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クローン兵は斃れない   作者: 雨麗亭四迷
序章  生き残ったクローン兵
4/26

血塗られた戦場にて

前回、主人公が奇行に走りました。

 鋼鉄製の────『爪』。

 冗談でも比喩でもなく、これまでに幾百もの『i』たちを切り裂いてきたそれは───やはり豆腐でも咲くように、彼の身体を両断─────


「賭けには……勝ったみたいだな…ッ!」


───しなかった。否、()()()()()()


 切り裂かれこそしないものの、その爪の重量故に軽く吹き飛ばされる彼。

 口から血を垂らしながらも、不敵に笑って見せる。


「…………!」

「驚いたか?どうして俺を殺せないのか」


 機械獣(ビースト)を指差す。正確にはその───血塗られた装甲を。


「綺麗な色になってきたじゃねえか。──()()()()()()()……!」


 ギシッ ギシシッ

 機械獣(ビースト)の巨体から、何かが軋むような音が聞こえ始める。


「なァ鉄くず…どうして人間の血が黒く染まるか…考えたことがあるか?」


 鮮血は────黒く染まる。

 その理由。

 その原因。


「てめえのハードにも情報が入ってんだろ?血中の酸素を運搬する物質───ヘモグロビンが酸素を手放してるからだってなァッ!」


 そう言って再び、足元に転がった死体を蹴り上げる。


「ここまで言えば理解できるよなァ!?鋼鉄製のテメェにとって、全身に浴びた血が酸素を手放すことの意味をよォ!」


 ギシッギシギシギシギシギシッッッッ


 もっとずっと───音を大きくし続ける軋み。

 それを聞きながら彼は笑う。

 笑う嗤う嘲笑う。高らかに───嘲笑(あざわら)う。


「直に高濃度の酸素に触れるんだからよォ……そんな状態下に置かれた鋼鉄は────急速に酸化する………ッッ!」


 酸化。もしくは────『錆び』。

 鉄と酸素の結合にを指す()()は、鋼鉄製の肉体を持つ機械獣(ビースト)にとって最も危険な───()()


 目に見えて緩慢になった機械獣(ビースト)の動きは、一般人でも軽く避けられるレベルにまで遅くなっていた。

 かつて幾百もの『i』たちを切り裂いてきたその爪を、もはや凶器とは呼べないその爪を、掻い潜りながら彼は笑う。


「酸素をテメェの内部まで運んだのは俺の『能力』だ。くそったれの雑魚能力だがな。使い道くらいはあったようだ」


 そう───苦々しく吐き捨てる。


 ドシャッ


 とうとう酸化が身体の末端部まで至ったのか、足を屍体にとられての転倒。

 機械生命体。兵器。機械獣(ビースト)と呼ばれるそれ。

 形勢逆転。

 そんな四字熟語すらも謙遜に感じるほどの、絶対的な逆転劇。

 彼は──『i』の生き残りは──

 ほとんど動かなくなった機械獣(ビースト)を踏みつけながらせせら笑う。


「ハハッ!どんな気分だァ!?御大層な性能誇示してェ………捨て駒Aに嬲り殺される気分はよォッッ!!」


 軋む音すらも小さくなってゆく。

 動きが、反応が、生命としての活動が────希薄になってゆく。


「さァ────────終幕だ」


 いいもの持ってんな、『俺』。

 そう呟いて、足元に落ちていたハンドガンを拾う。


「俺は────テメェの屍骸を踏み越える」


 ドガァァァァァァンッッッッ!!


 戦場に銃声が───鳴り響く。


「代わりに……地獄の底で、生きてやるからよォ」


 この────地獄の底で。

 そう呟く。

 周囲を見渡して苦笑。


「ハハッ。絶望的だな………何にも変わらず」


 それらは、轟音とともに迫っていた。

 それらは、死とともに迫っていた。

 それらは─────


 機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣機械獣………………………


 まるで軍隊のように。

 まるで群体のように。

 視界を、景色を埋め尽くす機械獣(ビースト)

 その光景は彼をして絶望と言わしめるほどの、『死』の予感を孕んでいた。いや───体現していた。

 数万の機械獣(ビースト)が数キロ先まで迫りくる。


 ───そんなときだった。

 一人の『闖入者』が彼と機械獣(ビースト)の間に現れたのは。


 その『闖入者』は手を口元に添えると───軽く欠伸をした。

 戦場にはあまりに不似合いで不自然な、その動作。

 けれど、戦場を終わらせるには、それで十分すぎた。


 なぜなら───その動作を『闖入者』がとった、その時。

 その瞬間。


 数万もの機械獣(ビースト)の装甲が───一斉に弾け飛んだのだから。

『能力』についての詳細はこのあと出てきます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ドッキドキが、ドキドキがやばくて!!(*´Д`*) 酸化!!やばいすごいカッケェ!!血液つかって訪れるその錆!!やべぇカッケェ!!てなったところからの絶望とその後に来る救世主ほあ!?で!!…
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