36.彫刻刀を学びました
レビさんが、見送りにドアの前までやってくると、二人が声をかけて来た。
「あら、もしかして待ってた?」
「すまないな。遅くなってしまって」
「ごめんねノラ、レビさんもありがとうございます。」
「いや。」
「レビさん、もしよかったら今日もお夕食お持ちしましょうか?お仕事しながらだと大変でしょう?」
「今日はもう作ってあるから。」
「そうですか。また、作りすぎてしまった時に持って行きますね」
「あぁ」
ローラさんの申し出に、レビさんは淡々と答える。ローラさんは残念そう。
「さ、ノラは中へどうぞ。レビさん、それではまた。」
雑貨屋の中に入ると、マスターがぼやく
「ほんと、愛想のないやつだな。お前もなぁ…」と呆れたようにローラさんを見る。
「さ、お父さん!お仕事よ!ノラは今日は何か買っていく?」
「服と靴のお支払いと、毛糸と編み棒を買いに来ました」
「もう一人で編み物ができるのね。すごいわ!何を作るの?」
「スカーフとミトンを作ろうと思っています」
「暖かいのだとウールだけど、アルパカの毛も肌触りが良くて暖かいわよ。ウールはこれで、アルパカがこれね」
祖父と、叔母に作ってあげたいなと思っているので2色じっくり選んでいく。
「これにします。」
「消炭色と、濃色ね!なかなか渋いわね。冬はこれぐらい濃い色もいいわよね。」
「靴も服も、もうじきにできあがるからな。帰る時は気をつけろよ」
雑貨屋の外に出ると、向かいのレビさんの家の窓から仕事中のレビさんが見える。
机に向かって真剣な顔をして、何かを書いているみたい。
見送りのローラさんも、レビさんに気づいたようで数秒レビさんを見つめた後、なんでもない様な顔をして店に戻っていった。
祖父の元へ帰ると、祖父はまだ家具作りのお仕事中のようだ。
側に行き、レビさんに台所用品を作ってもらう約束をした事を伝える。
「レビさんが作った洗濯機を見て思いついたんだ。叔母さんの家にいた時からこんなものがあればいいなって思っていたのと同じ形だったの。」
「そうか、ノラは発想力があるんだね。そういった物だったら、もちろんレビのが上手に作れるんだろうね」
祖父は少し、残念そうに言う。作りたかったのかな。
「お祖父さん、レビさんはきっと、お祖父さんのように綺麗に彫刻はいれられないよ。」
「ノラは良い子だね。そうだね環境によって使う木が違う様に、人にも適した場所があるだろうね」
「それに、その機械ができたらお祖父さんに美味しいお菓子も、珍しいお料理も作れると思うんだ。ところでお祖父さん、私も何か彫ってみたいな。邪魔かな?」
「うーん、刃物は心配だけどね。ノラはやってみてもいいだろう。もちろん邪魔なんかじゃないさ。この木だったら比較的柔らかくて刃が通りやすいよ」
そして、祖父はハガキよりも少し小さいサイズの木の板と、彫刻刀を手渡した。
「この方向から刃をいれると滑らかに動くよ。しっかりと木の声を聞いてあげるんだよ。まずは縦に線を入れて、慣れたら斜めや、横、ジグザグにも入れてみよう」
木の声、木の声、木の声…
「お祖父さん、この木は喋らないよ」
「続けていれば、いつか聞こえる様になるよ」
祖父は苦笑い。怪我もなく、彫刻刀が使えました。
祖父の信頼も順調に得ている気がする。
夕ご飯を終えて、自室の明かりを消す前に少しスカーフを編み始める。
キリの良いところでやめますよ。夜なべはしません。




