65.木こりの家
祖父が腰を痛めてしまった。
牧の仕事も忙しい上に、大物の家具作りをしていたところに、寒さも手伝いぎっくり腰を発症してしまったのだ。
念の為、マッケンジー先生にも見てもらったが安静にしてれば問題ないとの診断だ。
「年には勝てないね」
祖父は柔らかいソファにうつ伏せになり、悔しそうにいう。
「たまたまですよ。良くなったら、腰痛に効く体操をしましょうね」
叔母は祖父の背中に湿布を貼っている。
「偉大な詩人でも時には居眠りするからね」
言いながら私は腰とお尻の付け根あたりをさすってあげる。
「暖炉用の薪がもうなくなりそうなんだ。今日作ろうと思っていたんだけど難しそうだね。申し訳ないんだけど、ノラ、アビゲイルさんと一緒に木こりのアーネストの所に行って薪の配達を頼んできてもらえるかな?」
「薪くらいなら、私がつくりますよ。」
叔母が請け負うが、「私の目が黒いうちは、女性にそんな事はさせられないよ」と祖父が断りをいれる。
「すまないが、頼んだよ。」
「お散歩に丁度いいですから大丈夫ですよ。」
「安静にしててね!」
家から丘を下り、右に曲がり、小道にそれると木が生い茂っている場所にでて、そのまましばらく歩くと木造りの平屋が見える。
わぁ!リスだらけ!
黒毛のリスや、薄茶色の毛のリスが平屋の周りにわんさかいる。
家を覗くと誰もいないようなので、さらに森の中、音が響く方へと進んでみる。
カーン、カーン
カーン!遠くに聞こえていた音が大きくなり、誰かが叫んだ。
「倒れるぞぉ!!」
声が聞こえた瞬間、その場で止まる。
数メートル先の木が傾き始め、大きな音と共に地響きがする。
巨木が倒れたようだ。
「おーい、大丈夫か?」
「大丈夫です。アーネストさんですか?」
「ほい、私がアーネストです。」
祖父よりも少し歳が下だろうか?腕がやたらとむきむきと発達した男性が現れた。
祖父が腰痛で薪の準備ができないので、配達してもらえないかとお願いすると、アーネストさんは「あちゃー、大変だね。まぁ。立ち話もなんだから家に寄って行きなさい」と家に案内してくれた。
「薪は今日中に届けるから安心してくれろ」と言うと、おみやげに「固ゆでにしてあるからよ」と、茹でた栗ときのこを山ほど持たせてくれた。
叔母は家に戻るなり、アーネストさんに何か作ってあげると張り切って台所に立った。
祖父は寝そべりながら本を読んでいる。たまにはゆっくり好きな事してね。
「栗ときのこの油煮を作りましょうね」
おお!コンフィですね!!
深めの鍋に、油、にんにく、ローズマリーを入れて、塩もみしたきのこを鍋にいれます。
きのこがしんなりしたら、茹でた栗の皮を向いて弱火でじっくり煮ていきます。
アクは丁寧にとるよ。
油ごと、保存すると日持ちがするみたい。
食べる時には油を切って、胡椒とお酢をかけると美味しいんだって。
たったこれだけ!
夕方になり、アーネストさんが薪を持ってきたのでコンフィのおすそ分けをする。
「いや、かえってすまんね!」
と言いながら嬉しそうに帰って行った。
返してもらった器にはドングリ細工でできたリスが入っていた。




