88.職業体験です
今日は課外授業の職業体験でミリーのパン屋さんにみんなでお邪魔している。
メイは揺りかごの中でおとなしくしているが、ヒーローは沢山のお客さんに大喜びだ。
ジナさんが監修してくれるので、ウィル先生が変わりに子守をしている。
チーム1.リッキー、エイデン、マイルズ、キャシー
チーム2.アレックス、ピート、ベス、ルーシー
チーム3.エイミー、アイザイヤ、ヴァレリー
チーム4.ヴィンス、ミリー、グレイス、私
4班に分かれて、それぞれの班でパンを作っていく。
みんなジナさんの言う事を聞いて、上手に作業をしている。
チーム1の年長組はテキパキと動いている。
チーム2はピートが誰よりも張り切っているので、ベスとルーシーが笑っている。
チーム3の肉屋の兄弟はさすが、ナイスチームワークだ。
「グレイス、ちゃんと計らなきゃダメだよ。あ、こぼしてる!」
「こんなの私のやる事じゃないわ。料理人にやらせてよ。」
しかしながら、我が班は少し上手くいっていない。
「これは授業なんだよ。みんなでやるんだ」
「やってみると楽しいよ」
「やりかたなんて、知らないわ!」
仕事なんかしたくないと、真面目に作業をしようとしないグレイスに向かってジナさんが話しかける。
「あんたは、誰かが何かやってくれないと自分で何もできない赤ん坊なのかい?うちのヒーローだってまだ上手にできるよ。なんのやり方だって習っていないのに日々自分で学習しているのさ。」
「私はそんな目下の仕事なんてしたくないの」
グレイスはジナさんに呆れた顔を向けられ、悔しさから赤面する。
「目下の仕事ってどういう仕事なんだい?あんたが食べているもの、来ている服、履いている靴、全て誰かの仕事によるものなんだよ。あんたはいったい何の役にたっているんだい?嫌なことばかり言って人を不幸せな気持ちにさせるあんたより、愛想を振りまいて幸せな気持ちにしてくれる赤ん坊の方がまだ役に立つってもんさ。」
「ジナさん、少し言い過ぎですよ」
ウィル先生が慌てて間に入るが、グレイスはウィル先生が見えないかのように、ジナさんを睨みつける。
「…私は赤ん坊より役に立つわ」
「そうさ!あんたは立派なお姉さんだ!さぁ、このチームはパン作りのベテランが二人もいるんだ!しっかり聞いてやってごらん」
ジナさんに叱られたグレイスは、プンプンしながら作業を始める。
前から思っていたけど、強い子だよねぇ。
「あ、違う違う。それじゃ入れすぎだ!」
「ちゃんと計ってやってるわ!」
「少しづつ混ぜるといいよ」
「あ、うまいうまい」
出来上がった生地を捏ねたり叩きつけるのを最初は野蛮だといっていたグレイスも、やっているうちにストレスが解消されたのか、何も言わなくなった。
生地が発酵している様子を何度も見に行っていた。
形成が終わり、二次発酵した生地に向かって「かわいいわ」と呟いたりもしている。
お兄ちゃんのピートは無心で生地を叩きつけていて、アレックスが「ストレス溜まってるのかな…」と呟いていた。
出来上がった焼きたてのパンを、ジナさんが作ってくれたシチューと一緒に食べる。
あつあつのシチューと焼きたてのパンなんて、それだけで大ご馳走だ。
「僕、これ持って帰っていいかな?母さんと父さんにあげたいんだ」
「じゃあ、私のをひとつピートにあげるわ」
キャシーが自分のパンをピートにあげている。
「家でも作ってあげると喜ぶんじゃないかな?ストレス解消になるかもよ」
と言いながらアレックスもひとつピートにパンを渡していた。
慰労パン。
グレイスは自分の作ったパンをじっと見つめると、一つ大事そうにハンカチに包んでしまっていた。




