76.マスターとコインケースを作ります
最近私たちの村に移住したいという人が増えているみたいで、大人たちは木を伐採したり、囲いを広げたりで大忙しだ。
現在のこの村の人は祖父を中心に同じ街から移住したので、全員が知り合いのような物なんだけど、全く知らない人が増えていく。
こうして新しい風が吹いていくのかな。
村じゃなくて、そのうち町になっちゃうかもね。
いや、そこまではないか。
特にレビさんとアーネストさんは忙しいようで、レビさんの家に遊びに行っても家にいないことが多い。
今日もレビさんの家の扉を叩いたが、レビさんは不在でヴィンスが出てきた。
「ノラ、どうしたの?父さんに用事?」
「突然ごめんね。庭でなったフトモモをおすそ分けに来ただけなんだ」
「わぁ!ありがとう。渡しておくね」
「うん、よろしく伝えといて」
ヴィンスと別れて商店のある通りを歩いていると、背中をまるめてトボトボ歩いているマスターを見つけた。
「マスター、なんで老人のように歩いているんですか?」
「ノラか…俺はもう老人なんだよ。」
放っておいてくれとでも言うように手を振りながら歩き去ろうとするので、去り際のエプロンを握りしめてマスターを捕まえる。
「な、なんだ」
「マスターが元気ないのは心配です。どうしたんですか?」
「はぁ…まぁ中に入れ」
マスターに促され、雑貨屋に入る。
ローラさんはいないみたいだ。
マスターがカップにお茶を注いで渡してくれる。
「最近ローラのやつが、浮かれポンチでな…。仕事はちゃんとするんだが、なんかコソコソしていて殆ど家にいやしないんだ」
レビの所にでも行ってるんだろうな…とマスターがぼやく。
うーん、そんなにレビさんの家に行っているって事はないと思うな。
レビさん忙しいみたいだし。
「レビさんは最近仕事で遅くまで家にいないってヴィンスが言ってましたよ」
「じゃあ、どこに行っているんだかな。もうあいつも良い大人だし、俺がうるさく言うのもおかしいんだけどな」
うーん、マスター、寂しいんだね。
「娘ってもんは、いずれ嫁に行くもんだもんな。」
またショボンとしてしまった。
なんて言っていいかわからない!
「ローラさんは、マスターに心配されて嬉しいとおもいますよ。愛されているのが伝わりますもん」
「愛って…まぁ、そうだな。大切な娘だからな」
「マスターが元気ないと心配されますよ。落ち込んでないで、何か楽しい事でもしましょう」
「楽しい事なぁ。ノラがやりたいだけじゃないのか?」
と言いながら、少し背筋が伸びたマスターは、小物でもつくるかと言いながら、柔らかい皮の端切を出してくれたので、一緒にカッコいいコインケースを作る。
デザインを考えたり、指導してもらったりして、帰るときにはいつものマスターだった。
また、しばらくして商店のある通りを歩いていると、素敵な杖と小洒落た帽子を被ったマスターがいた。
「おう!ノラ。元気か?」
「マスターも元気そうで。素敵な帽子ですね。杖もピカピカで綺麗」
「ははは、ローラが作ってくれたんだ。あいつコソコソしてると思ったらこんなもの準備していたんだな。」
にこにこ言った後に「杖はレビに注文していたらしい」と少し苦々しげに言う。
親子仲良くて何よりです。
関東には花粉が飛ぶようになりました。皆様も吸い込みすぎないようお気をつけください。




