75.狩りのお供でピクニックです
青葉が眩しい今日、私は、ブッチャーさんとリッキー、エイミー、ヴァレリー、アイザイヤの肉屋の四兄弟にくっついて、森の奥へと狩りに来ている。
狩りに来たとはいっても、銃の装備をしているのはブッチャーさんとリッキーだけで、残りはピクニックに来たようなものだ。
見晴らしの良い場所に大きな布を敷いて、そこを根拠地にする。
ブッチャーさんと、リッキーは人懐っこい活発な小型犬を連れて、森の奥へと入っていった。
頑張って来てね。
うーん、いいお天気だ。
森の中だから木陰があって涼しいな。
お行儀悪く仰向けに寝転がってみる。背の低い木が多いので空も良く見える。
地面に目を向けると森の中に自生している野花が風に揺らいでいるのが可愛らしい。
「ノラ、お茶をどうぞ」
エイミーが手際良くランプでお湯を沸かし紅茶を入れてくれたので、ゆっくりと起き上がる。
「わぁ!いい匂い!なんのお茶なの?」
カップを口元に持っていくと、甘く良い香りがした。
ポットの中を見せてもらうと、黄色い小さなポンポンや、木の皮のような物が入っている。
「木の皮じゃないわ。お母さんと一緒にブレンドしたのよ。お口にあったようで良かった」
「乾燥した木苺を入れたのも美味しいんだよ」
「今日のお茶はこのお菓子にあうよ」
ヴァレリーが、こんがり焼いたバターケーキを手渡してくれる。
「あ、これもレモンがはいってるんだね。いい香り。」
「お母さんが作ったんだよ。ノラにあげろって」
アイザイヤが得意気な顔で言うとエイミーが苦笑いしながら続ける。
「うちに嫁に来たらいつでも、美味しい紅茶が飲めるって教えてあげて。だって」
「ふふ。」
ないない、ありえない。おもわず笑ってしまう。
「ないよねぇ」
「リッキーは他に好きな人がいるしねぇ」
「僕はノラとは結婚したくない」
…いや、別にいいけどさ。リッキー好きな人いるんだね。
みんなおませさんだね!
みんなで緩く時間を過ごしていると、遠くから犬の鳴き声が聞こえ始める。
そうしてしばらくすると、ダン!!ダン!!!!と二発の銃声が聞こえた。
数十分してもまだ二人は帰って来ない。
「戻ってこないね」
「あー、まだ血抜きしてるんじゃないかな?大きい獲物が獲れたのかもね」
ほー!
バスケットを片付けながら待っていると、二人が鹿を乗せた台車を引っ張って帰ってきた。小型の犬は嬉しそうに二人の周りをくるくる飛び跳ねている。
僕が追い立てたんだよ!褒めて褒めて!!
って言ってるのかな。
「肉はしばらく寝かせるけど、肝臓とレバーは今日食べられるよ。」
「良かったらジョンさんと夕ご飯を食べに来な!」
とブッチャーさんとリッキーが言うので、村にみんなで戻った後は一度解散し、夕ご飯の時間に家に行く事になった。
ブッチャーさんの家は村の端の方にあり、母屋の他に二つ小屋がある。
家の中は明るい色の手作りの小物がいたるところに置いてありセンスの良さを感じさせる。
ケイトさんの趣味なのかな。
夕ご飯は素晴らしい物で、鹿の心臓と舌のシチューをメインに、濃厚なレバーペースト、焼いた野菜に、デザートのパイが数種類出てきた。
ケイトさんはしきりに「美味しいでしょう?」と問いかけてくる。
いや、本当に美味しい。
新鮮なおかげか、内臓なのに全く臭みがない。
デザートのパイも全部美味しい。
祖父は料理を持参したワインと共に口に入れ、にこにこしている。
ケイトさんは都会で人気のあったブッチャーさんの胃袋を射止めて結婚したんだって。
私の胃袋も射止める気ですね。ブッチャーさん、人気があったんだ。
余談だけど、家に戻った時に詳細を祖父に伝えたら「とれたての鹿の肝臓!」と言って祖父が少し飛び跳ねたように見えた。
その後貯蔵庫に入って、ワインを選ぶ為にしばらく出てこなかった。




