと思うと、アダムが声をあげ、俺と同じ赤い眼差しをこちらへと向けた



「説明、か。そうだな…君の、幸せのために私が提案したんだ」



「…風太郎、少しだけ席外して」


「わかった。外で一服してくる」


君の幸せのために、なんて言い出すアダムに、とりあえず、龍の血の話を知らない風太郎には、席を外させれば、バーテンダーも空気を読んだのか、その場にはアダムと自分の2人だけに。




「これが、どういう意味かわかってる?」


「あぁ、彼女から聞いたよ。結びの誓いだってね」


手にしたグラスを見せながら聞けば、知っているよと、返され知っているにも関わらず、あいつの肩を持つアダムには、更に腹が立って仕方がない




「分かってて、あいつに協力してるなら、お前は俺を裏切ったってことだけど」



手にしたグラスをわざとらしく揺らせば、中の液体も揺れその都度、甘い血の香りが鼻を通っていく


「君が、そんなに彼女と一緒が嫌だとは思わなかったよ」


「…前に、お前も掟に囚われるのは嫌だって言ってたじゃん。純血だけにこだわって、より強い血を残す為だけに、好きでもない奴と一緒になんて…馬鹿馬鹿しいだろ」


「あぁ。私の勝手な行動で、君を傷つけた、…すまない」



「悪いと思ってるなら、これはお前が飲んでよ」


「え?」


「これを、代わりにお前が飲んだら許す」



「…それって、解毒剤はあるのかい?」


「解毒剤?あー…あるある、俺を信じろって」



「……」


「結びの誓いは、お互いの血を飲み合わなければ大丈夫だ」


「私には、妻が居るんだが……でも、それで許してくれるなら、飲むよ」



アダムに妻がいるのは、さっきの話で分かっているが、人に惚れ薬を飲ませようとしていたんだ。



どうせ、お互いの血さえ飲み合わなければ、結びの誓いは成立しない。


妻が居るアダムには悪いが、勝手に俺にあいつの血を飲ませようとしたんだ…このくらいの腹いせはしてもいいだろう。


…だけど、



やっぱり



 

「待て、やめろ」


俺を疑うこともせず、プルーン酒に手をかけたアダムを見て、流石に騙すことはできず、寸前でグラスを取れば、アダムは驚いた表情を浮かべた


俺に明凛の血を飲ませようとした奴だが、やはりそんな相手でも、惚れ薬を飲ませることはできなかった。


すると、アダムはふらりと柔らかいソファーに、倒れる様に座り込んだ。



アダムの様子を見るに、やっと天明の睡眠薬が効いてきたのだろう


今にも意識を失いそうな表情に、アダムは眠気と戦っている様子、しかし抵抗する力もない様で、段々眠気に飲み込まれている


「君を、しん、じている」


しかし、暫くすると、俺を信じているなんて言い残し、もう限界が来たのか、アダムは深い寝息を立て始めた。


気持ちよさそうに眠るアダムを見つめ、流石に明凛の血を一滴でも飲ませよとした自分に、驚きと嫌気がさした


いくら、俺を騙して血を飲ませようとしたからといって、家庭があるアダムに、なんて酷なことをしようとしたのだろう。


ほんの少しの魔が差したのだが、そんな事を考えてしまった自分の、この愚かな行為にはどうしても呆れてしまう。


はぁ、と小さなため息を吐き、眠るアダムの横に腰を下ろすと、ちゃんと眠りについているかを確認し、当初の計画だった血液の採取を始める。


ポケットから小さな箱を取り出し、アダムの袖を捲ると、すばやく注射器で血液を摂った


注射器、3本ほどを採血し、最後にお礼として自身の血をアダムに飲ませれば、血薬の効果ですぐに目を覚ましたアダムは、目を覚ますと第一声、意味の分からない事を言い出した。




「…王蓮っ、頼む!息子を止めてくれ!あの子を止めれるのは、君だけだ!」



必死に俺の腕を掴み、先程とは違い別人の様に怯えた表情のアダムに、何事かと黙って聞いていれば、息子を止められるのは俺しかいない、と言い出した。


まだ、幼い息子をさっきまで愛おし気に話していた人物とは、まるで違う。


怯え、取り乱すアダムの背中を、軽くさすってやれば、アダムは真っ直ぐに俺へと視線を向けると、真剣な表情を浮かべた



「あの子の洗脳は、強い…放っておけば全てを支配してしまう」













『もしもし、うん?…え?分かった。今からネストに向かうネ』


王蓮からの電話を切り、丁度お風呂から上がって来た海に、今からネストに行くからと伝えると彼女は頷き、気をつけてくださいねと柔らかい笑顔を浮かべた


「せっかくDNAの検査結果を教えようと思ってたのに、ごめんネ」


「それは!…気になるけど、師匠がいる時に一緒に見ましょう!それまで私も残りの宿題終わらせるの頑張ります!」


まだ、宿題が終わっていない様で、ここ数日は海は必死に机と向き合っており、中々話す機会がなかった。

それでも、毎日の日課は行なっている様で、我が弟子ながら真面目で感心する。


それにしても、夏休みはもうあと3日しかないけれど、大丈夫なのだろうか?

流石に1週間もかかるのは、心配だ。


もしかして海は、勉強が苦手なのだろうか?



「海、玲や士郎に分からないことがあれば聞いてみたらどう?」


「…あんまり時間かかりすぎて心配してます?」


「うん、こんなにかかる宿題が、気になるぐらい」


流石に、まだ終わっていないと聞けば一体どんな量の宿題なのか、気になる。


もう夏休みは終わるし、なんだかこっちが心配してしまうのだから、変な話だ



「いや、なんか宿題してたら眠くなって、中々進まないんですよね…」


あははと苦笑いを浮かべる海に、だったら尚更士郎達と一緒にしたら?と提案すれば、そうすると。


「うん、それとちゃんと血もらってる?忘れて枯渇しない様に気をつけてネ」



「はい!ちゃんと飲んでます!でも…気をつけます!」


「うん、じゃあ…僕、行ってくるね。おやすみ」



まだ、海の乾いていない湿った頭にポンと手を乗せれば、彼女は、また柔らかい笑みを浮かべ、おやすみなさいと笑った







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