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87.暴力はいけません

この間の授業で行った小テストが100点だったお祝いにと、祖父がローラさんに普段着用の新しい服を注文してくれた。


胸元をモスグリーンの格子縞の生地とベージュの生地、2種類使用した洒落たワンピースは普段着なのに、ローラさんのセンスが冴え渡っていてとても可愛らしい。


今日はこれを着て学校に行くんだ。

新しい服にウキウキしながら教室に入る


「週末に見たわよ。ノラ。あなた先生と一緒にいたわね。」

席に着くとグレイスが声をかけてきた。


「おはよう。うん。いたけど」

「先生に媚び売って贔屓でもされたいのかしら?」

「え?何言ってるの?」

急に怖いんだけど…

贔屓って何?ウィル先生に贔屓されると何か得があるの?

ウィル先生は誰とでも遊んでるけど、誤解があるんじゃないかな。


「どうしたのグレイス?なんだかいつもと違うね」

いつも、ここまで突っかかって来ることないのになぁ。


「それと!その服、私の服のデザインそっくりじゃない。ここの田舎の服屋で真似をして作ってもらったのかしら?」

あ、確かにグレイスも、胸元の生地を左右で変えているワンピースを着ている。


「へー流行ってるのかな?」

「この服はドーリングで一番大きな洋服店の有名なデザイナーがデザインした服なのよ。真似したに違いないわ!私だって昨日買ってもらったばかりなのに!」


「ローラさんも有名なデザイナーだって聞いたけどね」


「そんなわけないじゃない。同じローラでもローラ・スペンサーとは大違いよ。知ってる?顔は知られてないけど、それこそ有名な若手デザイナーよ。父親は他国の王様に靴を進呈して他国民なのに巨匠の称号をもらったエルドレッド・スペンサー。」

「ごめん、わからない…。グレイスのお洋服も私の服もすっごくかわいいからそれでいじゃない。」

マスターがエルドレッドって名前だったら、なんだか似合わないね。


「ドーリングのあの洋服店のデザイナーはローラさんの弟子だって聞いたわよ。私たちもたまに買いに行くわ」

「それと、ローラさん達の苗字はスペンサーだ。」

ヴァレリーとアイザイヤがいつの間にか近くにいた。


「贔屓とか、媚びてるって言う奴こそ、自分が贔屓してもらおうって思ってるんじゃないの?」

アイザイヤの言葉にグレイスは怒りで顔を真っ赤にする。


「…もういいわ」

まだセリフを続けようとしていたが、飲み込んでそっぽを向いてしまった。


「肉屋のくせにって言わないんだな!今日は!」

更に言い募るグレイスにアイザイヤが追い討ちをかけると、グレイスが振り向く。


「私が言わなくても解っているじゃない。口も聞きたくないのよ。近くに来ないで。匂いが移るわ」


バシン!!!

ヴァレリーがグレイスの頬を思い切り叩いた。

飛びかかろうとしていたアイザイヤのも、突然の出来事に動きが止まる。

見る間にグレイスの頬が赤くなる。


グレイスの顔は白く青ざめてきたので、ほっぺたの紅葉が余計に目立つ。


「おい!グレイスが悪いけど殴るのはやり過ぎだ!」

ピートが間に入って喧嘩を止めに入ったところで、ウィル先生が教室に入って来た。


「どうしたんだ?」

グレイスのほっぺたと、ヴァレリーの興奮した様子を見るとピートに問いかける。

ピートが答えようとしたが、グレイスが「なんでもありません。早く授業をしてください」と言うので、先生は聞くのをためらった。


泣かないで気丈な子だなぁ。


「放課後残るように」

と先生が言い、何事もなかったかのように授業をしたが、私たちはちょっとそわそわしている。


お昼にミリーが、グレイスを心配して冷やしたハンカチを渡していたが、ミリーのグレイスをたしなめる言葉に機嫌をそこねてしまい、ミリーとも口をきかない。


放課後になるとグレイスがすぐに家に帰ってしまいそれを追いかけるようにピートもいなくなってしまった。

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