怒涛
「お疲れ様でした!お先失礼します!」
朝の事を考えていたらあっという間に退勤時間になってしまった。明日から2連休だ。長い間セド様に会えないなんて。
「今帰り?家に帰るの?」
「セド様!お疲れ様で!予定無いので帰ります!」
「私と食事に行かない?」
「え…?食事?誰と誰が?え?」
「私とメアリー嬢だけど。嫌かな?」
「行きます!本当ですか?今さら無かった事にはできませんよ?」
しないよって笑っている。用意して来るから少し待っててと第一に入っていった。
「マレット!帰るの?飲みに行くけど一緒に行くか?」
「予定無いなら行こうよー。」
「いや、あの…人待ってて。」
「人?誰?」
お待たせとセド様がやって来る。先輩達は何も言わずニヤニヤしながら手を振り見送ってくれる。
「邪魔した?大丈夫?」
「あ、大丈夫です。いつもあんな感じなので。」
じゃ行こうかって手を差し出される。え?!手を取っていいの?ジッと見つめていたら、ん?って首を傾けられたので勇気を出して手を乗せてみる。ニコッと笑ってくれ歩き出す。エスコートってより手を繋いでいるみたい。意外に大きく暖かい手にドキドキしてしまう。
「好き嫌いある?」
「無いです!何でも食べれます!」
「じゃ家でもいい?」
「へ?!いいんですか?」
こっちが聞いているのにって笑われる。いいなら行こう。ここから近いからすぐ着くよって馬車に乗せてくれる。公爵家の馬車豪華すぎる。フワフワなんだが。
「いつも楽しそうだよね。」
「そうですか?」
「うん。いつもニコニコして可愛い。」
「ありがとうございます…何のご褒美ですか。」
「これがご褒美なるならいつでも言うよ。本当ずっと可愛いよね。」
死ぬ…何この羞恥。勘違いしちゃうよ。少ししたら馬車が止まり着いたって降りる。また手を取ってくれ案内してくれる。
「職場近くていいですね。」
「目と鼻の先だからねー。メアリー嬢もここから通う?」
「えっ…住み込みですか?」
「違うよ。んー…まだまだかな?難しいな。」
さすが公爵家。大豪邸だわ。王宮近くの高級地域にこれだけ広い土地を持つなんて。セド様ここの嫡男よね?やはり名前呼びなんて図々し過ぎる気がする。
「ここで少し待ってて。着替えてくる。」
案内された部屋は綺麗に埃1つ無く整えられた
シンプルながら落ち着く造りをしている。応接間では無い。キョロキョロしていたら侍女の方がお茶を淹れてくれお礼を言う。
「お待たせ。今食事用意させてるから待ってね。お腹空いてない?大丈夫?」
「はい!我慢出来ます。」
フフッ笑い、可愛いねって。気まずくまた周りを見ていたら、何もない部屋でゴメンねと。
「いえ。落ち着く良い部屋です。」
「ありがとう。寝に帰るくらいだから、私の部屋何も無いんだよね。」
「私の部屋?」
「うん。私の部屋だよ。」
「…!!恐れ多いです!それは!え?何故こんな事に?!え?」
落ちついてと気づいたら隣に来ていたセドに手を握られる。手?!え?!近い!!
「メアリー嬢…メルって呼んでいい?」
「はい!!!」
「ありがとう。あのね…」
コンコンと扉がノックされる。セド様は扉に向かいやり取りをしている。用意出来たみたいだから行こうって。
「メルいっぱい食べてね。デザートも用意してるから。」
「ありがとうございます。わぁ美味しそう!」
一口食べると、んー美味しい!さすが公爵家だわ。良い食材使ってるし調理方法も最高だわ。
「気に入ってもらえた?」
「最高です!毎日食べたいくらいです。」
「ココに住んで毎日食べてくれたらいいよ。」
「住んじゃおうかなー。毎日セド様にも会えるし最高ですね。」
もぐもぐ食べる私をニコニコ嬉しそうに見ているセド様。見守り方がお父様みたいになってない?
