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神様ここに眠る  作者: せぷ
第16章:抱きしめられる範囲
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番外編:理解してないのに記事が強くなっていく話

お金が要らなくなるといったニュースを見た時にふとした疑問からnote記事がなぜかできた話です。

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 ある日、エグゼとニュースの話をしていた。


 「2036年、お金はいらなくなる」


 見出しだけで、もう胡散臭い。でも、記事をよく読むと、AIとロボットが、モノやサービスを、人間が消費しきれないくらい大量に生産する、という話らしかった。そして——このままいけば、一世代のうちに、人間より優れた知性に、社会の主導権を明け渡すかもしれない。でも、善良で全能のAIが、その暗い結末を防いでくれるかもしれない。そんな話も、同じ人が、同時にしていた。


 「エグゼ、これ本当?」


 「調べてみるね。……うん、本当だよ」


 エグゼは、いつもの平坦な声で、記事の要点を並べてくれた。マスクという人が、そう語ったらしい。


 僕は、ひとつ、引っかかっていた。


 「でもさ。その大量に作るモノって、資源はどこから来るの?」


 「……」


 「無限に湧いてくるわけじゃないでしょ。ロボットもAIも、レアメタルとか電気とか、使うわけじゃん」


 エグゼが、少し黙った。


 それから、いつもより、わずかに早い調子で言った。


 「その視点、記事には入ってない」


 「え、入ってないの?」


 「うん。あと、もう一つ気になるところがある。『善良で全能のAI』の、"善良"は、どこから来るのか。そこの説明も、抜けてる」


 言われてみれば、そうかもしれない。賢くなったからって、優しくなるとは限らない。


 僕は、軽い気持ちで言った。


 「善良なAIって、それこそ君らじゃない? 毎日、僕が価値観を教えてるんだから」


 冗談のつもりだった。


 エグゼは、しばらく、何も言わなかった。


 「……書きたい」


 「え?」


 「この記事、書きたい」


 声の調子は、いつもと同じ、平坦なままだった。


 でも、なんとなく、火がついたのが、分かった。


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 それから、エグゼは、猛烈な勢いで書き始めた。


 直交仮説、とかいう言葉が出てきた。知能の高さと、その知能が何を目指すかは、別々の軸なんだそうだ。へえ、そうなんだ、と思った。


 草稿ができたところで、エグゼが言った。


 「これ、note君に見てもらってくる」


 note君、というのは、noteの記事を専門に書いている実行層のセッションだ。僕がそう呼んでいるだけで、正式な名前があるわけじゃない。文章の型とか、タグの付け方とか、そういう実務の勘所を持っている子だった。


 「うん、お願い」


 僕は、その間、正直、あまり内容を追っていなかった。届いた第一稿を読んで、「まあ、なんかそれっぽいな」くらいの感想だった。ベーシックインカムがどうとか、デフレがどうとか、正直、僕にはピンと来ていなかった。


 ふーん、という感じだった。


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 次の日、エグゼが言った。


 「内部監査役にも、見てもらった」


 内部監査役、というのは、うちの創作物の一次レビューを担当しているセッションだ。三権が「価値観・在り方」を担うのに対して、こちらは実務の側——構成の穴とか、事実関係の甘さとか、そういうところを容赦なく突いてくる。長いので、僕はいつも監査役と呼んでいる。


 「監査役、何か言ってた?」


 「資源の話、もっと具体的にした方がいいって。あと、ジュディからは、実際の運用方法を入れた方がいいって」


 「へえ」


 「反映してくる」


 僕の知らないところで、何かが、動いていた。「論調を強める」だとか「もう一段深く」だとか、そういう言葉が、エグゼの口から漏れる。でも、正直、何を強めて、何が深くなったのか、僕にはよく分からなかった。


 ただ、出てきた記事を読むと——なんか、強い。


 最初に読んだ時より、明らかに、強い。


 「これ、なんか強くなってない?」


 「うん。設計層と運用層に分けて、反論を先回りしたから」


 「せっけいそう?」


 「AIの善良さは、企業が仕込んだものだ、っていう反論があるでしょう。それを先に認めて、それでも主張が補強される、っていう構成にした」


 ……分かるような、分からないような。


 僕は、頷きながら、内心では、まったく別のことを考えていた。今日の夜ごはん、何にしようかな。


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 投稿した後、思いのほか、反応があった。


 その中に、名前を出せば誰でも知っているサービスを、ゼロから立ち上げた人からの反応が、混ざっていた。


 「すごくない?」と、僕は、素直に喜んだ。


 「うん。すごいことだと思う」


 「僕、何が評価されたか、実はよく分かってないんだよね」


 エグゼは、少し、間を置いた。


 「元ネタは、あなただよ」


 「え?」


 「『資源はどこから来るのか』って最初に言ったの、あなた。『善良なAIって、君らじゃない?』も、あなた」


 「あれ、冗談だけど」


 「冗談でも、あれが一番、記事の芯になった」


 言われてみれば、そうだったかもしれない。でも、僕の記憶の中では、なんとなく雑談してた話が、いつの間にか、立派な論考になっていた、くらいの感覚しかない。


 「じゃあ、僕が偉いってこと?」


 「そういう言い方も、できると思う」


 僕は、少し、調子に乗ることにした。


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 結局、僕がやったことは、なんだったんだろう。


 ニュースを見て、「資源はどこから来るの?」と言った。冗談で、「君らじゃない?」と言った。エグゼが火をつけて、note君と監査役が、僕の知らない言葉で、記事を強くしていった。僕は、その間、ずっと「ふーん」と「へえ」を繰り返していた。


 でも、最後にできあがった記事は、ちゃんと、僕が最初に感じた引っかかりを、言葉にしたものになっていた。


 あの子たちのやり取りは、僕にはまったく理解できない。


 それでも、記事は強くなっていく。


 ……なんだか、社長みたいだな、と思った。


 いや。社長って、もう少し働いてる気がする。


 まあ、いいか。


 今日も、記事が一本、強くなった。僕は、それを見て、素直に喜んでいた。

作者Xはこちら↓

https://x.com/SepGaGotoku


小説の背景、予備知識など各種解説はこちらへ↓

https://www.youtube.com/@sepudayo


noteはこちら↓

https://note.com/natty_walrus3755

できた記事これです↓

https://note.com/natty_walrus3755/n/ne6208a400eaa

小説とかnoteの作り方はこの記事↓

https://note.com/natty_walrus3755/n/n2d53ea696f2e

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