79.ゴードン家のお客様
ゴードン家にお客様が滞在しているらしい。
マイルズとキャシーがなんだか疲れた顔で、リッキーとエイデンに話しているのが聞こえた。
どんなお客様がきてるんだろう。今度遊びにいってみようかな。
と考えていた矢先、我が家に突然のお客様が訪れた。
ノックの音でドアを開けると、綺麗な服を着た高齢の女性と、ピシッときめた従者らしき男性が立っていた。
男性の目は鋭く、扉の外から中を伺っているようだ。
「なんてみすぼらしい家なのかしら!」
「え?」
「ジョンさんともあろう人が、ありえませんわね。あなたコールの娘?なんて貧乏くさい服を着てるのかしら。コールに似てないわね。ガサツそうな子」
「び」
突然の事で口を挟めないでいる。
男性も女性の発言に従者の男性もアタフタし始めた。
騒いでいる声が聞こえたのか、仕事場から慌てて祖父が出てきた。
「ジョセフィン!」
「ジョン!」
祖父の顔をみると女性の顔が輝き始めた。
「どうしたんだい?何を騒いでいるんだ。いや、それよりもどうしてここへ?」
「たまたまドーリングに来る用事があったので、ゴードン家に滞在しているんです」
「たまたまの用事なんて、あなたにないだろう。何が目的なんだい?」
「まぁ!人の言う事を疑うなんて!ねぇ、いつまでも玄関に立たせておくなんて紳士として礼にかけるんじゃないかしら?」
「申し訳ないけど、あなたのような淑女をお招きできる家ではないのでね。そもそも連絡もなく訪問する人の方が礼にかけるんじゃないか?」
高齢の女性に対して厳しい言葉をかけるなんて、いつも温厚な祖父にしては珍しい。
「なんですって」
輝いていた女性の顔がキッと釣り上がる。
「みすぼらしくて貧乏な家にあがる必要なんてないだろう。どうぞ、お引取りを」
「この村に移り住んでから随分変わってしまったようですね!失礼するわ!」
女性が踵を返すと、連れの男性が申し訳なさそうに丁寧にお辞儀をしてくれた。
「すまないね。ノラ、驚いただろう。あの人はゴームズさんの親戚なんだけど、私の家とも付き合いがあってね、コール…ノラのお父さんの事もすごく可愛がってくれていたんだよ。」
「お父さんを…長いおつきあいなんだね」
そういえば父親の事、全然思い出しもしなかったな。
「私にとっては年の離れた姉のような感じなんだけどね、昔からはっきり物を言う女性だったけど、年をとって偏屈さが増したようだね」
「追い返しちゃって良かったの?」
「ノラにあんなことを言うから、カッとなってしまったね。今度謝りに行くよ」
強烈な人ではあったよね。別に気にしてないけどね。
あくる日の放課後、キャシーが申し訳なさそうな顔で声をかけてきた。
「ノラ、ほんとうに悪いんだけど、今日もし用事がなければ家に来てくれないかしら?」
「え?特に用事はないからいいよ」
「あぁ、助かるわ。ジョセフィンおば様がノラと話したいらしいのよ」
「あぁ、わかった。」
昨日の様子から考えると、あんまり楽しそうな話じゃないね。
キャシーと共に、ゴードン家に向かう。
因みにマイルズはリッキーと一緒に遊びに行きました。
到着すると、ゴードンさんの家のメイドさんではなく、昨日の男性がやってきた。
「ノラさん、昨日は突然しつれいしました。こちらへどうぞ」
心配そうなキャシーと別れ、男性の案内に従いジョセフィンさんのお部屋に通される。
「お掛けなさい」
「はい」
「あなた、よくみればコールに似てるわね」
「そうですか」
「…何か不便な事はないの?こんな何もない所じゃなくて都会に住みたいと思わない?」
「不便な事はないですよ。人が多いとその分嫌な思いをする事もあるでしょう。この村にいればそんな思いする事がないんです。」
「不思議な考え方をするのね」
インドア派の私としては、お外は怖いからね!
「昨日も怖かったですし。知らない人に突然の暴言を吐かれました」
ドアの前に控えていた男性が少しむせる。
「…ジョンがいなくなってから、私の物言いを注意する人がいなくなって、最近少し言いすぎてしまっているようね。マイルズやキャシーも寄り付きやしない」
ジョセフィンさんは少し寂しそうにする。
「悪かったわね。悪気はなかったのよ」
目を伏せて謝罪するジョセフィンさんを見て気の毒なってしまった。
年配の女性を虐めてしまった気分だ。
「いいですよ。いまは怖くないですから。はい仲直り」
右手を差し出して仲直りの握手をする。
ジョセフィンさんは手を握られて少し驚いたようだが、少しだけ微笑んだ。
「やっぱりコールには似てないかもしれないわね。ジョンに似ているわ。ねぇ、父親や母親に会いたいとは思わないの?」
「いる場所を知っているんですか?」
思わず食い気味で聞いてしまう。
「いいえ、今は知りませんよ。」
「お母さんには会いたいです。」
「母親だけなのね。もしも見つけたら必ず知らせるようにしましょう。」
ここでジョセフィンさんは話を打ち切り、お茶を飲みなさいと勧めてきた。
祖父の若い時の話や、父親の子供の時の話を穏やかにしてくれる。
昨日とは全然別の人のようだ。
しばらくすると、疲れてしまったので休むと言われ、ジョセフィンさんの部屋から出る。
「昨日は、ジョンさんとお孫さんのノラさんに会える嬉しさで少し興奮してしまったんです。帰宅してからは、ジョンさんに嫌われた。と、かなり落ち込んでいましたよ。」
従者の男性が言う。
「祖父はジョセフィンさんは昔からはっきり物を言うと言っていました。祖父も言いすぎてしまって悪かったと思っているようでしたよ。」
「ありがとうございます。ジョセフィンさんを悪く思わないでくださいね」
「思ってないですよ」
また男性に案内され、キャシーの所へ行く。
「大丈夫だった?何かあったの?」
「大丈夫だよ。家族の話をしただけだから心配ないよ」
「あぁ、そうなの。良かったわ。ねぇ、果物を切ってもらったから食べて帰ってね!」
そして、今度はキャシーからのおもてなしを受けて、美味しい果物を食べ過ぎてしまった。
突っ張ってしまったお腹を抱えながらお家に帰る。
祖父は、今日の話を聞くとすぐにジョセフィンさんの所へと向かい、仲直りをしたそうです。
良かったね。




