表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クローン兵は斃れない   作者: 雨麗亭四迷
序章  生き残ったクローン兵
2/26

クロードの悪夢

主人公登場します

──クロード高原は地獄と化していた。


 仲間たちの屍。逃げ惑う人間たち。そして死んでいく者たちの断末魔。──奇妙なことにそれらは、全て同じ見た目、同じ動き、同じ声色をしていた。

 奇妙というべきか。当然というべきか。

 ここではやはり、当然と言うべきなのだろう。


──なぜなら彼らは、全て同じ「個人」なのだから。


 全と一。矛盾する2つの言葉。

 この矛盾は科学技術の発展によって埋められた。

──それはすなわち、クローン技術の完成である。


 そして、今この場所で血を流し、命を落とす彼らは全て同じ「人間」である。

 クローン技術の完成。それは戦争下にある軍の悲願の完遂でもあった。

 曰く、「兵士を無尽蔵に量産すること」。

 そうして量産された108000体のクローン兵──通称「i」たちは戦場へと身を投じることになる。

 兵士を無尽蔵に量産できることは彼らの命が軽いことを意味し、彼らの命が軽いことは捨て駒にされることを意味する。

 そして──捨て駒にされることは、「玉砕覚悟を前提とされる」ということを意味していた。


 かくして、捨て駒とされたクローン兵たちは『絶対に勝ち目がない』とされる戦いに身を投じることを強いられた。そしてその戦場は──ここ、クロード高原は──文字通り死屍累々の地獄絵図と化したのだ。


「クソッ!!」


 彼──75319番目の『i』はこの現状に毒づいた。

 辺りを見渡しても、見れるのは『敵』と死んでいく仲間たちだけ。

 ──戦況は絶望的だった。

 否、因果関係が逆だ。彼ら(iたち)が投入された戦場が絶望的なのではない。()()()()()()()i()()()()()()()()()()()()

 それが量産型兵士こと、彼らの『使い方』であり、理論的かつ理想的な戦略だからだ。

司令官から『i』たちに伝えられたのは一つだけ。

──「死んでこい」

 それが彼らフィナリエント帝国軍のスタンスであり、絶対的な『命令』だった。


 血煙の向こうにいる『敵』から実を守るため、彼は足元に転がっていた仲間の屍を盾にする。

 盾にされた仲間も、そして彼自身も、そのことに眉をしかめたりはしないだろう。まともな情緒では、この戦場に見を置くことすらできはしない。


「クッッ!!」


 仲間の屍を貫いて巨大な『爪』が彼の体を掠る。が、逃げることも諦めることも降伏することも許されない。それが彼ら──iと呼ばれた兵士たちだ。


 血煙の向こうから突進し、『i』の一人の死体を貫いた『敵』がようやくその全身を見せる。


「きらびやかな装甲が返り血で台無しだな──機械獣(ビースト)


 機械獣(ビースト)。それは『i』たちを量産したフィナリエント帝国と千年もの間戦争を続ける国──サエリオン共和国連邦の殺戮兵器であり、フィナリエント帝国が『i』たちを、そして『能力』を開発したのに対する技術で生み出された存在──機械生命体の通称である。


「モデルは狼か?ったく…ギラギラと鬱陶しく目を輝かせやがって」


 機械獣(ビースト)はその用途に別れて様々なタイプが存在する。眼の前で大量の『i』を殺戮したこの機械獣(ビースト)はそのうちの一つ、狼のモデルだった。


「おうおう、馬鹿みたいに鋭い爪と牙だなワン公。スクラップにして粗大ごみにしてやろうかァ?」

「………」


 機械獣(ビースト)は言葉を発さない。そのように『設定』されているからだ。

 が、身振り手振りで挑発が伝わったようだ。その体勢を、獲物を狩るものへとシフトチェンジする。


 圧倒的な威圧感。

 絶対的な存在感。


 それらを肌で感じつつも、彼は戦いを放棄しない。否、()()()()。死ぬまで戦うことを命令された『i』はそれを前提に戦場に赴く。

 なぜなら彼らもまた機械獣(ビースト)と同じく、そう『設定』されているから。


「嫌になるお国柄だぜ全くよォ…」


 そう独りごつ。『自分』たちの屍に立ちながら。

粗野やなあ…この主人公…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 多く怪我を負い、死者も出るだろう戦争。そこに投下するのは人ではなく『生産』できるクローン、作り出せる命……もちろん軍は喜びますよね。捨てられる駒を手に入れたんですもの(இдஇ`。) くおぉ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