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52.小事の発生です

穏やかな春が終わり、季節は夏めいていく。


とびきり暑すぎるわけではないものの、午前中の授業に気が入らず、なんとかこなしている状態だった。

午後になると、陽気のせいか外で遊びたい子供達の集中力が途切れてしまい、授業が上手く進んでいない。


ウィル先生も業を煮やしたのか、課外授業をすると言い、みんなを外へ連れ出した。


え、村の外に出ちゃうの?


思い返すと私はこの村に入ってから、一度も外に出たことがない。

村の全部も回れていないし、村の外に出る必要性も感じなかったなぁ。


とにかく、学校の一行は先生を先頭に、年長組が年少者にそれぞれついて移動を始めた。


ミリーには、マイルズが、私にはキャシーが、肉屋の双子には上の兄妹がついて手を繋いでいる。


キャシーの手は柔らかいな。

私の方が子供なのにガサガサしている。何か塗ってるのかな。


きっとエイデンは羨ましいだろうな。

チラリと、エイデンを振り返ると、エイデンはアレックスと歩きながらこっちを見ていた。

目が合うと手を振ってきたので、小さく私も手を振り返した。

キャシーが振り返るとエイデンと目が合ったようだが、すぐにキャシーは前を向いて歩いた。


「エイデンかっこいいよね」

「…そうね」

「大変だね」

マイルズがこっちを気にしているので気づかれないように話す。


村を出てから30分ほど歩いただろうか、私たちは湖にたどり着いた。


おぉ!綺麗なエメラルドグリーン!!


「岩山が削られた粉が湖に流れ込んで、反射してこの色になるんだ。」

先生が教えてくれる。


「あんな遠くの山からここまで流れているんですね」

「あぁ。僕は大学で地質学を学んでいたんだけど、湖や沼にも興味が出てきたんだ。もちろん教師の仕事が一番好きだからこの環境は最高と言えるだろう。さて、今日の授業は観察だ。発表はしなくていいから、ここにある木や、動物、石、空気、なんでもいいから自分が感じた事や、不思議に思った事を覚えておくように。一番大事なのは怪我をしないことだ。」


先生は嬉しそうに湖を見ている。学校ではあまり表情が変わらないのに、湖が好きなんだね。そんな先生をみて、思わず私も感想を述べてしまう。


「私はインドア派だけど、たまには外もいいですね」

「え?」


先生が何言ってるんだこの子?言う顔をしてきた。ちょっと子供っぽく無かったね。

自然の美しさに気が緩んで、思ったままに口に出してしまった。


今度は子供らしく、ミリーと一緒に湖に足をつけたりして遊んでいると、なんだか揉めてる声がする。


声がする方に行ってみると、マイルズとエイデンとキャシーが崖のようになっている場所にいて、なんと!エイデンがキャシーを後ろから抱きしめている!


きゃー


マイルズはエイデンとキャシーを引き剥がしながら「キャシーになにしてるんだ!触るな」と大声をあげている。


「ち、ちがうのお兄さん」キャシーは、マイルズに縋るが声が震えている。

「言っとくけどな、俺は何度も見逃してやっていたんだ!今回のは許せない!父さんに報告する!先生!僕たちは帰ります!」


そういうとマイルズはキャシーの手を引っ張り、先生が止める間もなく足速に湖を去っていった。

先生がため息をつき、エイデンに尋ねる。

「何があったんだ」

「キャシーが足を滑らせたので思わず胴体を捕まえてしまったんです。」

「キャシーと二人でいたのか?」

「あそこなら人から見つかりにくいと思って…村の外に行く事なんて何年もなかったので」


キャシーと出かけられる機会なんてないもんね。浮かれちゃったのね。


「見られた場面が悪かったな。マイルズはお父さん子な上に、妹が大好きだからな。」

「…はい。マイルズは悪くないです。女性に触ってしまったのも軽率でした。」

「いや、おかげで怪我がなく済んだ。後で僕からもゴームズさんに話しておこう」


ウィル先生はその日のうちにゴームズさんと話をしたようだけど、マイルズは学校を休みがちになり、来ても余り話さない。

キャシーはあれから一度も学校に来ていない。



いつもありがとうございます!

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