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オレの世界の神様が思っていた以上に碌でもない件について。

「まずオレからいいか? 質問っていうか、お前に対して疑問があるんだが」


 他の二人が口を開く前に、シオンがアユミに向けて言う。


「ボクに君から? 何かな?」


「お前は、オレが今まで会ってきた異界人達と共通しない点がある。神託の巫女って言ったら、半年以上前には既にこの世界では有名人だった。けど、エリス達他の異界人は全員一月くらい前にこの世界に召喚されている。オレはその共通点を持たない神託の巫女は異界人ではないと思っていたが……お前だけが例外だったのか? それとも、神託の巫女を名乗る人物は他に存在するのか?」


 シオンの当初の予想は、神託の巫女は本当に神様からの神託を授かりエリス達を招いたのだというものだった。しかし実際は、同じ異界人であり独自の調査を行なっての結果だった。予想が外れた理由が、語った通りの他の異界人との相違点だ。


 アユミだけが他の異界人よりも早くこの世界に来ていたのか、それとも神託の巫女は複数人おり、アユミはそのうちの一人なのか。神託の巫女が覆面の姿でしか人前に姿を見せないが故にそれが理に適う可能性。


「そういやそんな事言ってたな。アユミだけ特別なのか?」


「あー、でも確かに、神託の巫女様が何人かで役割を担っているならありえますね」


「なるほどね、いい所に気がつくね。答から先に言うと、ボクが特別他のみんなよりも早くこの世界に召喚されてたのが理由だよ。神託の巫女はボク一人だけ」


 語られたアユミの答は、前者のアユミだけが先にこの世界に来ていたというものだった。どうやら彼女だけ例外の存在らしい。


「せっかくだし、ボクがこの世界に来る事になった過程も聞いておく? ついでに他のみんなが召喚された理由も」


「……そうだな。それがわかっているなら聞いておきたい。オレがってよりは、エリス達がだけどな」


 シオンの返答に、エリスとマサヤも頷く。事の発端を知っておいて損はないだろう。


「おっけ。って言っても、すっごく下らない流れなんだけどね。ボクがここに来る事になった理由は、神様の手違い。シュヘルムヴィアーの奴がなんかヘマやらかしたらしくって、その余波がどういうわけかボク達の元いた世界に影響を与えちゃって、それが原因で死んじゃったの、ボク」


「……は?」


「神様達はその罪滅ぼしにボクを生き返らせてあげる事にしたんだけど、元いた世界ではそんな事できないらしくって、仕方なくこの世界に招いて蘇生されたの。ついでにこの世界で不自由なく生きられるように、超強い権能のスキルも与えてね」


「ぷっ、あはははは! 何ですかそのテンプレ転生!? よくある異世界転生ものの設定そのまんまじゃないですか!」


 アユミの話を聞き笑い出してしまうエリス。いやいや、んな事がよくある話だったら困りものだろうが。恐らくエリスが言っていた元いた世界の創作物の話なのだろうが。


「ホントにねー。最初にそれを聞いた時ボクも笑っちゃったもん。で、神様から貰ったチート能力を使ってこの世界で活躍して、高い地位と名声を得る事になったのでした。めでたしめでたし……ってならなかったのが問題なんだよね〜」


 エリスの反応に頷きながら話を纏めようとしたアユミだが、話はどうやらそれで終わりではないらしい。


「どういう事だ? 実際地位も名声も充分得ていると思うんだが」


「それが問題になっちゃったんだよね。神様達の不手際その二。権能スキルを持つ人は、その権能の神様と能力を共有している事になるの。実は神様って、人々の信仰心によって力を得ているんだけど、実在する人間であるボクの存在が世に知れ渡ったせいで、ボクとリンクしているシュヘルムヴィアーに過剰な信仰心が集まっちゃったの」


「信仰心って……神託の巫女を知っている奴自体は多いだろうけど、お前の事を信仰までしている奴なんてそんなにいるのか?」


「この場合は知っているだけでもじゅうぶんだったの。この世に姿を現さない神様の存在を信仰する人よりも、確かに実在する人間を知る事のほうがどういうわけか信仰心が集まるみたいでね。それでシュヘルムヴィアーが力をつけちゃったのを見て他の神様が「シュヘルムヴィアーだけずるい! 自分も同じくらい信仰されたい!」って言い出してね」


 ……ん?


「それで話し合った結果、いっその事全員シュヘルムヴィアーと同じように人間に権能を与えて信仰心を集めようって流れになったらしくて。それで君達他の異界人が召喚される事になっちゃったの」


「あのー、そこは神様一柱だけが力をつけたせいで世界のバランスが〜、みたいな理由じゃないんですか?」


「うんにゃ。その辺は割とどうとでもなるみたいだよ? つまり君達がこの世界に来た理由は、神様達の我儘ってわけ」


「「…………」」


 エリスとマサヤが固まってしまった。まさか自分達が世界を跨いでまで呼び出された理由が、そんなしょうもない事だったとは。これは同情せざるを得ない。


 しかし、シオンには疑問が浮かんだ。


「権能のスキルを与えるのは、この世界の人間じゃ駄目だったのか?」


「それね、何でも権能のスキルは一度死んだ人間を生き返らせる時にしか与えられないらしいんだ。神様が自ら創造した存在を故意に殺めるのは穢れてしまうからとか何とか言って、他の世界の人間なら大丈夫だからそうしようって事になったんだって」


「は? え、ちょっと待て、今何て言った?」


「ま、待って下さい、一度死んだって……」


 アユミの発言の中に、聞き流すわけにはいかないものがあった。それってまさか……


「つまり、君達は一度神様に殺されてここに来てるの。元の世界だと死亡している事になってるよ」


「」


 突き付けられた現実に絶句してしまう二人。神様よ、自分達の自己満足の為にそこまでするか? 何という理不尽な話だ。


「一応ボクもさんざん怒ってはいるんだけど、全然懲りてないんだよねあいつら。それどころか、六人も一度に異世界から連れて来た余波でまた問題が出てきて、それをボクに押し付けてきたくらいだからね? ホント最低だよあいつら」


 途中から愚痴り始めるアユミだが、当の二人はまともに聴ける状態ではなさそうだ。見るからに頭を抱えている。エリスがこんなにも落ち込んでいるのも珍しいな。無理もないが。


「信じられない……そんな異世界転生の仕方聞いた事ないですよ……酷すぎます……全然笑えません……」


「なあ、それって元の世界に帰ったらどうにかなるのか? てか、帰る事できるのか?」


 うわ言を呟くエリスはともかく、マサヤが気になっていた質問をぶつける。それが聞きたくてここに来たのだからな。


「あー、ごめん。帰ることはできないよ。肉体を持ったまま世界を跨ぐ事が不可能で、元の世界では死者を蘇らせる事ができないからさ。ボク達は魂をこの世界に呼び寄せられて、肉体を再構築されたらしいの」


「…………マジかよ」


 アユミの答に再度落ち込むマサヤ。うん、まあ、聞いてる途中でそんな気はしてた。


「何か神様連中に伝えたい事ある?」


「……くたばれって言っといてくれ」


「私も……」


 アユミの微量な慰めらしい伝言を受け取るという言葉に、二人は力なく応えるのだった。

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