内通者
天明がネストに行った後、誰も家にいないことを確認し、スマホから電話をかければ楽しそうに笑う電話の主
「あんたの言った通りに食事に誘ったけどダメだったわ」
あの日の夜、彼に言われた通りに王蓮を食事に誘ったけれど、仕事だと言われ彼は死人狩りへと向かってしまった
そのことを電話口の相手に話せば、電話の相手は想定内だと。
『そうなることも考えていたから、気にしていない』
「へぇー?あんたは気にしなくても私は気にするんだけど?」
『あぁ、結びの誓いだったかな?それは残念だ』
王蓮に血を飲ませることを協力してくれる、なんて言っていたくせに、他人事のような言い方は気に入らない
「あんたが協力してくれないなら、そっちの協力はしないわよ」
『それは困るなぁ、実際きみが王蓮を引き留めていれば鈴が捕まることもなく、今頃はあの少女はこちらにいたはずなんだが…』
「それは…」
『まぁ…でも、それも想定内だ。鈴を鴉に潜り込ませることに成功したのだから』
「…へぇ?だったら、次は私に協力してくれてもいいのよ?」
『…ふむ。仕方ない、王蓮とは今度飲みに行く約束をしているから、その時に君の目的を達成すればいい』
どうだ、それでいいか?と言われ、とりあえず私の目的が果たせるのなら、それでいい
『あぁ、それと鈴の事を頼むよ。あの子は妹の大事な娘だからね』
そんなに大事な子なら、なぜこちらの捕虜にしたのだ。
わざわざ、捕虜にするぐらいだから、たいした子じゃないと思っていたのに
「…分かったわよ、とりあえず約束は守ってよね」
電話を切り、ベットへと横になると仰向けになりアイボリーの天井が視界に写った
ここに来た目的は、王蓮に自身の血を飲ませること、その為だけにココに来たのだから、絶対に達成しなければならない。
幼い頃から好きだった王蓮が、唯一振り向いてくれる方法はもうこれしかないのだ
元々婚約者だったのだから、このぐらいしてもきっとバチは当たらないはず。
昔は皆そうやって結婚していたと母も言っていたのだから、これは普通のことだ
ただ、気になるのはアダムが自分の姪っ子まで巻き込み、海を手に入れようとしている理由はよく分からない
人間から吸血鬼に変化したのは確かに興味深いけれど、そこまでして欲しい血なのだろうか…?
「あーーー!!もう考えるのはめんどくさいわ!…とりあえず、今は血を飲ませることだけに集中」
そうだ、いくら考えたって理由なんか分からないなら、もう直接本人に聞いたほうが早い
けれど、今はそれよりも自分の目的のことだけを考えようと、ゆっくりと目を瞑った
「父さん?誰と電話してたの?」
明凛と電話を終えれば後ろから、寝起きの息子が声をかけた
眠たい目を擦り、寝癖のついた白髪を整えてあげれば、目を細め嬉しそうにしている可愛い我が子
「エデンおはよう。友人とお話ししていたんだ」
「そっか、…ねぇ父さん、昨日からりんが帰ってこないけど、どこに行ったの?」
「あぁ、鈴はもうすぐ学校が始まるのに課題をしてなくてね、テーマが山らしく昨日から友人と北洋山にお泊まりに行っているんだ」
「へぇ?りんって、友達いたんだね…」
「あはは!鈴も友達くらいいるだろう?…もしかして、鈴がいなくて寂しいのかい?」
いつもは、鈴がエデンにくっついているイメージだったが、意外にも寂しそうにしているエデンに尋ねれば、息子は口を尖らせ、寂しくないよと拗ねている。
なんだか少し寂しげな息子に、鈴に早く帰って来るようにと伝えてみるよと言えば、息子は喜んで赤い瞳を輝かせた
「早く帰ってこないかなぁ」




