53.役に立ちたいのに
学校が休みの日は家での仕事を終えると、あまりやる事がない。
読書の気分でもないので、暇を持て余した私はミリーの家に遊びに行く事にした。
扉を叩くとジナさんが真っ青な顔で出てきた。
パンの匂いがしないので、今日はパン屋もお休みのようだ。
「いらっしゃい。ちょっと朝からお腹が痛くてね。もしかしたら今日あたり産まれるかもしれないよ」
「えぇ!ローガンさんは?ミリーは?」
「ローガンは町に行ってるけどすぐ帰ってくるよ。いつ生まれてもおかしくないから行きたがらなかったんだけどね。ミリーはまた部屋に引きこもってるから、寝てるんじゃないかね?」
呆れ顔でジナさんは言う。
家に上がらせてもらい、ミリーの部屋をノックするが返事がないので「開けまーす」といいながらドアを開く。
あ、寝てる
ウェーブした髪を広げ、仰向けになり胸の上で手を組んで寝ているミリーは眠り姫のようだ。
しばらく寝顔を見つめていると、ミリーの目が前触れもなく見開いた。
ちょっと怖い。
「ノラ。きてたの。」
「うん、さっき来たよ。ジナさん具合悪そうだね」
「え、ほんと?朝は普通だったけど」
2人で階下に降りると、ジナさんは机につかまりながら今にも倒れそうだった。
「マッケンジー先生を、呼んできてくれる?」
「わ、わかった!!」
ミリーの足は遅いので、ジナさんと一緒に残ることにした。
マッケンジー先生とはお医者さんでマッケンジー先生の家で学校のウィル先生が下宿している。
なんでも大学が一緒だったんだとか。
私は大急ぎで集会所を通り過ぎ、ずーっと先にあるお医者さんの家にたどり着き扉を叩いた。
肩で息をしながら、出てきたマッケンジー先生に事情を説明してすぐに来てもらう事になった。
余談だけどマッケンジー先生は知的な広い額を持った美男子だった。ハゲてるって意味じゃないよ。
ウィル先生も家にいたので、一緒についてきてもらう。
「僕はなにもできないと思う」
と言いながらも、ウィル先生はマッケンジー先生の指示にしたがって、ジナさんが居心地のいいようクッションをあてがったり、お湯をガンガン沸かして消毒の準備をしていた。
てんやわんやしているうちにローガンさんも帰ってきて、先生に清潔にするよう指示され、慌てて身体を拭うと、ジナさんの元へ飛んで行った。ミリーもジナさんにひっついている。
「ジナ、頑張れ」
ローガンさんは生まれる前から涙ぐんでいるし、ミリーは辛そうなジナさんを見て号泣してしまっている。
「ウィル、まだ産まれるまで時間かかるから、外に子供二人を連れて行ってくれないか?ついでにソニアさんとブッチャーさんの奥さんを呼んできて。」
とりあえず、号泣しているミリーをジナさんから引き剥がし、私とセットで外に連れ出される。
私は空気。
「とりあえず商店にいくか」
ウィル先生は泣いているミリーを抱きかかえ、私と手をつなぎソニアさんのいる食料品店に向かった。
ジナさんが産気付いたと聞いたソニアさんは、大きなカバンに手当たり次第いろいろ詰めてジナさんの元に向かっていった。
「ケイトは私が一緒に呼んでいくよ」とブッチャーさんの奥さんのケイトさんも呼んで行ってくれるみたい。
やる事のなくなったウィル先生は肉屋でコロッケを買うと、ほらと私に差し出す。
「男はこんな時役にはたたないな」とブッチャーさんとしんみりしていた。
ミリーはもう泣き止んで、ブッチャーさんにメンチカツもねだっていた。
「お腹が空いては、戦いに勝てないからね」
「ミリーはどこに行く気なんだ」
先生が笑いながらメンチカツを一つ買うと、ブッチャーさんは五つもおまけしてくれた。




