72.旅の終わり
本旅最後の陸地は、小さなビーチに囲まれた吹きさらしの無人島だった。
本当に小さな島なので、すぐに散策は終わってしまいそう。
降りる前に乗務員さんの説明を聞く事にする。
数十年前、とある探検隊の足取りがわからなくなってしまい、結成された捜索隊が足取りを追っていくと、探検隊の最後の数名の壮絶な遺体がこの島で見つかった。
やだ!子供にそんな事話さないで!って内容も聞かされました。
ホラーになってしまうので、ちょっと割愛。
捜索隊は隊員のお墓と、死者を慰める為の祭壇をこの島に建設した。
偉大な探検隊員を忘れない為か、この島にはまだ彼らの越冬の為の小屋や、当時の持ち物が残ったままになっている。
という訳で、私たちはお墓参りに向かう。
「何もないですね」
「寂しいところだね」
どこを見ても海の透明な青に囲まれた島に降り立ち、凍りついた丸く小さな石をジャリジャリと踏みしめる。
海に目をやると、結構近くの氷山にシロクマが見える。
近いと大きいなぁ。遠くからみるとかわいいのに。
泳げるのかな?
海の上にいる動物を見ながら、島を歩いているとすぐに探検隊の遺物が埋められている区画が見える。
それを見ただけで、なんだか背中がゾワゾワして、あまりこの島には長くいられない気がしてしまった。
遺物を見て、祭壇とお墓にお祈りを終えた私たちは、すぐに船に戻る事にした。
怖そうにしている私に気を使ってくれたみたい。
「なんか、色々考えてしまうわね」
「偉大な探検家たちの冥福をお祈りしよう」
その日のオペラの演目は、その探検隊の物語だった。
何度目かの探検で経験も自信もあり、船員も沢山集まった。
きっと誰も国に戻れないとは思っていなかっただろう。
仕事の為だったり、名誉の為だったり、目的は様々だけど、まだ誰も知らない航路を渡り、栄光の中帰還するのを夢見ていたはず。
どんな苦難があったのだろう。
ある者は凍死し、ある者は餓死、ある者は病気になり、ある者は毒性のある鉱物の中毒になり死んでしまった。
辛い思いをした分だけ、楽しいこともあっただろうか。
どうか、今は穏やかにお過ごしください。
色々考えてしまい、オペラにはあまり集中できなかったな。
オペラの後は、三人で部屋でゆったりとくつろぎながら、暖かい部屋の中で家族と過ごせる幸福を噛みしめる。
今日が終わったらまた2日間は海の上で過ごし、ドーリングの港に戻る。
船の上は飽きちゃったと思ったけど、終わりだと思うと名残惜しいな。
でも我が家に帰るのも楽しみだ!早くサウナに入りたい!




