第十六話 横道にそれているような気が・・・
一対一で負けない。
視野を広く。
アイデアは無限。
これがぼくのテーマだ。
トレーニングマッチはたまにあるし、試合にも出れているけれど、やっぱり”負けられない試合”をしていないためか、ここと言う時の緊張感、集中力が落ちてきているように思う。
トレーニングマッチは試す場だから、失敗よりもチャレンジを優先するけれど、公式戦は自分やチームの進退がかかっているために負けられないプレッシャーとの戦いになる。
ぼくは父さんの合気道道場で身体の使い方を学びながらもうひとつの父さんの専門分野であるメンタルトレーニングも取り組むようになった。
あ、父さんはエンジニアなんですがね・・・。
イメージとか、反復トレーニングとか、呼吸方法とかいろいろ。
スポーツ心理学の学位も持っているらしい。
我が父ながら、5歳のときから一人海外で仕事している父さんは何をしてきた人なのか良く知らないと今更ながらに実感した。
「ところで、父さんって昔はどんな人だったの?」
「優しい人よ♪」
聞き方間違えました・・・母さん。
「どんな勉強したの?」
「工学部で内燃機関の・・・」
「それ聞いてもわからないや・・・。なにかスポーツしていたの?」
「よく聞いてくれたわ♪ミズホ♪」
なんだかお花畑になってます・・・。
「ラグビーをしていたのよ。父さんは。大学ラグビーで日本一になったのよ~♪もうかっこよかったぁ~~~」
初耳です。
「言ってなかったかしら?」
「聞いてないです」
「工学部卒業後にスポーツ心理学の学位もとったのよ~。世界で負けない根性を持つ選手を育てるためだったかしら?」
いい加減な記憶のような気がします。
ちなみに心理学勉強したら根性つくならみんな取りますよ。
「その時にアメリカンフットボールの学生ナンバーワンチームの監督と出会ってからもっとかっこよくなったわ~~~」
え~整理してみましょう。
合気道を幼少時からやってきた理系頭の古風なサムライが、外国のスポーツに出会って日本一になるも、なんだか限界を感じて精神世界に飛び込んだ・・・ってことかな?
「心技体」
母さん。突然なんですか?
「ココロとワザとカラダのどれが欠けてもダメなんだって。スポーツも仕事も」
「大雑把な言い方だな~」
「でも、本当なのよ。アメリカンフットボールのメンタルコーチをした4年間は社会人にも負けなしで大学チームを日本チャンプにしたのよ」
・・・そんな事もしていたの!?
「えっと、それと、ぼくの育て方と何か関係あるのかな?」
「ないわね」
言い切られてしまいました!
「でもね、父さんは離れていてもミズホのことは良く知っているわよ。私が毎日メールしていたから♪」
どんな内容のメールかってところが問題のような気がします。
「『坊主が何時の日にか俺のところまで上がってきたときに教えてやる』っていつも言ってたものぉ~かっこいいわよね~」
もういいです。
でも、父さんも母さんもぼくのことを考えてくれていたのはわかりました。
そして父さんのすごさも・・・。
「あ、父さん、ラグビーは補欠でベンチにも入れなかったけどチームで一番のイケメンだったのよ♪」
日本一に関係ないじゃないか!?
父さんの指導方法は論理的だ。
でも、人に合わせた柔軟性もある。
これは、自分がトップチームでプレイできなかったからこそ、周りの選手を見て、色々観察して勉強した結果であることは間違いない。
トッププレイヤーになっていたのならば今の父さんはなかったのかもしれない。
苦労して学んだこと、身につけたことだからこそ教え方が上手いと感じるのだろうな・・・。
本当に最近試合をしていない・・・。




