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blood 血の誓い  作者: さくらもち
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救世主

迫りくる鞭を避け、死人をひとりずつ塵にしていれば、うまい具合で避ける私へ鈴が声を上げた




「もうっ!すばしっこい」



手足を狙って鞭を向けてくる彼女は、最初に言っていたように、本当に私を殺す気はない様だ


しかし確実に、動きを止めようとしているのか先ほどからずっと、手足ばかりを狙ってきている




「いっ…た!!」


バシッと偶に足に当たる鞭は、それは痛く小さな悲鳴をあげながらも、なんとか痛みに堪えていた


しかし、皮の鞭で撃たれた太ももは、赤く腫れ上がっており、鞭の跡がくっきりと浮き出て、みみず腫れの様な湿疹ができ、ヒリヒリと熱く段々と痛みが込み上げてくる



「っく…」


痛みを、歯を食いしばりぐっと耐えていたけれど、一方的にやられっぱなしな自分が悔しくなり、迫ってくる鞭を切り落とそうと試みた。



しかし、そう簡単にうまくいく筈もなく、何度も空振りしてしまい、ただ空気を切る音だけが、辺りに響いた



彼女の鞭は蛇の様に滑らかに動き、私の剣先を簡単にすり抜けていく


中々、思い通りに彼女の鞭を切り落とすことが出来ないので、気を取り直し、一旦襲いかかってくる死人を塵にし、鈴との距離を取る選択に切り替えると、右足のホルスターからハンドガンを取り出し、そのまま彼女へと銃口を向けた




鞘を振るう鈴の腕を目掛け、躊躇う事なく引き金を引けば、激しい爆発音と共に大きな振動が私の手を震わせる



──バンッバンバン!!!!



激しい音と火薬の香りと共に、何発か銃弾を撃ち込めば、鈴の細い腕に命中し、持っていた鞭を地面に落とした。


ぽたぽたと腕から、滴り落ちる真っ赤な血が地面にこぼれ落ちると、風と一緒に血の甘い香りが私の鼻を通り、少しだけお腹が空いてくるのはしょうがない




「せっかく殺さない様に、わざわざ鞭で相手してあげてるのに…マジで、全然可愛くなーい」





先ほどよりも明らかに、ワントーン低い声になった鈴は、血の滴る腕を押さえこちらへ鋭い眼差しを向けてきた



ポケットから赤い飴の様な物を取り出すと、口に咥え、腰に仕込んでいた拳銃を取り出し、負傷していない方の腕で銃を握り、私へと銃口を向けた彼女はニヤリと口元を緩ませ微笑んだ




「まぁ、半殺しなら…ぎり大丈夫でしょ」



咄嗟にこちらも銃口を向け、引き金を引けばバァンと辺りに銃声が響き渡り、同時に走って避けようと試みたものの、左足に激しい痛みが走った



猿田と初めて会った時と同じ、あの痛みについ反射的に撃たれた右足を目に入れると、撃たれた太ももからドクドクと大量に血が。


自分の血の匂いが漂うと、待ってましたという様に、死人は私の血に反応し私へと飛びかかってくる勢いでこちらを見据えてくる


流石にこれはまずいと、ハンドガンで死人達を撃ち落として行くけれど、足を引きずっているので動きが遅く、気を抜いたらおしまいだ


──バァン、バン!!



