第9話 ノウカのいない日?
最近、新しい話の更新が遅くなってしまってすみません。Webサイトにアクセスできないトラブルが発生していました。
翌日、大きな木にて。
フィンはマルとキチに向かってミミズを差し出していたが、当然のごとく二匹にはあっさりと無視された。
「うぅ……マル、キチ、なんで食べてくれないんだよ?」
大木の太い枝の上に座っていたフィオナが呆れ顔で言った。「変なお兄ちゃん! オオカミがミミズなんて食べるわけないでしょ」
フィンはフィオナに言い返した。「でもさ、ノウカが戻ってくるまで、マルとキチを腹ペコにしておくわけにはいかないだろ」
一方のイーファは、大木の根元に腰掛け、葉っぱの上に載せられた肉をじっと見つめていた。それはマルとキチの分として残っていた、ほんのわずかな肉だった。
イーファは、マルとキチを必死に説得しようとするフィンと, その隣でペラペラとおしゃべりを続けるフィオナの姿をぼんやりと眺めていた。
*回想*
イーファ、フィン、フィオナの三人は、やぶをかき分けながら森の中を進んでいた。
「あぁ……穏やかな朝だな。ノウカが家に誘いに来ないなんて、なんだか変な感じだよ」とフィンが言った。
フィオナはやぶを少し乱暴に払い除けながら尋ねた。
「あのドジなノウカはどこ行ったのかしら? 村の中でも見かけなかったわよね。普段ならウロウロしてるくせに」
……。
「さあね」とイーファが呟いた。
イーファは続けて言った。「放っておけばいいわ。あの子にも都合があるんでしょうし、毎回私たち三人が付き合う必要もないわ」
最後のやぶを抜けると、目の前にあの大きな木が姿を現した。
フィオナはいち早く前に出ると、胸を張った。
「やっと着いたわ〜」
三人は大木に向かって足を進めた。
しかし、意識の半分をノウカの不在に、もう半分を足元に向けていたイーファは、石に足をとられて豪快に前方へ倒れ込んでしまった。
イーファは咄嗟に何かを掴もうと手を伸ばしたが、空を切るだけだった。
*パフッ*
イーファの顔面は、朝露でまだ温かい草の上にめり込んだ。
フィオナは必死に笑いをこらえようとした。
「プッ……なにしてんのよ、イーファお姉ちゃん?」
「ハハハハ! イーファお姉ちゃんの倒れ方、すごく可愛いー!」フィオナはその珍事に腹を抱えて大爆笑した。
イーファは服についた汚れを払いながら、ゆっくりと立ち上がった。
「まったく……今日の私はどうかしちゃってるわね」
フィオナが笑い発作を収めると、三人は再び大木へ歩みを進め、その根元に腰を下ろした。
フィンは大きく息を吐き出した。「ハァ……ところで二人とも、学校で必要なものの準備って、もう済ませたか?」
沈黙……。
イーファは少し身を乗り出して尋ねた。「学校の前に、まずディーンの授与式に参加するんじゃないの?」
フィオナはここぞとばかりに知ったかぶりの態度で割り込んできた。
「あら、イーファお姉ちゃんはまだ分かってないの? ディーンの授与式はたった一日で終わるのよ! でも学校の準備はもっと前からしておかなきゃいけないんだから!」
イーファはいつもの無表情で短く返した。
「そうなの」
その素っ気ない返事を聞いたフィオナは、さらにマシンガントークを炸裂させた。
「はぁ!? 『そうなの』だけ!? いい、教えてあげるけど、私たちにはマナーと高い規律も求められるのよ! それにね—」
イーファは静かにため息をついた。「ハァ……本当に口うるさいわね」
フィンは頭を掻きながら苦笑いした。「へへっ……僕はカバンと靴さえ揃えれば、全然問題ないと思うけどな」
フィオナはすぐさま食いつき、フィンの言葉を遮った。
「えっ? あ、それもそうね! 制服は学校側が用意してくれるんだもん。学校ごとにデザインが違うから、どんな制服なのか楽しみだわ〜」
(こういう話題になると途端に張り切り出すのね……)とイーファは心の中で呟いた。
「確か……制服って学校ごとに特別なデザインになってるのよね? だから違いがあるだけじゃなくて、特別感もあるわ。私たちは必要なものだけを買って持っていけばいいはずよ」
フィオナは声を弾ませた。「どんなデザインの制服なのかしら〜、可愛い制服だといいな!」
イーファはフィオナの言葉を聞いて、片方の eyebrows を少し上げて呟いた。「どうしてそんな質問が出てくるのか、そっちの方が気になるわ」
(でも……第一印象を決める意味では、制服のデザインも大切な要素かもしれないわね。学校生活においても重要な部分なのかも)とイーファは心の中で考えた。
フィンがイーファの方を見た。「そういえば、今朝うちのお袋が僕とフィオナの入学手続きをしに出かけたんだけど、モリガン叔母さんもイーファの手続きに行ってるのか?」
フィオナがフィンの言葉を引き継いだ。「そうよ! お母さんは夕方か、遅くても明日には帰ってくるって言ってたわ」
イーファも言葉を返した。
「そうね、うちのお母さんも今朝早くから出かけていたから、きっと私の手続きをしてくれているんだわ」
「じゃあ、僕たち一緒に手続きしたってことか? それなら良かった〜! もしかしたら同じクラスになれるかもしれないね、へへっ」フィオナは浮かせた両足をブラブラと揺らしながら嬉しそうに微笑んだ。
イーファはフィオナへ鋭い視線を向け、気になったことを尋ねた。
「何よ? クラス分けって手続きをした順番で決まるものなの?」
フィオナはイーファの鋭い質問にギクッとした。「え? んー……たぶん違うと思うわ、へへっ〜」
会話を打ち切るように、フィンがパチンと手を叩いた。
「まあまあ……同じクラスになれるよう祈るしかないさ。でも……もし違うクラスになっても、お互いのことを忘れちゃダメだぞ」
「それにしても変だな、こんな時間になってもノウカが姿を見せないなんて」
イーファは大木の周囲をじっくりと見回した。
「あの子がいないと、なんだか少し物足りないわね」
その時、フィオナが上空からの奇妙な音に気づいて見上げた。
*ガサッ……ガサガサッ……*
木の上から、四本足でふさふさの尻尾を持った生き物がこちらを見下ろしていた。
「え? なんだありゃ」フィンは大木から少しずつ後ずさりした。
何の前触れもなく、その二つの影は木の上から跳び降り、正確にフィンの身体へと直撃・着地した。
「うわぁぁぁぁっ!」
*ドカッ!*
……。
「うぅ……痛ぇ……」
「マル!? キチ!?」フィオナは目の前に舞い降りた二つの毛玉が、知っている姿だと気づいて驚愕の声を上げた。
イーファはマルとキチの口元に目をやった。「二匹が噛みついているのって……肉かしら?」




