44.肉やのコロッケ
今日は、肉屋にベーコンとソーセージを買いに行きます。
「暗くなる前に帰ってくるんだよ」
「はぁい」
いつもと同じやり取りを交わして家を出る。
遊びにも、寄り道もしないから暗くなる前に帰りますよ。ミリーしか友達いないしね。
いつもと同じ道を通り、今日は3番目にある雑貨屋ではなく、真ん中のお店の肉屋に入る。
「いらっしゃい」
肉屋になる為に生まれましたといった感じで、腕っ節の強そうな髪も髭ももじゃもじゃで覆われたエプロン姿の男の人が接客してくれる。
「ベーコン一塊と、ソーセージを3連ください」
「はいよー。重いけど大丈夫?」
「大丈夫です」力持ちなんで!」
「ところで、お嬢ちゃんがフードチョッパー作ったんだって?あれはすごいな!ミンチ肉もできちゃうからミンチ肉が売らなくなっちゃったよ」
肉屋が冗談混じりなのか、おどけた調子で言う。
「作ったのはレビさんです。」
「まー、それもそうか!レビが大袈裟に言ってるんだな。お嬢ちゃんに作れるわけないもんな。それにしてもミンチ肉が売れないもんだ!」
「あの...ミンチ肉全然売れないんですか?」
「あぁ、今は全くだな!そんなに作らないようにはしてるんだけどな。捨てるのが勿体無いな!」
やだー。仕方のない事だと思うけど責任を感じる。
「えーと、前に住んでた所かな?それか本でみたんですけどお肉屋さんでミンチ肉を使って揚げ物をするらしいんです」
「揚げ物?肉屋なのにか?ちょっとその話を聞かせてみな。俺はニック・ブッチだ。みんなブッチャーって呼ぶぜ」
それは、みんなブッチャーって呼ぶでしょうね。お言葉に甘えてブッチャーさんと呼ばせてもらおう。
「お肉で出る脂身の部分で揚げ油を作って、茹でたポテトにミンチ肉を混ぜて衣をつけた物や、ミンチ肉に玉ねぎを混ぜて衣をつけたものを揚げるんです。」
「ふん!やって見た方が早そうだな。時間はあるか?」
「明るいうちに帰れば大丈夫です」
そして、出来ました。
ホクホクの牛肉コロッケとジューシーメンチカツ。
メンチカツはお肉と玉ねぎ、卵だけの贅沢なお味。
作り方はもう、簡単。
タネを混ぜ合わせ、小麦粉、卵、パン粉の順番でつけて揚げていくだけ。
お肉屋さんで作ったのが美味しいのは、素材がいいだけではなくラードやヘットを使っているので油自体に旨味があるのと、高温でカラっとあがる事だ。
「天才的じゃねぇか」
試食をしながら、ブッチャーさんが唸り声をあげる。
そして右手を差し出して来たので熱く握り返す。
気分的にはガッて音がする握手だったけど、実際はペチンとなるだけだった。
うん、美味しい。祖父へのお土産に揚げたてをお持ち帰りしたい。
その日から肉屋の店頭でコロッケとメンチカツを売り始めた。それ目当てのお客さんがついでに何か買っていくので順調に売り上げが伸びているらしい。
コロッケとメンチカツをお礼だといって無料で貰って帰り、祖父は予想外の話に目を瞬かせていた。
この話を書いていた時のテンションが少しおかしかったです。




