第12話 ノウカとお母さん
「それじゃあ、ついてきて」とノウカが言った。
「うん、行こう!」とフィオナが声を弾ませた。
「ちょっと、待って! 先に鼻をかませてよ!」とノウカが叫んだ。
数分後、ノウカが鼻をかみ終えると。
「ふぅ……よし、行こうか」とノウカが言った。
ノウカは真っ先に走り出し、他のメンバーがその後を追った。
「おい、そんなに急ぐなよノウカ」とフィンが言った。
「待って……ハァ……ちょっと!」とフィオナが息を切らせた。
しばらくして、彼らはある一軒の家の前に到着した。
「ほら、ここが私の家よ」とノウカが言った。
「はぁ……あんた……私を疲れさせるためにわざと走ったでしょ?」とフィオナが文句を言った。
「ここがノウカの家なの?」とイーファが尋ねた。
「初めて見たな」とフィンはノウカの家を見上げながら言った。
ノウカはすかさずイーファとフィンの手を掴んだ。
「案内してあげるからおいでよ、でも長居はダメだからね」とノウカが言った。
「分かった分かった、もう少し落ち着けって」とフィンが言った。
「ちょっと! 私を置いていかないでよ!」とフィオナが叫んだ。
ノウカが扉を開け、四人は家の中へと足を踏み入れた。
「なんだあれ? 吊るしてある鉢植えか?」とフィンが尋ねた。
「そうよ、私が作ったの。その鉢の中にはネモフィラの花が植えてあるんだけど、もう夏だから枯れたらすぐに処分しなきゃいけないのよね」とノウカが説明した。
彼らはそのままリビングへと進んだ。
そこには、布が敷かれた長椅子の上に、横たわっている一人の女性がいた。
女性は微笑みを浮かべ、目を閉じながら長椅子に body を預けていた。
「お母さん、ただいま」とノウカが声をかけた。
「あら……ノウカ、こんな時間に帰ってくるなんて珍しいわね」とお母さんが言った。
「お友達に家を見せようと思って、ちょっと戻ってきただけだよ。またすぐ遊びに行くから」とノウカが答えた。
ノウカのお母さんは向きを変え、目を開けると優しく微笑んだ。
「あら、ノウカのお友達ね。ゆっくりしていってね」とノウカのお母さんが言った。
「はい、おばさん。突然お邪魔してすみません」とフィンが挨拶した。
ノウカは二人を促して階段の方へと向かった。
階段へ歩みを進めながら、彼らはノウカの家の中を見渡した。
リビングには本棚があり、素焼きの花瓶が置かれたテーブルの上には、折り紙や花冠が飾られていた。
「へえ、ノウカが花冠なんて作れるとは知らなかったな」とフィンが言った。
「ああ、それね。昔なんとなく作り方を覚えて、今でもついつい作っちゃうのよ、へへっ」とノウカが照れくさそうに笑った。
「なによニヤニヤしちゃって、一体どうしたっていうのよ?」とフィオナが突っ込んだ。
四人は木製の階段を上り、2階の廊下を歩き始めた。
「ほら、そこが納屋で、こっちが私の部屋、奥が私のお母さんの部屋よ」とノウカは2階の部屋を順番に指差しながら説明した。
「え、じゃああの部屋は何なんだ?」とフィンはノウカが触れなかった部屋を指差して尋ねた。
「ああ、あれはただの物置部屋よ。使ってないから、普段は必要な時に使ってるだけ」とノウカが答えた.
「えっ、そうなの?」とフィンは少し不思議そうに首をかしげた。
「もう行きましょう。長居してお邪魔になるのも良くないわ、そろそろ失礼した方がいいと思うの」とイーファが言った。
四人は階段を下りていった。
*トントン、トントン*
階段を下りる彼らの足音が響いた。
「お母さん、また外に行ってくるね。夕方には帰るから」とノウカが言った。
「ええ、気を付けてね」とお母さんが答えた。
四人は小走りで外へと出て行った。
*ガチャリ*
ドアが閉まる音が響き、彼らは雨宿りならぬ陽よけのために一本の木の下へと向かった。
「夕方には帰るって言ったけど、もうすっかり夕方になってきたみたいね」とノウカが言った.
