37.チェリーパイとお茶会
すっかり冬の気温になったけど、風もなくお天気がいいので、ポカポカ気持ちいい。
今日は我が家にミリーを招いてお茶会をするので祖父と朝から台所に立っている。
叔母の家にいた時と違い、祖父は手順も作り方も知らないので、私がしっかりと指示を出さなければならない。
以前より体力がついたので、ましに動けると思うんだけどね。
昨日のうちに、色とりどりのジャムを使ったクッキーを焼いておいた。
昨日はサクサクしてたけど、生地が馴染んだというのか今日は落ち着いた食感。
現在、ストーブの上では鉄製の厚い鍋で豚肉の塊をじっくりと煮込んでいる。
今から作るのは、やはり焼き立てを食べたい!
お茶会のテーブルにあったら嬉しい!チェリーパイ!
チェリーは缶詰をを使います。
お茶会の定番のビクトリアケーキを作るかで、凄く迷ったけどケーキにジャムを使うとクッキーと味が被っちゃうなぁと思い断念。
単純にチェリーパイが食べたかったしね。
バター、砂糖、塩、小麦粉を手ですり合わせながら混ぜ、卵黄と冷水を少しずつ加えてよく混ぜる。
今フードチョッパーがあれば楽なのに…!と頭をよぎるけど手でパイ生地を作るのもお菓子作りの醍醐味なんだろうね。パンも手ごねが楽しいしね。
混ざった生地を二つに分けたら、重ねて、伸ばして、分けてと5、6回繰り返す。いわゆる練りパイ。
生地を休ませている間に、パイに詰めるチェリーの缶のシロップだけを鍋にあけ、スターチを入れて火を入れとろみをつけ、チェリーも加えとろみを絡ませる。
チェリーが冷めたら、型に敷き詰めた生地に詰めて、オーブンで焼いて出来上がり。
余った生地で、小さいほうれん草とベーコンのキッシュもつくってしまう。
パイを焼いている間に、薄く長い胡瓜のスライスを祖父に沢山作ってもらい、胡瓜を巻いて器をつくり、その中にスモークサーモンを薔薇のように巻いて入れていく。
最後にクリームチーズを花弁に見立てる。
お茶会と言えば、サンドイッチとスコーンだけどミリーはサンドイッチなど食べ飽きているだろうし、正直祖父の作る料理に出てくるパンはスコーン率が高いので飽きてしまった。
ミリーが家から丸パンを持ってきてくれる予定だ。
お昼になり、ミリーが丘を息を切らしながら登ってくる。
「ご招待ありがとう」
鼻で深く息をしながらミリーが言う。
「ようこそいらっしゃいました。こちらへどうぞ」
私も他所行きの声で中へ案内するが、ミリーはテーブルセッティングを見ると興奮してしまい、すごい!可愛い!!と声を上げ続けていた。
テーブルには、スノードロップやクリスマスローズの花をあちらこちらにあしらい、雪の中のお茶会をイメージ。
お茶会では繊維もスルっとほどける程煮込んだ豚の塊肉をミリーの持ってきた丸パンに挟みバーガーにして食べ、クッキーや、キッシュを摘み、チェリーパイに舌鼓を打つ。
祖父はポーチに出て1人でチェリーパイを食べているので、室内には女子2人きり。
とりとめもない、5歳児らしい会話が繰り広げられるが私の脳は完全に幼児化しているようで、全く苦はない。
目下の所、私たちの1番の興味は春から行くことになる学校の話。
ミリーにも兄弟がいないので、様子は全くわからないけど、この小さな村には若い夫婦が多いので、学校も賑わっているようだ。
お茶会をして2時間も過ごすと、ミリーは疲れたのか椅子の上で眠ってしまった。
祖父が家まで送るとミリーを抱きかかえて出ていったので、私は出来る限りお片付けをしておく。
帰宅した祖父はチェリーパイやクッキーが余っているのを見て、心なしか嬉しそうにしていた。




