31.穴あきドーナツの誕生
しばらく小屋で遊んでいると、ジナさんがカゴを持ってやってきた。
「やっぱりここにいたね!ほんと、ミリーは外が好きじゃないんだから」
ジナさんは呆れながら言った。ミリーとは仲良くやれそうな予感。
「お昼にドーナツを持ってきたから、ここで食べちゃいましょう」
小屋に置いてある机に籠を乗せて、一緒に持ってきていたポットを取り出し、ブリキのカップに紅茶をついでくれた。
ドーナツは丸型のベニエのようなシュガードーナツ。
「いただきまーす」
とミリーとローガンさんがドーナツにかぶり付く。
「いただきます」
私もドーナツを口に入れる。お!すごい弾力。もっちもち。
ドーナツの端を口にいれ、生地の弾力を楽しむ。
油とお砂糖の禁断の組み合わせ。そして、深みと力のある小麦!
二口食べて、ふと顔をあげると3人とも変な顔をしている。
「おい」
「おかあさん、また…」
「あちゃー、またやってしまった。ノラ、もう食べないほうがいいよ。中まで火が通ってなかった生焼けドーナツだったよ」
パン焼きは絶対に大丈夫なのに…とジナさんが嘆いている。
「お父さんが美味しい小麦を作っているのに、お母さんのドーナツは揚げすぎて硬いか、生なんだよね。あ、お店にでてるのは良く揚げてあるほうだから大丈夫だよ。」
何が大丈夫なんだろうか。あ、でも硬いドーナツも美味しいよね。オールドファッションとか。
そして、私はこの話をどこかで聞いた事がある。
「ジナさん、私、思いついた事があるんだけど」
3人が一斉に私のほうを見る。
ひとまずパン屋に戻り、手を洗いミリーのフリフリのエプロンを借りる。
大した事をする訳じゃないんだけど、形は大事。
「では、まず、生地を均等な厚みに伸ばしていきます。」
一次発酵が終わった生地を麺棒を使って伸ばそうとしましたが、上手く力が伝わらない。
「「「…」」」
ローガンさんが伸ばしてくれました。
「丸い形のコップなどを使って、ドーナツの大きさにくり抜きます。」
さすが、パン屋さん。ちょうどいいサイズの型がありました。生地の形成は丸めても作ってもいいんだけど業務用の型があるし、お店なので型抜き式にします。
力のない私は、ローガンさんに指図をするだけだ。
「さらにそのドーナツに、もっと小さな丸い型でくりぬきます」
ローガンさんが感心したような顔をしながら、クッキー用の型を使ってくり抜いていく。
そして、2次発酵をしていくんだけど、膨らんできた生地をみているとこれだけでも美味しそう。生地に愛着が湧いて可愛く感じてしまう。
「揚げます。いつも通りに!」
「こんな簡単な事で!!!」
ジナさんが思いつかなかったと、驚愕している。
ジナさんもローガンさんも途中で気づいたみたいだけど、真ん中に穴を開ける事で熱が良く通り、生焼けにならなくなる。
くり抜いた生地も揚げて食べられるし、ツイストして揚げてもいいよね。
穴の空いたドーナツも、くり抜いた穴も新商品にするって。
揚げたてのドーナツを食べて、ドーナツのレシピを教わって、麦畑の中を散歩して、ローガンさんのお仕事を手伝って…と時間を過ごしていると、空が赤くなり始めた。
食事用のパンを購入して帰ろうとすると、ジナさんは祖父へのお土産にとドーナツを沢山包んでくれた。
「また遊ぼうね」
「うん!楽しかった!」
面白いと思ってもらえる物を書くのはなかなか難しいですね。少しでも評価が増えているので嬉しいです。




