#14 ある信徒が宛てた手紙
親愛なる友へ。
これはぜひ、真っ先に君へ伝えねばならないと思った。聖女様の奇跡を。
今日、大聖堂から城下へ向けて正式な宣言があった。
聖女フラウィア様が《降臨の儀》に挑まれ、見事に成功され、生還されたのだという。
我らはもう、魔物の侵攻に怯えずともよいのだ!
広場は大騒ぎだった。
鐘が鳴り、人々は泣き、抱き合い、祈りを捧げていた。
私も気づけば、周囲の人々と共に声を上げていた。
正直なところ、私のような浅学の身には、降臨の儀そのものはよくわからん。
だが、司祭長様のお言葉によれば、聖女様はその身へ神の力の一端を降ろされたのだという。
その神威を魔物たちが畏れ、国境周辺から逃げ去り始めているらしい。
実際、西方街道では魔物の姿が消えたという話も出始めている。
かねてより、聖女様が偉大なことを果たし、それにより魔物を遠ざけたという噂は立っていた。
まだ半信半疑だった者たちも、今日ばかりは違った。
なにせ、聖女様ご本人が、我々の前へ姿を見せてくださったのだから。
大聖堂の高いバルコニー。
司祭長様をはじめとした聖職者の方々が並ぶ中、その中央へ白い衣の聖女様がお姿を現された。
歓声は、あの瞬間が一番大きかったと思う。
私のいた場所からでは細かな表情までは見えなかったが、それでも、あのお姿は確かにフラウィア様だった。
白い衣。
淡い金の髪。
うまく言葉にできないが、少し、不思議な感じもした。
聖女様はおそらく笑っておられるように見えた。
手を振っておられた。
広場の熱狂に応えるように、確かにそこにおられた。
私の隣にいた女性などは、「神様みたいだった」と言って、その場に泣き崩れ落ちていた。
そうかもしれない、と思った。
その身へ神の力の一端を預かられたのだ。
神様というのは、きっとああいう感じなのだろう。
我々のことを、遠くから、静かに見ている。
その視線が私のところまで届いていたかはわからないが、それも当然だろう。
万民の上に立たれる御方が、誰か一人だけをご覧になるはずがないのだから。
この功績をもって、フラウィア様は聖人に列するものとなるらしい。
聖人とは本来、その生涯を通した在り方によって認定されるものだ。
生きたまま聖人と認められるなど、聞いたことがない!
……と思い、古い記録を調べてみたのだが、建国期に一例だけ存在していたらしい。
もっとも、それも数百年以上前の話だ。
つまり我々は、建国以来級の歴史の瞬間を生きているわけだ!
考えてもみてくれ。
魔物が消えれば、街道は再び整備される。
流通も戻る。
人々は行き来できるようになる。
友よ。
君とまた酒を酌み交わせる日も近いのかもしれない。
次に会う時には、この歴史について語り合おうじゃないか。
我らは今、
偉大なお方の時代を生きているのだから。
次で完結です




