第二章② 異物
やっぱり会話書くのは好きですね。
普通に緋水の会話楽しかったです、書いてて。
読者様も楽しんでいただけたら幸いです。
第二章② 異物
オーフェリを出て、草原を歩くアラミス。
(……なんだ、この異物感。)
(ギルド出たあたりから感じてたのは事実だ。ただの視線だと思っていたが……。)
念のため、周囲を確認する。しかし、そこにはまっさらな緑の草原が続いているだけだった。
(ウェンディ……じゃないな。なんか……いるな。)
自分の周りの空間の一部に何かが混ざってる。そんな感覚だ。
(この気配……そこか!)
ただの斬撃。何かが壊れるような手応えがあった。
そして、その異物感は消失した。
*
「え、うそ!」
緋水の魔術担当のキャシーが、思わず口に手を当てた。
「どうした?いきなり。果実ジュースに魔力切れデバフでもあったか?」
「そんなわけないでしょ。」
キャシーの果実ジュースはいかにも甘そうだった。果実をそのまま絞ったら、こんな感じの超特濃になるんだろうか。
「あの、仮面の奴、私の監視ユニット……多分斬撃だと思うけど、『破壊』したわ。」
「……魔法の不可視化は?」
青髪の剣士、シュバルは飲んでいた果実酒をゆっくり置いた。
「もちろんしてたわよ。」
「魔力検知か何かのスキル持ちか?いや、だが斬撃で落とせるのかよ、魔法体を。」
いかにも豪快な肉付きのバーレスは、雑に持っていたビールをドンとおく。
「理論上は……可能だ。」
青髪は短く続けた。
「だが……キャシーの魔法体は相当小型なはず。しかも不可視。」
「あの仮面、相当できるな。」
「単にキャシーの魔法が雑でバレただけじゃねぇか?」
バーレスはビールを再び飲み始める。
「そんなわけないわ。そもそもあのレベルのものを自在に操れる魔法使いなんて、そうそういないわよ。」
「それに、バレたことなんて一度もなかった。もっと言えば壊されたことなんて……ありえないわ。」
「前だって探偵の仕事で宮廷魔術師の浮気現場を捉えたのよ!?」
「宮廷魔術師クラスでもバレないのに、Fランがそんなことできる?」
「お前、普段何してんだよ……。」
そう言い、バーレスは酒をぐびっとやる。少しぬるく感じた。
「キャシーの副業はともかく、あの仮面、ただもんじゃねぇのは確かかもな。」
「……俺としては、一回やり合ってみたい。」
シュバルは相変わらず静かだった。
「あなたが興味を持つなんて、相当なものね。」
そう言っていかにも神官の面をしたザービは、完全に冷え切った水を少しだけ飲む。
「でもね、あの仮面の人。まだ何も結果を出してないのよ。」
「予想だけで、相手の実力を決めるのは、まだ早いわ。」
「確かにそうだが……あの仮面、動きに隙が全くない。歩きを見るだけでわかる。」
「俺の勘ではあるが、相当できるやつだと判断してる。もちろんただの経験則だ。が、無意識に隙がないやつは、強い。」
「まぁ、シュバルの仮説が当たるかは少し様子見ね。」
「……いや、私の不可視監視ユニットを斬撃で一発で落としてるのよ?」
「それだけで、十分よ。」
「確かにな。」
「だが、たまたま剣を振っただけかもしれねぇだろう?」
「俺はザービと同じで、まだ様子見でいいと思うがね。」
「だがな、不可視の魔法ユニットを斬撃で叩き落とせるならな。」
残りわずかなビールを片手に、話を続けるバーレス。
「俺らのメンバーに入れてもいいかもな。少なくても、罠探知とかできるやつは欲しいんだが。」
「まだ保留ね。迂闊にうちに入れたら、死人が増えるだけよ。」
そう言ってザービは少しだけぬるくなった水を飲み干した。
*
ゴブリン。この世界でも一般的に人間を襲い、しかも繁殖力が高い。
ただし戦闘力は比較的低く、主に冒険者の収入源となっている、らしい。
(……ゴブリンが人間を襲う理由ってなんだ。)
(あっちも何か訳があるのか……それともただの害虫程度なのか。)
(紫魔石のゴブリン。逃げろと言っていたが、俺が戦ってもいいんじゃないか。)
(仮に俺がくたばっても、代わりなんていくらでもいるだろ。)
(勝てば、他の冒険者が安心して『収入源』を確保できるってわけか。)
(……この強さ、使い方間違えると、やばいな、多分。とりあえず紫魔石のゴブリンとやらで、試して見ようじゃないか。ゴブリンに自我がないことを祈るばかりだが。)
(……ゴブリンってただの群れなのか、それともなんらかの社会構造があるのか?)
(くそ、ウェンディの知識にない。使えるんだけど、本当に欲しいものはもらえてないのは仕様なのか?)
(……禁則事項で終わるやつだな。)
(地球にいた頃もよくわからないことだらけだったけど、それはこっちも同じか。)
(真理は、人間には確定しきれない、か。)
続く




