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blood 血の誓い  作者: さくらもち
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再会と乾杯

「血薬って、誰の?」



ネストの一室に、王蓮が作った小さなラボがある。そこへ眠った鈴を移動させ、母から採血した血薬を投与するが、鈴は先程から眠ったまま。


血薬なら、洗脳はすぐに解けるだろうと、彼女が飲む水に、血薬を混ぜて飲ませたけれど、中々すぐには効かず、量を増やせば今度は、逆に気を失ってしまった。


これでもしも、鈴が誰かに洗脳されていれば、確実に解けるはずだ

後は、彼女が目を覚ますのを、静かに待つしかない。


その間、母の血薬のストックが残りいくつあるか、サンプルを数えると、いつの間にか、もう残り3つ。


最近は、鉄分を増やすサプリなどを、特に研究していたため、血薬を補充するのを忘れていた自分のミスだ


残り少ない血薬に、はぁと大きなため息が溢れるが、ないものはしょうがない。

また、母に連絡して送ってもらおうとも考えるけれど、どう考えても中国からだとかなり時間がかかる



「あ〜あ。どうしようかなぁ」



アルコールの匂いが漂う、静かな室内で、ボソリと呟けば、ちょうどいいところでガチャリと扉を開けて入って来た王蓮



「へぇ…、寝てる時は静かにしてるじゃん」


「ちゃんと血薬が効いたみたいだよ」



「血薬って、誰の?」



血薬、と聞いてニヤリと笑う王蓮に、僕のじゃないから!と、すぐに否定しておいた。


僕は王蓮と違って、女の子を男の子と間違えたりしないし、結びの誓いは好きな人にしかしないって決めているんだ。





「母さんの血を使ったんだけど…もう、あんまりないんだよネ」



「あー血薬が必要なら、ちょうど明凛がいるじゃん」


「えぇ〜…姉さん、くれるかなぁ〜?」


「どうせ使うんだから、貰っとけよ」




確かに、血薬は万能薬だ。

せっかく姉が日本にいるなら、姉から血を貰っておいたほうがいいとは、思う


確かに王蓮の言う通り、ダメ元でも頼んで血をくれれば、ラッキーだよね



「分かった、姉さんに頼んでみるヨ」




「うん、後は…こいつが目を覚ましたら、白蛇の創設者が誰か、聞きだして」



「分かった」








□□□



都内の、静かなバーを貸切り、昔の旧友3人で集まるのは、何年振りだろうか


久々に再開した友人は、相変わらず人の良さそうな顔をしており、少しホッとしたのはアダムが全く変わっていないからだろう


正直、友人を疑うことはしたくないが、洗脳を使えるのは、俺が知る限りではこいつしかいない。


けど、アダムの他にも使える者がいれば、こいつの疑いは晴れる



「王蓮は、結婚はしないのかい?」


「…は?」


再会早々、こいつはオレの予想もしない事を、さらりと聞いてくる


急だったのもあり、一瞬理解できずに何を言っている?と返せば、そろそろ子供が欲しくならないか?だ、そうだ。



子供が欲しいなんて、今まで一度も考えたことがない。


酒の入ったグラスを片手に、返事をすればアダムは、年齢を考えても?と、更に踏み込んでくる


流石にこの質問に答える気はなく、隣でウイスキーを、嗜んでいる風太郎へと話題を投げた



「そういうのは、風太郎に聞いた方がいいんじゃない?」



「え、俺も予定ないよ?」


「…2人とも、つまらないな」



「つまらないは、ひどくない?…じゃあ、アダムは予定あるの?」


「私かい?…私は、もう結婚しているから」



「え、あ、あぁ!やっぱり?…それ!指輪してるから、気になってたんだよね」


「……ほぉー」





会わない間に結婚していたとは、知らなかった。


昔から、こいつは好きな女が出来ると、隠すタイプだったのは知っているが、結婚することすら内緒にしていたとは。


まぁ、アダムがイギリスに行ったのは、50年前の話だ、50年も間が空けば連絡がないのは、仕方がないのかもしれないな




「会ったら、直接伝えようと思ってたんだよ。でも、今になってしまって…、すまない」



「別にさぁ、直接じゃなくても良かったのに」



確かに、連絡がなかったことは引っかかるが、直接じゃなくてもよかったと…思う、がアダムの性格的に、直接会って伝えたかったんだろう



「…まぁ、アダムらしいんじゃない?」




「そう、かな?…本当、2人とも報告が遅れてすまない!」




「うん。…で?お前の嫁って俺が知ってるやつ?」




「どう、かな?イブって言うんだけど、会わせたことあったっけ?」




「イブ?」


「あー!あの、白髪の綺麗な子じゃない?…ほら!明凛とちょっと似てるけど、全然違うなって言ってた子だよ」



白髪?あー…なんか、たぶん、思い出した。


前に一度だけ、アダムと一緒にいる所を見かけたことがある、その時の女だ。


白髪はよく、似ていたけれど、あのうるさい明凛とは違い、大人しく品のいい女だった気がする



「あー…アダムがやけに、隠してた女ね」


「隠してた、つもりはないけどな」


「とかいって、あの時も軽く挨拶しただけですぐに、どっか行ってたけどなぁ」


「…そう、だったかな?」



左手の薬指にはめた金の指輪を眺めるアダムの瞳は、優し気な表情を浮かべており見るからに幸せそうだ




「ちゃんと、2人に紹介しておけばよかったね。彼女は、とても素敵な女性なんだ」



「へぇー…」

 


