第十四話 忍者じゃないし・・・
日本にいたときより試合が少ないよな・・・。
試合は練習の何倍も成長を促すと思うけれど、ドイツに来てから試合が減った。
気にしなければ気にならないのかもしれないけれど・・・やっぱり気になる。
そんななか、ぼくは父さんの合気道道場へ通いながらフッスバルの練習をしていた。
合間に学校って感じ。これでいいのかな・・・。
その合気道だけど、なかなか面白い。
新しい発見が沢山ある。
体重移動によるスムーズな動き。
そして、一番は相手の力をいなす。
面白いように転がる。
あれ?フッスバルで接触中に相手が転んだらファールとられるのではないか!?
結局は引っ掛けたり手を使ったりしない限りファールにはならないのだけど、審判頼みなところがあるな・・・。
「坊主。試合中に相手がコロコロ転がったら審判に眼を付けられると思っているだろう」
父さんご名答!
「けどな、そんなに簡単に倒せるようになるにはまだまだ修行が足りん」
修行って別に合気道の達人になる気はないけれど・・・。
「競り合いのときに役に立つのではなく、フェイントひとつとっても相手の重心を見極めたりできるぞ。
最終的には骨や筋肉の動きを感じて逆を取れるようになるのが目的だ」
父さん。わかるような、わからないような忠告をありがとう。
「スポーツ全般に言える。ひとつのスポーツを極めることでトップレベルに上がれるヤツはいる。
だけどな、努力だけでその境地まで到達できるヤツなんて一握りだ。
人の身体の仕組みを学べ。精神構造を学べ。観察眼を伸ばせ。そして頂点に!」
この人ぼくをどうしたいのだろう??
でも、練習時に相手の見方が変わった。
見るというより、観察するようになったというのが近いかな?
ほんの少しの動きで先を読む。
父さんは動きを見ていたら遅いと・・・。筋肉ひとつの動き、身体、考えからくるわずかなシグナルを感じ取れと。
なんだか、別の世界を目指しているような気がやはりするのはぼくだけだろうか・・・。
その成果が現れだしたのが2ヵ月経ったころだった。
競り合いであまり負けなくなってきた。
フェイントをかけるときに相手の裏を付くことで置いていく、上手いこといったら相手がそのフェイントで倒れるようになった。
普通はこんなに早くできるようにはならないらしいけれど、ぼくには合気道の素質があるらしい。
それは、空手で叩き込まれた自分の身体の動き、使い方から相手の状態を把握することが容易に出来たからみたい。
元々、ぼくはディフェンシブなポジションをしてきたけれど、これなら少しはトップ下とかオフェンシブなポジションでも出来るかな?
「ミズホ~おまえの動き気持ち悪い」
仲間によく言われるようになったこと。
気持ち悪いとか言われたくないけれど・・・。
「ディフェンスに入った時に膝が崩れるときがある」
「オフェンスのとき、思わぬタイミングでボールを奪われる」
「「「おまえなにやっているの?」」」
「忍者の修行」
「「「マジか!?」」」
「ウソ」
みんなにボコボコにされました。
「えっと、これから今日はミーティングルームで講義ね」
クラウスコーチが練習を早めに切り上げて言った。
「ミズホの秘密を少しみんなに教えようと思う。ミズホのプレイスタイル少し変わったのみんな気がついているよな」
「「お!聞きたい!!」」
そして、ミーティングルームに移動するとそこには・・・父さんがいた。
ゲッって感じ。
何でかって?だって父さん袴姿で仁王立ちだったのですもの・・・。
こんなキャラの人だったのですか!?
でも、チームメイトはもう「「忍者だ!」」「「サムライだ!!」」とか眼を輝かせているんですけれど・・・。
そして、Cユニオーレンの選手、コーチ以外にも上のカテゴリーのコーチ陣が多数いた。
ぼくたちはクラブの実験材料になるらしい。




