30.粉屋のパン屋
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パン屋のドアをあけると、パンを焼いている香ばしい匂いがしてくる。
中は本当にちんまりとしていて、パンを置いてある台には、食事用の白いパンやライ麦パンなどが数種類と、ベーグルや、カットされたバターケーキ、くるみの乗ったドーナツなどがポツポツとディスプレイされていて、お店の奥はキッチンになっていてパン焼き窯や、ストーブが設置されている。
キッチンのストーブの上には揚げ物用の鍋があり、その前には恰幅の良い女性が汗を流しながらパン生地を油の中に入れている。
「こんにちは。」
「こんにちは!あらまぁ、あらまぁ!!ジョンさんの所の子だね!ちょっと待っててね!今このドーナツをやっつけちゃうからね」
その女性は揚げていたドーナツをクーラーに乗せてしまうと、階段に向かって大きな声を出した。
「ミリー!!!!!降りておいで!!!」
すぐに、階段の上からノラと同じ年頃の女の子が降りてきた。
「なによー、もう!声が大きいんだから」
ぶつぶつとその女性に文句を言っていた女の子も、私を見ると目を大きく見開いた。
「ジョンおじさんの?こんにちは。私ミリーっていうの。あなたのお名前は?なんて呼べばいいの?」
「こんにちは。ノラといいます。ジョンは私の祖父です。私の事を知っているの?」
「うん。みーんな知ってるよ!ジョンおじさんがみんなに、孫が来るんだって言っていたもん。」
「ふふ、ノラ、私の事はジナって呼んでおくれ。ミリーとノラは年が近いそうだから良い遊び相手になってくれると思って来るのを楽しみにしていたよ。いくつになるんだい?」
「もう5歳になっています。ジナさん」
「礼儀正しい良い子だね。ミリーと同じ年だから春から学校だね。ミリー、家にばっか篭ってないでノラと外で遊んできなさい」
まごまごしている内に、ミリーと共に外に出されていた。
「ねぇ、学校に行くってどこに学校があるの?」
「どこって、村の中にあるよ。村の入り口のほう。今度連れて行ってあげるね。今日はうちの麦畑をみせてあげる。今は、はるこむぎの収穫時期だから綺麗だよ。私とお母さんが村に来て困らないように、麦畑を作って待っててくれたんだって。私は麦畑があるのしか覚えてないけどね」
ミリーに手を引かれて、パン屋の裏手に行くと麦畑が広がっていた。面積はそこまで広くない。
大粒の黄金色の小麦がゆさゆさと揺れている。
「うちの小麦はすっごく美味しいんだって。どじょーがいいんだって。」
誇らしげに麦のご紹介をしてくれる。
「あそこにお父さんがいるんだよ。」
そう言うとミリーは、小さな小屋に向かって走り出した。
小屋の中には、細身の男性がいて手回しの製粉機を両手でグルグルと回している。
「お父さん」
「おーミリーか。どうした。」
振り返らずにミリー父が答える。
「ジョンおじさんの孫がきたよ。」
そこでやっとミリー父が顔をあげ、ノラを見る。
「おーよく来たね。なんて名前なんだ?」
ノラはミリー父に自己紹介をすると、ミリー父はノラとミリーにお手伝いを頼んだ。
ミリーの父が製粉した粉を、網を使ってふるうだけの簡単なお仕事です。
「ミリーのお父さん、お名前なんていうの?」
ミリー父と頭の中で言っているのに疲れてしまったので、ミリー父に名前を聞いてみる。
「ローガンだよ」
「ローガンさん、一人で粉作るの大変でしょう」
全てが一人での手作業なんて、気が遠くなる。信じられない。
「そんなに量もないし、これしかやることねーからな。一人で十分」
「お父さんの粉は高く売れるから、少しでも大丈夫。」
プレミアム価格なんですね。
製粉機も回してみるかと、親切に言ってもらったけどもちろん重すぎて回りませんでした。