「2人も、いい奥さんを見つけたらいいよ」


「ふーん」


「見つける、かぁ〜」




「結婚は、いいぞ」


「…興味ない」


「ふふ。確かに、王蓮が興味あったら逆に面白いね」



「もしかして王蓮は、女性に興味がないのか?」


「違うよ、アダム。王蓮は興味が湧く女性がいないだけだよ」


「…ほう?なるほど」




なんだか、勝手に話を進められているが無視して、バーの店員にウイスキーを頼めば、すぐに出てきた。


今ので何杯目かは忘れたが、ここの酒は冗談抜きに美味いと思う


アダムの行きつけの店らしいが、隠れ屋すぎて全く知らなかった、これを機に通おう



「結婚したって事は、アダムは子供いるの?」



「私かい?…いるよ。まだ10歳なんだが、とても賢い子でね、イブによく似ているんだ」



「そっかぁ…アダムが親か〜。人生わからないものだね」


「そうだなぁ、出会いって大事なんだよ」


「…ふーん?てかさ、今日お前は惚気に来たの?」


さっきからずっと、恋愛トークならぬ嫁の話にそう言えば、アダムは違うと否定するけれど、誤魔化す様にブランデーを口に運んだ。


にやにやと、風太郎と目を合わせればコホンとアダムの咳払いが聞こえてくる


普段真面目な男を揶揄うのは、正直面白い。





暫く、他愛のない話で盛り上がり、酒が進むけれど、アダムも俺と同じで酒に強く、未だにピンピンしている



今回の目的は、ただ友と酒を飲むだけではなく、もうひとつ、アダムの血を採取しなければならない。


しかし、中々タイミングがなく、どうしたものか…バレずに睡眠薬を飲ませたいと風太郎には、話していたけれど中々事を進められない。


一旦会話が落ち着いた所で、風太郎に目配せすれば、瞬きで任せてと返事が返ってきた。


アダムに怪しまれない様、風太郎がスマホを取り出すと、自然にアダムの視線はスマホに向く



その間に、アダムの飲むブランデーに睡眠薬の液を素早く垂らせば、ポタポタと、液体がブランデーに滲んでいき、すぐに元の色と馴染んだ



チラリと横目でアダムを確認すれば、全く気がついていない様で、ふうと小さく息を吐いた




「しらさぎカフェを始めてね、これが俺のお店。良かったらアダムも、奥さんと子供を連れておいでよ」


「しらさぎカフェ?ここってもしかして、今人気のカフェじゃないかい?もちろん!是非、行かせてもらうよ」



「いつでもおいでよ、サービスするから」


「おお。それは、楽しみだなぁ」




2人で話し込む様子を見るに、アダムは全く気がついていない


どうにか、睡眠薬を入れることには成功したが、きちんとアダムが睡眠薬の入ったウイスキーを飲み干すまでは、まだ安心できない。



「そうだ、ここのプルーン酒が美味しいんだよ」



2人も飲むかい?なんて、お勧めしてくるアダムに、睡眠薬を盛った事にほんの少し罪悪感はあるが、正直言うとプルーン酒は大好物だ。


すぐに頼む、と頷けばアダムはにこりと微笑み、店員にいつもの、なんて合図を送った 



「プルーンは、王蓮好きだよね」


「1番美味いし、鉄分が取れるから楽じゃん」


「君は、変わってないね…いいことだ」



「お前も、変わってないよ」



吸血鬼は人間と違い、いつまでも若いままなのは当たり前だが、アダムは内面も昔のままだ



カランと氷の音を鳴らし、ウイスキーを飲み干すと、アダムはプルーン酒の入ったグラスをこちらへ向けた



「再開の記念に、もう一度乾杯しよう」


「…あぁ」


「そうだね」


グラスが当たらない様に3人で乾杯し、プルーン酒の香りを楽しむ。


ウイスキーの香りが強いが、どことなく甘い香りが鼻の奥を通り抜け、プルーンの甘い香りとは違う、もっと甘い、嗅ぎ慣れた香りに眉を顰めた



「…これ、血の匂いがするんだけど」



「え、どれ?…あぁ〜、本当だ?あれ?この血は…明凛の?」


特に鼻が効く、風太郎へとグラスを向ければクンクンとプルーン酒を嗅ぎ始めた

少し嗅いだだけで、誰の血なのか分かるのは風太郎の匂いを嗅ぐ能力が長けているから




「おい!飲むな!」



風太郎の絶対的な匂い判定で、明凛の血が入っている事を確認していれば、1人だけ呑気に驚きもせず、プレーン酒を嗜んでいるアダム


明凛の血が入っていると言うことは、異性が飲むと確実に、結びの誓いになる


アダムのグラスをすぐに取り上げ、グラスの中のプレーン酒の匂いを嗅ぐが、アダムのグラスからは、血の匂いは全くしない



「…風太郎、お前のグラス貸して」


「ん、どうぞ」



風太郎からも、グラスを受け取り匂いを嗅ぐが、明凛の血の香りは全くしない


どう言う事だ…?


俺のグラスからしか匂いがしないと言う事は、確実に、俺だけに飲ませようとしていたのだろう。


この、きついウイスキーの香りで、血の匂いを誤魔化せると思って混ぜたのだろうが、そんな誤魔化しは俺には通用しない





「…風太郎?」


「いや、俺じゃないよ!」



確かに、風太郎はありえないか。


俺が明凛の事を鬱陶しく思っている事は、よく知っている。


だから、もしも明凛にこんなお願いされても、風太郎がこんな馬鹿な真似をするはずがない



だったら、考えられるのは、ここにいる…



「…お前か、アダム」



先ほどから、全く焦った様子もないアダムに視線を向ければ、アダムは大きなため息を吐いた




「はぁー…ウイスキーで誤魔化しても、無駄だったか。」





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