20.祖父がやってきました。
昼近くになると、いよいよドアのベルがなる。
思わず身体がすくんでしまう。
いつもより入念に身支度を整えた叔母がドアを開けて、来訪者を招き入れる。
逆光で顔がすぐには見えなかったが、背の高い男性だ。
ドアを閉めると、男性の風貌が露わになる。
髪にも髭にも白髪が多く混ざり、そこから男性の経験豊かさを思わせるが、濃い茶色の暖かそうなスリーピースのスーツをきっちりと着こなし、軍人の様に背筋を伸ばし、叔母と握手を交わしている様子は孫がいる年齢を感じさせない。
叔母も紳士を前に少女の様にはにかんでいる。
あ、笑うとすごく素敵。癒し系スマイル。
まるで絵本のサンタクロースみたい。見た目じゃなくて、雰囲気ね。
「こんにちは、アビゲイルさん。ご連絡いただきありがとうございます。この度は息子のせいでご迷惑をおかけしてしまったようで申し訳ありませんでした。この様な事が起こってしまったのは決して、良い事ではないのですが、孫に会う機会が得られた事は喜びです。手紙よりも先に電報が届いたのですが、孫がいた事も知らなかったので、手紙を読んでからは、孫に会えるのを楽しみにしていました。」
男性が叔母と丁寧に挨拶している。
叔母の名前はアビゲイルだったのね。
やはり、この人が祖父で間違いないようだ。代理人とかじゃなく。
お祖父さんっぽくないから、びっくりしてしまった。
そして、祖父が私に目を向けて、また天使の様に微笑んだ。
「はじめまして。君がノラだね。私はジョンと言います。ジョンでも、お祖父さんでも好きに呼んでかまわないよ。こんなお爺さんと二人で暮らす事になってしまうけど、できる限り不自由はさせないつもりだ。」
祖父はかがんで、私と同じ目線の高さになると私とも握手。
いつもより片付いたリビングに祖父を案内し、椅子を勧める。
祖父は、手を広げて私を持ち上げると、膝の上に座らせた。
叔母はコーヒーを挽きに台所へ行った。
「素敵なおうちだね。ノラは何歳なのかな?」
祖父は目をキラキラさせて私の頭を撫でる。
私と話すのが楽しくてたまらないといった雰囲気で沢山話しかけてくれる。
私はこの短時間ですっかり祖父の事が好きになってしまったので、叔母の家でやった事や、今日作ったケーキの話をしてみる。
祖父はうんうん頷いたり、感心したりしながら、話を聞いてくれる。
「ケーキなんてずっと食べていないから、食べてみたいね。」
コーヒーを飲みながら祖父が言うと、叔母は恐縮しながら
「よろしければお出しいたします」とケーキを切り分けてくれた。
もともと、お出しする予定だったのに、相手が洗練された男性だったので遠慮してしまったようだ。
切り分けたケーキにアップルソースをかけてお出しする。
祖父はもう嬉しそうに頬張っていた。
「これは、もう芸術ですね。コーヒーと本当によく会う。」
シナモンの香りと、ローストしたピーカンナッツはコーヒーとよく合う事でしょう。
私が飲んでいるアップルソースのヨーグルトミルク割りにもよく合います。
アップルラッシーみたい!
早くコーヒーが美味しく感じる歳になりたいものです。




