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81.りんごは投げてはいけません

ピートは相変わらずみんなと関わろうとせず、距離を置いているが、グレイスはゴードン家とカオハガン家の豪華な家を見て感心したようで、両家の子供とは比較的会話を交わしている。


ミリーは最近グレイスにベッタリだ。

自分の知らない都会の話に憧れを抱いているようだ。

特に学校にシェフがいて、昼ごはんを給仕してくれると言う話を特に興味深く聞いていた。

それは私も羨ましい!


お天気に恵まれたので、校庭のベンチに座り昼食をとる。

「私たちの学校は特別だったのよ。他の学校の子のお昼ご飯は酷い物だと聞いたわ」

グレイスが具のたっぷり入ったサンドウィッチを小さく齧りながら言う。


「本当はこんな手で食べるようなガサツな料理は食べたくないのよ。…あら?でもこのサンドイッチはおいしいわね。」

「パンはうちんちのだよ。野菜は誰かのお家のか、ソニアさんのトコのかな?肉はブッチャーさんの所だね。」

「美味しいよね!わかる!どこで食べる物も美味しいんだけどうちの村のは格別美味しい気がする!」

新鮮だからかな?本当に美味しいんだ。


「ブッチャー…あの子達ね。私肉屋の子と一緒の空間にいたくないわ」

「グレイス?何言っているの?」

窘めようとした時、後ろから大声が投げかけられた。


「うちの家業をバカにしてんのか!!」

グレイスの声が聞こえてしまったアイザイヤが声を荒げ、ヴァレリーも激昂して立ち上がり、グレイスに詰め寄ろうとするのをリッキーとエイミーが取り押さえる。


「言わせておけばいいんだよ。」

「そうよ、グレイス?私たちの家は何かバカにされるような事をしているのかしら?」

エイミーがグレイスを見つめ、穏やかに問いかける。


「バカになんてしてないわ。ただ、臭いが移ったりしたらたまらないなと思っただけ」

「臭いなんてしない!」

アイザイヤが持っていたリンゴを投げつける。

額でリンゴを受けたグレイスの目がつり上がる。


「野蛮人!!だから肉屋なんていやなのよ!!いきましょうミリー!!」

と言うと、みんなに背を向けて教室に入って行った。


ミリーは少しオロオロすると、グレイスを追いかけて教室に入っていく。

アイザイヤもヴァレリーも泣きだしてしまった。


「泣くな!俺たちの父ちゃんの仕事は何も恥ずかしくない」

「そうよ、父さんのお肉が世界で一番美味しいのよ」


ハンカチで、ヴァレリーの目を拭いてあげる。

アイザイヤは袖で拭って涙が止まったようだ。

「ブッチャーさんのお肉は最高だよ!また狩りに連れて行ってね」


私たちは、まだ働いてもいない。

誰かの仕事で成り立っている世の中の一部にもなっていないんだ。


その日の放課後、肉屋の兄妹とコロッケを頬張りながら雑談をして、そろそろ帰ろうとしている時にピートとグレイスの母親のウィリアムズ夫人が一人で肉屋にやってきた。


「りんごを投げた事を怒りに来たのかな」

アイザイヤが心配そうに、しかし怒ったような顔で言う。


ウィリアムズ夫人はブッチャーさんと少し話した後、私たちの方へ向かってきた。



「グレイスが大変失礼な事を言って、ごめんなさいね。前の学校で良くないお友達に感化されてしまったみたいで、このままじゃダメだと思って無理やり転入させたんだけど、まさかそんな事を言うなんて。」

怒りの為か、夫人の手は震えている。


「もともとはあんな子じゃなかったんです。どうか、許してあげてください」

「夫人が謝る必要はありませんよ。」

リッキーが言うと、アイザイヤも続く。

「僕は今は許せない。許せるときがきたら許します」

エイミーとヴァレリーも頷く。


「俺はハントもできるカッコイイ肉屋だってブイブイ言わせてたんだからな!そこんとことよろしくな!」

ドアから顔を出したブッチャーさんが言うと、少しみんなに笑顔が戻る。


「どうもありがとう、これからお母さんにもお会いしてくるわね」

「私たちも、もう家に帰るので案内します」

「ノラ、またね!」

私もバイバイと手を振り、家に帰る。


夕食時、いつものようにその日あった出来事を祖父に話す。

祖父か悲しそうに話を聞いている。


「悲しい事に様々な事に偏見を持った人も世の中には沢山いるからね。グレイスがこの村の人と、村を好きになってくれる事を願うばかりだね。」

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