流石の危機に、焦り周りをよく見ていなかった為、両手でハンドガンを握る腕を銃弾が貫通するまで、一瞬だけ鈴のことを忘れていた。



手に握っていたハンドガンが地面へと音を立てて落ちていくのを見て、やっと腕を撃たれたのだと理解すれば、横から高い笑い声が聞こえた




「よそ見してちゃダメだよー?」


「っ…!」



「戦場において、気を抜くのは一番ダメだよ?死人に気を取られて私のこと忘れてたでしょ?」



「…さいあく」



痛恨のミスを、相手からも指摘され傷つかないはずもなく、ぐっと唇を噛み締めれば口の中に甘い血の味が広がり、ギロリと鈴を睨みつけた。


しかし、彼女は更に口角をあげ楽しそうに笑うと、また銃口を向けてくる



「その目、凄くぞくぞくするんだけど」



鈴は両腕をだらんと伸ばした私へと近づくと、至近距離で私の右足を撃ち、またあははと楽しそうに笑っている


見た目は愛らしい少女の様に見えるのに、人の苦しむ姿を見て楽しんでいる彼女は、残酷だ



大量の出血で、だんだんと視界が霞んでいくのがわかり、痛みで震える腕でぎゅっと拳を作れば鈴は、私の頬に手を伸ばした



しかし、彼女の指が私に触れる直前、銃声と共に鈴の腕から血が飛び散ると、私の顔にピシャリと血しぶきが飛んだ



「っ、はぁあ?!」



急に飛んできた銃弾に、意味がわからないという表情を浮かべると、音のする方へ視線を向けた鈴は、視線の先にいる人物を見て、明らかに嫌そうな表情を浮かべた



彼女の視線の先にいたのは、黒い髪に、赤い瞳、それから真っ黒なスーツ姿に身を包んだ、王蓮の姿



まさかの人物に、貧血で回らない頭も逆に冴えた気がする


王蓮は、拳銃を鈴へと向けると鋭い眼差しで彼女を射抜いた



「──死ぬか、捕虜か、どっちがいい?」



ほんの少しだけ、いつもより低い声で、鈴に問いかける王蓮は、気のせいじゃなければ、どこか不機嫌そうに見える



鈴は、この王蓮の登場に分かりやすく顔を歪ませた




「うわぁー!最っ悪!!龍王蓮が来るなんて聞いてないんだけど?」



話と違うじゃんと、ぶつぶつと言いだした鈴は仕方なく銃をしまうと、両手を上げ降参のポーズ


可愛らしく、王蓮へ見逃してとお願いするが、鈴の愛らしさに全く動じる事なく、また引き金を引くと、何発か撃たれた鈴は、両足から血を流し、膝から崩れ落ちた。


 



「お願いするなら、土下座でしょ?」




冷たい声で鈴に言い放つ王蓮は、先ほどのサイコパスな鈴とは違う怖さがあり、私はただ2人を眺める事しかできない。


そんな私へ王蓮は、チラリと視線を向けたかと思うと、じっとこちらへ視線を向けてくる


何を言われるのか、ドキドキと心臓を鳴らせば王蓮は、ほんの少しだけ柔らかい声で私の名前を呼んだ



「死にかけてない?」



「す、すみませんっ!」



お前弱いと言われて、全くその通りだと痛みに耐えながら答えれば、王蓮はいつもの様に眉間に皺を寄せ、鈴へと視線を戻す。



「お前さ、やっぱり死んどく?」



「はぁ?!」




もちろん納得がいかない鈴は、地面に四つん這いの状態で意味がわからないと声を荒げると王蓮は目を細めた



「龍王蓮!!私に手を出したらあの方が黙ってないんだからね!分かってんの?!」



「…うるさい。とりあえず、その口閉じてろ」



お前の声は耳障りと、言葉で刺し彼女の首元を軽くトンと叩くと、鈴は眠る様に気絶しドサッと音を立て地面に倒れ込んだ




私も正直、血を流しすぎて今にも倒れそうなのを我慢していれば、王蓮は私の元までやって来て、しゃがみ込む私の前に座り、視線を合わせた


目の前の赤く、ルビーの様な瞳から目が離せずにいれば、沈黙が続いた後、先に口を開いたのは王蓮だった



「血まみれ」



ついさっきの鈴の血しぶきが、顔に付いていたらしく、王蓮が真剣な表情で、私の顔についた血をゴシゴシと拭いはじめた。


予想外の彼の行動に、一瞬だけ痛みを忘れ、ボッと顔が熱を持ったのが分かり、なんだか無性に恥ずかしい



このむず痒い気持ちに耐えきれず、王蓮の手から逃れようと動けば、低い声で動くなと一言。


怒られたくないので、ただされるがままに、大人しくしていれば、気が済んだ王蓮はそっと立ち上がると、スマホを取り出した




それをただ眺めていた私は、流石に体力の限界を感じて、地面に体を預けると静かに瞼を閉じた

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