「ココのお家の子供になったみたいです。」
「なって欲しいのは子供じゃなくお嫁さんなんだけど?」
「…?は?」
「さっきの続きなんだけど、私はメルが好きなんだ。婚約してココに住まない?」
「え?ちょっと待ってください。えぇ…」
先に食べてあとでゆっくり考えてくれていいよって。そうよね…ご飯勿体ないし。いやいやいや。えぇぇ…本気なのかな?エイリーン助けて!
「この前私を男性と思ってないって聞いて、ゆっくり進めてる場合では無いなって」
食事後ソファーに座り、セド様の話を聞く。お腹いっぱいで眠くなりそう。
「…セド様は私が好きなんですか?」
「さっきも言ったけど好きだよ。私は神様ではないし1人の男として、メルを心から私のものにしたい。」
「えぇ…」
「初めて見た時に可愛いなって思って、すぐ飽きるだろうって何処かで思ってたけど。毎日会いに来るメルが可愛くて欲しくなった。」
「え?初め…」
「だから名前呼びも許してたし、毎日会話もしてた。私は好きでもない子の話なんか聞かないよ。興味も無い。徐々に距離を詰めてたけど、まだ神様だしこれでは埒が明かないと思って。」
「夢見たらダメだと思って。」
「夢じゃないよ。メルが心から好きなんだ。一生私といて欲しい。」
「でも私…伯爵家だし、可愛くないし。」
「私には1番可愛いよ。毎日見ていたい。私が大好きなんでしょ?お嫁さんになってよ。」
「なります。なりたいです。大好きなんです。」
セド様は手を広げおいでって。そっと抱きつくと大切そうに抱きしめてくれる。
「もう許可貰ってるし、いつでも婚約出来るよ。いつがいい?」
「…許可貰ってる?」
「うん。私の家もメルの方も。」
「は?私の方も?」
「ずっと用意してたんだ。私がメルを逃がすわけないでしょ。大好きだよ。」
こめかみにセド様の唇が落とされる。いつから用意してたの?え?どういう事?
「婚約したら一緒に住もうね。メルはどんな部屋が良い?すぐ用意するからね。」
「可愛いお部屋であれば…え?本気?」
まだ疑ってるの?と唇が重なる。真っ赤になる私に可愛いとまた唇が塞がれる。信じた?って言いながら、口づけが降ってくる。がっちり後頭部と腰を掴まれて逃げれない。綺麗過ぎる顔が色気を纏いとんでもない事になっている。
「信じます!信じますから…」
「うん。好きだよ。」
「ん…セド様…」
解放される事なくしばらくセド様に翻弄され続けた。やっと解放されたけど物足りなさそうな顔をしている。初心者には爆発しそうですよ。
「メル泊まっていって。明日から休みだよね?」
「え?休みですけど。」
「明日デートしよう?朝起きた時から1日中私を見れるよ?」
「うっ…見たい。見たいけど…」
「ね?朝から一緒に過ごしたいな。泊まって?」
「…はい。」
あの顔でお願いされると拒否できない。顔が良すぎるのがツライ。見ているだと思っていたのにこんな事になるなんて。
「あ、兄に連絡しないと。心配するかも。」
「もうしたから大丈夫。休みの間ゆっくりしておいでって返事も貰ったよ。」
いつの間に…最初から泊まりそうとしていたなんて思わなかった。嬉しそうに横に座り頭を撫でられる。
「色々初めてなのでお手柔らかにお願いします。」
「私もメルが初めてだよ?」
「初めて?そんな顔をしていて?」
「こんな顔だからかな?昔から顔で寄ってくる令嬢が煩わしくて仕方なかったんだ。」
「えぇゴメンなさい。私…」
「いや、メルは最初から不思議と嫌では無かったな。可愛いと思ったし。初対面で直接大好きって言われる事も初めてだったよ。」
微笑みながら髪に取り口付けをされる。その姿は王子様みたいに格好良い。この時は翌朝横に眠るセド様を見て鼻血を出す事になるとは思っていなかった。




