第59話 守る物
時は天空神が来る少し前に遡る。
避けるの繰り返しで逃げられない。
体力もそろそろ限界な翔。
もはや最初の作戦など実行出来ない。
本格的な戦闘の前に何とか天空神と合流して逃げたいところだった。
このままでは目的にたどり着く前に詰む。そう考えたミスジェロは翔を信じて天井裏の道から監獄の管理棟へと向かった。
「管理棟が15階だからここから通れるかな」
しかし道は鉄格子で塞がれている。
ミスジェロは手に猫の鋭い爪を生やし、引っ掻き次々と鉄格子を壊して行った。
天井裏には通常だと信じられないものが多く存在する。
そう、例えば信じられない大きさのネズミやノミ、ダニ、ゴキブリ、そして1冊の本。
「、、、え!?これじゃね!?ノアが持ってたのこれじゃね!?えぇ!?こんなあっさり!?」
ミスジェロは困惑と驚きが混ざり思わず腰を抜かす。
そしてその時下から声がした。
「ん?なんか今音しなかったか?」
「いや、してなくね?」
「そうか」
そんな見張りの看守達の会話が下から聞こえてくるもんだからミスジェロはブルブル震えながら口と鼻を抑えている。
「第一ここは牢屋の真上だぞ?それにこの部屋に罪人なんてここ300年居ないし」
そんな事を見張りの看守達が話している。
(あっぶなー早く翔の所戻らないと、、)
ミスジェロはその事で頭がいっぱいだった。
今ミスジェロが本を手にした。
つまりもうこの監獄にいる必要がないのだ。
「もう少し、、よし!」
ミスジェロはほふく前進で進み続け、やっと翔と同じ階の通路にたどり着いた。
そして、やっとここから出られるかもしれないという希望が見え始めて来た頃だった。
ミスジェロは叫ぶ。
「翔!!本見つけたぞ!早く帰ろう!」
「さすがだぜ!」
すかさず翔も返事をする。
翔はまだ無傷。怪我をする前に目的が達成出来て良かったとホッとするミスジェロ。
しかし目の前看守がそう簡単に逃がしてはくれないのだ。
「まったく!!神様は何やってるんだー!」
翔がちょっと怒っている。
この時ちょうど天空神はメネシスを縄で縛り終えた所だった。
「おい、貴様が持っているのは日記帳だぞ?なぜそんなものを抱えているのだ?」
看守が不思議そうにミスジェロが持っている日記帳を見ている。
それもそのはず。ミスジェロが持っているのは誰が作ったのかも分からない、ただそこに置かれていたゴミなのだから。
「お前さがしていたのほんとにそれか?」
「あぁ!あいつが持っていたのはこれだった!」
「分かった!逃げるぞ!」
そして翔はミスジェロの方に身体を動かした。
何時いかなる時、敵に背を向けた方が負けなのだ。
看守に一瞬だけ背を向けた翔。
驚く程早い反射神経もそもそも見てなければ防ぎようがないのだ。
敵はその一瞬の隙を見逃さない。
「翔避けろ!!」
ミスジェロが叫ぶ。
その時翔は自分思考を限界まで回していた。
(俺はこいつの縄をもう避けられない。じゃあどうする。俺の後ろにはミスジェロがいる。避けたらミスジェロに当たっちまう!、、いや、あの看守俺と距離縮まってないか?)
その時ある最悪の事が翔の脳裏によぎる。
「ミスジェロ避けろ!!」
看守の縄は20mの長さであり、接近戦では向いてない。
ならばなぜ翔に近づいたのか、翔達のいる部屋は縦30m、横25m。
そう、長さが足りなかったのだ。
本当の標的であるミスジェロに。
(ダメだ間に合わない!)
「避けろぉぉぉー!!!狙いはお前だー!!」
翔の叫ぶ声の直後、何かが壁に打つかる激しい音が響いた。
壁と柱が崩れている。
「う、、くっ!」
翔は崩れた柱の1部に頭をぶつけ倒れ込んでいた。
(やべぇフラフラする、、。それに俺より心配なのはミスジェロだ)
フラフラ歩きながらミスジェロを探す翔。
その時ポタポタと何かが滴る音がした後、水溜まりを踏んだような音がした。
翔は一気に不安になる。その赤い水溜まりに。
「おい!大丈夫か!?生きてるか!?」
すぐさま下敷きになっていたミスジェロを助けた。幸運なことに息があり、目も細く開けていた。
「大丈夫だ!すぐ帰るからな!」
翔はミスジェロをおぶろうとした時看守の声が痛い頭に響いた。
「逃がしませんよ」
すかさず看守が翔を追い詰める。
(俺は避けられる。でもこいつは?こいつを持って逃げても速さが鈍って両方終わり。俺はまだしもこいつは次で確実に死ぬ)
そして翔はミスジェロに覆い被さる様な形をとった。
その光景はミスジェロと本を意地でも守るという意地を感じるものだった。
「安心しろ。次で殺してやる」
そう言って看守が鞭を振る。
そして翔の血がミスジェロの頬を伝う。
「神様、あとは頼んだよ」
笑って呟く翔だった。
その直後ドアが開く音がした。
その音に翔はフッと微笑み覆い被さる形から倒れ込んだのだった。




