第六話 緑色の風景
今日の任務のペアは、ベニトアイトとシリマナイトだった。
彼らは北極星の加護を受けて空間修復を行う、人型に姿を変えた宝石、シンボシラピスである。そして拠点のシンボシベースにて二人を迎えるのは、異世界からやってきた喋る猫、もとい運び屋の種族フォロスキャットのイーリスだ。
「遅かったな、ベニトにシリマ。様子を見に行こうか迷っていたところだ」
「すまない、心配させたな。任務も俺たちも問題ないから、安心してくれ」
ベニトアイトが眉尻を下げて応えると、イーリスは安堵して尋ねる。
「それなら良いが……何処かに寄ってきたのか?」
「美しい景色に目を奪われて、遅くなってしまいました。申し訳ありません」
イーリスの問いに返事をしたのは、いつもよりも更に穏やかな雰囲気のシリマナイトだ。
「いや、そういうことなら構わんよ。しかし珍しいな」
「私の以前の持ち主が描いていた、緑色が美しい風景画を思い出していたのです」
「イーリス、マラカイトって知ってるか? 昔からよく、絵の具に使われてきた宝石なんだが」
二人の言葉にイーリスは、元の世界にいた宝石の精霊の記憶を引っ張り上げる。
マラカイトは、岩絵具の原料で有名な宝石だ。和名を孔雀石と言い、鮮やかな美しい緑色と独特の縞模様が特徴で、日本でも産出がある。
「そういえば自らの能力で創った特別な絵の具で、絵を描いている精霊が居たような……」
イーリスが首を捻りながら異世界情報を伝えれば、ベニトアイトが微笑む。
「やっぱり、そういう能力を持ってるんだな。流石マラカイトだ」
「ですね。私の持ち主だった人はマラカイトの色をとても好んでいて、よく絵画に使用していました」
「そうだったのか。宝石は本当にいつでも、その美しさを楽しませてくれるな」
イーリスがそう言ってシンボシラピスたちを見上げると、彼らは顔を見合わせる。
「お褒めに預かり光栄です。私たちが皆さんの助けになりたいと思うのは、皆さんが宝石を大切に思って下さるからですよ」
「イーリスも、誰もが癒される猫の種族だぜ」




