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21.グッバイアンティ

祖父は焼きたてのアップルコーヒーケーキを気に入ったようで、勧められるがままに4切れも食べた。

甘いものが好きなのに、しばらく食べていなかったんだって。

にこにこと食べる姿が可愛らしい。

祖父のお腹が満足すると、真面目なお話が始まった。


「長い間家を空けていた息子が帰ってくるなり、妻に結婚したい相手がいると言いまして、話を聞いてみると旅の途中で大変お世話になった女性だとか。両親がいない状態で一人で暮らしていたエマニエルさんと、息子の交際に妻はひどく反対しました。私は当時仕事にかかりきりで、家の事を妻に任せていたので、交際の話は聞いていたのですが、息子の肩を持つ事もしませんでした。そして、時が経つにつれ、痺れを切らした息子はエマニエルさんを連れて居なくなってしまったのです。親の過干渉が過ぎたのか、妻と息子は何度も衝突していたので、今回もすぐに戻ってくるだろうと放っておきました。それが間違いでした。何年も帰らない息子を探そうと思いたち、親戚や知り合いに頼ったのだろうと彼らを訪ねた時には誰も息子の行き先など知りませんでした。存外遠い地で生活していましたね。エマニエルさんにも心労をおかけしてしまい、謝罪の言葉もありません。今、私は、妻と訳あって離縁して、男一人で暮らしている状態ですが、ノラには不自由のない生活を与えてあげるつもりです。」

放置してしまった言い訳になってしまうのですが、と祖父が叔母に現状を説明している。


妻との離縁の原因はどうしたのかな。


ノラの両親と叔母は家族ぐるみで仲が良かったのだけど、ノラの父親がいなくなってから、叔母は父親の事を酷く嫌っていたので、苦々しい顔で話を聞いている。


「今回のノラのことに関してだけ言うと、姉の責任が大きいとは思っています。ノラを預かっていただけるだけでも感謝していますわ。きっと、孫の存在なんて思いつかなかった事でしょうし。この数日間で、勝手ながら、ジョンさんの事を少しお調べさせていただきました。とても素晴らしい方だと思います。そして、本日お会いできて信頼できる方だと確信いたしました。ノラをよろしくお願いします。」

だけ、はすごく強調していたし、少し嫌味が混ざったような気がするが、最後のお願いしますの言葉は懇願するように聞こえた。


祖父はすまなそうな顔をし、励ます様に叔母の肩に手をおく。

私は叔母を抱きしめた。


短い間だったけど、素晴らしい時間をありがとう。

叔母さんのおかげで、寂しさも不安も和らいだよ。


しばらくするとまた穏やかな叔母さんに戻って、祖父と今後の方針や取り決めなどを話していく。私は途中でお庭に行ったので全部は聞けませんでした。

叔母が祖父に封筒を渡しているのが見えたけど、祖父は受け取らずに断っていた。


時間が経つのは早いもので、もう出発の時間になってしまった。

外に馬車が繋いであるので、これから馬車に乗り、アイビースタウンの駅まで行く。


「字の勉強もしっかりして、お手紙書いてね。叔母さんも書くからね。必ず会いに行くからね」

「うん」

私たちはしっかりと抱きしめ合った。


庭にも、心の中で挨拶をする。

庭全体が、楽しみなさいね、元気でやるのよ、と言葉をかけてくれているようだった。


今日から紳士な祖父との生活が始まる。

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