表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/52

第47話 日焼け

夏の太陽が容赦なく照りつける無人島の浜辺は、もはや「暑い」という言葉では生ぬるいほどの灼熱に包まれていた。


空気は揺らぎ、地面から立ち上る熱気が視界を歪ませる。じっとしているだけでも体力が削られていくこの環境の中で、ようやく


――本当にようやく、船の修復に必要な木材が一箇所に積み上げられていた。


汗で前髪を額に貼り付かせながら、天空神は満足げに腰に手を当てる。白い肌はほんのりと赤みを帯び、呼吸は少し荒いが、その表情には達成感が浮かんでいた。


「よし!組み立てするか!」


その一言は、この地獄のような作業の“次の地獄”の始まりを告げる合図でもあった。


その直後、天空神はふと何かに気づいたように目を細める。そして、プルプルと肩と唇を震わせながら、必死に笑いをこらえるような表情で翔の方を見た。


頬が引きつり、口元が歪み、今にも吹き出しそうになっている。


「翔……なんか焼けた?」


声が震えている。完全に笑いを堪えている声だった。


「?そうか?」


翔は首を傾げる。だがその姿は――どう見ても“普通ではなかった”。


前から見ると、いつもの翔だ。少し日焼けした程度で、健康的な青年に見える。


だが、後ろから見ると


――まるで別人だった。背中から脚にかけて、くっきりとした焼け跡が広がっており、見事なまでに“前半分と後ろ半分で別人”という状態になっている。


いわゆる、完全な“焼きムラ”。しかも芸術点高め。


そのギャップはもはやコントである。


「あはぁはぁはははははは!!」


ついに我慢の限界を迎えた天空神が爆発した。

腹を抱え、膝を曲げ、涙まで浮かべながら大笑いするその姿は、もはや神の威厳など微塵もない。


むしろ海賊か何かの宴会に紛れ込んだ酔っ払いのような笑い方である。


(海賊みたいだな、、笑い方こっっっわ……)


翔は一瞬そう思い、喉元まで出かかった言葉をぐっと飲み込んだ。ここでそれを言えば、間違いなく命の保証はない。理性が全力でブレーキをかけた。


咳払いをひとつして、無理やり話題を変える。


「ところで……この木、組み立てる器具は?」


「器具?」


天空神はきょとんとした顔をした。大きな瞳がぱちぱちと瞬き、まるで「なんでそんなものが必要なの?」と言わんばかりの純粋な疑問がそのまま表情に出ている。


だが翔からすれば、器具なしで船を修復するなど正気の沙汰ではない。釘もハンマーもなしにどうやって組み立てろというのか。


文明の利器という概念がこの神には根本的に欠けている。


その時だった。


「それならいいの持ってるぜ」


背後から、どこか軽い調子の声が降ってくる。


振り返ると、ミスジェロがなぜか誇らしげな顔で“何か”を担いで立っていた。炎天下の中でも涼しい顔をしており、その余裕が逆に不気味である。


そして――彼女が持っていた“それ”を見て、二人は同時に固まった。


「……なにこれ」


思わず声が重なる。


それは、もはや“道具”という次元を超えていた。横幅だけでも数メートルはありそうな、巨大な曲線を描く物体。表面は硬質で、光を鈍く反射し、ところどころに傷のような跡が残っている。


どう見ても――“生物の一部”だった。


「あぁこれ?ツノだよ」


ミスジェロは軽い口調で言った。


軽すぎる。


軽く言っていいサイズじゃない。


(ツノ……?ツノ!?え、ツノってこんなデカいの!?)


翔の脳内でツノの概念が崩壊する。


「ちなみに……なんの角です?」


恐る恐る問いかける。声がわずかに引きつっていた。この質問は重要だ。このサイズのツノを持つ生物が“近くにいるのかどうか”で、今後の生存率が大きく変わる。


ミスジェロは少しだけ首を傾げ、軽く考えるような仕草を見せたあと、あっけらかんと答えた。


「忘れちゃったけど割と最近だよ?このツノをトンカチ代わりに使えば?」


――終わった。


空気が一瞬で凍りつく。


「神様……俺たち死ぬ?」


翔の顔色は一気に青ざめていた。額から流れる汗は、もはや暑さだけのものではない。


「大丈夫よ、化け物なんているわけないでしょ」


天空神はどこまでも楽観的だった。だがその言葉に根拠は一切ない。むしろこの状況でその発言が出ること自体が恐ろしい。


「いやまじでヤバそうだから早く組み立てちゃおうぜ……」


翔は小声で必死に訴える。二人は顔を寄せ、こそこそと相談を始めた。視線は常に森の奥へと向いている。あんなツノの持ち主が近くにいたら、冗談抜きで命がいくつあっても足りない。


「神様!崩れてるところの大きさは?」


「ちょっと待って……」


天空神の瞳が鋭く光る。次の瞬間、その視力が一気に強化された。神としての力の一端――視覚の拡張である。通常では捉えきれない距離や細部まで、鮮明に視認できる。


「横幅……ひゃ、100m……縦幅60m……」


言いながら、さすがの天空神も若干引いていた。


「……は?」


翔の意識が遠のきかける。


(100m?それもう船っていうか建築物では?)


スケールがおかしい。


「神様、これ俺たち完成するのか?」


「分からない……ねぇ、私また他の神様に相談してこよっか?」


珍しく弱気な声だった。だがその提案に、翔はゆっくりと首を振る。


「いや、いいよ神様。素材集めてくれただけ十分だよ」


その顔は、驚くほど穏やかだった。汗でぐしゃぐしゃになりながらも、どこか吹っ切れたような、清々しい笑顔。


これ以上頼るのは違う――そんな意地と覚悟がそこにあった。


「よっしゃぁ!頑張って終わらすぞぉ!」


自分を鼓舞するように声を上げ、翔は巨大なツノを手に取る。ずしりとした重みが腕に伝わる。これが“トンカチ”代わりらしい。


いや、どう考えても規格外だが、もうツッコむ気力もない。


こうして――


“何かのツノ”という正体不明すぎる道具を使い、二人はひたすら木を打ち付け、繋ぎ、削り、組み上げていった。


灼熱の太陽の下、汗と疲労と不安にまみれながら、それでも手を止めることはなかった。


そして――


このバカデカい穴を塞ぐための板を完成させるのに、実に七日間を要したのである。

ちなみに作ってる間の7日間板を組み立てていたのは、ほぼ翔くんです。天空神1割、ミスジェロ4割、翔5割という仕事具合でした。ミスジェロが寝てる間も翔は仕事をしてたので一番多い割合です。かと言ってもミスジェロも寝てる時以外は仕事してるので天空神はサボってました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