冷たい風が彼らの間を吹き抜け、額や肌に心地よい冷気を運んできた。
「そうだな、今日は早めに帰らないか? 教会へは明日また見に行けばいいだろ」とフィンが提案した。
「そうね、私も授与式の3日前の教会がどうなってるのか気になるわ」とフィオナが言った。
「そろそろ家でお父さんやお母さんが夕飯の準備を始めている頃かもしれないわね。それじゃあ、今日はここで解散にしましょう」とイーファが言った。
イーファは涼しさを求めてか、服の脇の下に腕を滑り込ませて暖をとろうとした。一方のフィオナはフィンの背中に跳び乗り、フィンはおんぶさせられる羽目になった。
「行こうお兄ちゃん! 早く帰ろ!」とフィオナが催促した。
「それじゃあ私も帰るわね、また明日ノウカ」とイーファが言った。
三人はそれぞれの家へと向かって歩き出した。
「うん! また明日ね、待ってるからねー!」とノウカが叫んだ.
ノウカはすぐにくるりと向きを変え、腕を伸ばしてストレッチをしながら自分の家へと歩き出した。
「私も早めに帰った方がよさそうね。お母さんにはもう少し遅くに帰るって嘘ついちゃったし、へへっ」
……。
ノウカは自宅に向かって3歩歩いたところで、ピタリと足を止めた。
「ちょっとだけ……散歩していこうかしら」
村全体が夕日の眩しい光に包まれ、空は美しい茜色に染まっていた。
民家のガラスというガラスが夕日を反射し, 家々の中を温かなオレンジ色で照らし出していた。
ノウカは小道に沿って歩き進めた。
青々とした草が青々と茂り、この村にありがちな立ち込める不気味な霧はどこにもなかった。
ノウカが空を見上げると、夕暮れの空にポツンと一つ、輝き始めた星が見えた。
夜の訪れを告げるかのように、小さく澄んだ星の輝きがノウカの瞳に映り込んだ。
*ガサッ……ガサガサッ……*
ノウカが遠くを見やると、緑豊かな草原の上で、夕日を浴びながらウサギたちが草を食んでいた。
ノウカは足元に目をやった。今踏みしめている自分の足取りが……昔、村中を元気に駆け回っていた頃の記憶を呼び覚ます。今でもこうして歩いているけれど……。
鳥のさえずりが一瞬だけ村の静寂を埋め、太陽が間もなく沈むことを告げていた。
ある民家の裏手で、ひとりの少女の息遣いが聞こえた。
「ハァ……ん?」
その白髪の少女は、すっかり白くなったダンデライオン(タンポポ)を手にするノウカの姿を目にした。
「あの子……」
少女は家の角に手をかけ、安全な距離からノウカをそっと覗き込んだ。
後ろ姿から窺える少女の髪は長い白髪で、その髪には真っ白なハスの花を模した飾りが添えられていた。
彼女の金色の瞳が再びノウカへと向けられた。ちょうどノウカが、願いを乗せた花に息を吹きかけた瞬間だった。
タンポポの花は砕け散り、空中へと舞い上がった。綿毛のついた種たちがノウカの周囲をひらひらと舞う。
少し強い風が吹き抜け……タンポポの種をあっという間に遠くへ連れ去っていった。
冷たい風が少女をかすめた。
「ひっ……!」
ノウカは何か聞こえたかのように素早く振り返ったが……そこには誰もいなかった。
少女はすでに家の陰へと身を隠していたのだった。
ノウカの顔に影が落ちたが、彼女はクスッと微笑むと、その場を後にした。
「寒さで気が立ってるだけみたいね、幻覚を見る前にさっさと帰りましょ」
ノウカが去った直後、少女は再び姿を現し、歩み去っていくノウカの後ろ姿を見つめた。
少女の黄色い瞳はノウカをじっと見つめ、沈みゆく夕日とともに、ノウカの姿が遠ざかり消えていくのを見届けていた。
翌日はまた時間通りに話を投稿できるよう頑張ります。私のミスを受け入れてくださった皆さんに感謝します。ところで、皆さんは気になりますか? へへっ〜




