白蛇からの交渉
金髪の髪をツインテールにして、首には赤い首輪にすずを付けて、大きな十字架のネックレスを揺らす彼女は、なぜか、私の名前を知っている様で、驚く私を見てにこりと微笑むと、人差し指をこちらへと向けて、私を指差した
「海の血ってすごく貴重なんだって?良かったらその血、私達に分けてくれない?」
可愛らしい見た目とは裏腹に、鈴は私の血をくれと、とんでもない事を言い出す
名前の他にも、私の体質のことを知っている鈴の要求には、流石に疑問に思ったけれど、はっきりと無理だと返事をすれば、鈴はあからさまに残念な表情を浮かべた
「えぇ〜?もう少しだけ海の血があればあの方が喜んでくれるのに…」
「あの方?…てか、普通に考えて私の血をあげるわけないじゃん!」
「はぁ?なんでよ?献血だと思ったら、あげるなんて簡単なことでしょ?」
鈴に献血と同じでしょ?と言われたが、白蛇にそう易々と自分の血をあげる訳がない
大体、勝手に鴉の陣地に死人を放り込んでくる輩に、なぜ私の血をあげなければならないのだ
「うちの土地を荒らす人達にあげる訳ないでしょ!」
「…んじゃあ、無理やり取るしかないってことね」
鈴はそう言うと、残念そうに私を見つめ急に片手を上げ、ヒラヒラと手を振った
その瞬間、先ほどまで大人しくしていた死人達は、ゆらゆらと動き出したかと思えば、こちらを赤い目でギロリと睨みつけてくる
「あーあ、せっかく交渉しにきたのに…海ちゃんはお馬鹿さんね」
鈴は、鞭を取りだすと死人と同じく私へと近づき、地面をバチンッと叩いた。
わざとらしく音を立て、鞭を鳴らす彼女はなんだかとても楽しそうに見えるのは気のせいだろうか
実際、死人とならまだやり合えるが、吸血鬼を相手にするのはこれが初めてになる。
鈴のやけに手慣れた鞭の使い方を見るだけで、内心不安だけれど、鴉として舐められるわけにもいかず、表面上は焦りを見せない様、両手の剣をしっかりと握り直すと、彼女を真っ直ぐに見据えた
「殺しちゃダメって言われてるから、心配しないでね」
ちゃんと生け捕りにしてあげるから
私の事を、殺しはしないといいつつも、目の前に迫りくる死人の数は多く、生け捕りにするにしても、多すぎるのではないだろうか?
「最悪…はやく、強ちゃん帰ってきてよ」
大体、こんな肝心な時に猿田は不在。
頼みの綱の風太郎達も今は、別の場所に居るために、この状況を知らせることができない。
鈴や死人の隙を見て、ポケットからスマホを取り出し、連絡しようかと考えるけれど、今にもこちらに飛びついてきそうな死人達の様子に、そんな余裕もなく、はぁ…と小さなため息が溢れた
こういう場合はどう切り抜けるべきなのかを、きちんと聞いておけば良かったと…今更後悔しても、時すでに遅し




